第3話:俺とヒロインと20㎏のお荷物
「秋月、あんまり授業で寝ているようだと3年に進級できなくなるぞ」
呼び出された職員室で、担任の教師からそんな言葉をかけられた。
俺はまるで驚いているような表情を作ってから、気を付けますといった。
担任はそれで気持ちが伝わったとでも思ったのか、すぐに解放してくれる。
熱血教師ゆえに、空回りする典型的な人だ。
まぁ、悪い人ではないのだけど。
たかが10分だったが、拘束されたと思うと少しだけ疲れた気がした。
部活動に勤しむ学生たちの元気な声を聴きながら、俺は教室へと戻った。
教室に戻ると、既に大半の生徒はいなくなっていた。
いつもだったら俺もその中の1人にカウントされているはずなんだが。
特にすることもなく、鞄をとって教室を出ようとしたが、そこで声をかけられた。
「真悟、帰るの?」
声の主は唯だった。あいつが自分から声をかけるのは珍しく、少し驚いてしまった。
「そうだけど」
「私も帰るから、一緒らない?」
「俺は別にかまわないけど」
俺がそういうと、唯は少し待ってねと言い支度を始めた。
教室に残っていた男どもの嫉妬の視線を浴びながら、俺は考えていた。
次は何の命令をされるのか?と。
唯と2人で登下校の道を歩くのは久しぶりのことだった。
前に一緒に歩いたのは、もうすでに忘れていた。
「で、何の用なんだ?お前が一緒に帰るなんて。命令ならメールでもいいと思うんだが」
「今回はそうじゃないの。さっきお母さんからメールがあってね。急な用事でお父さんの所に行くらしくて、今日と明日は真悟と2人でご飯を食べなさいって言われたのよ」
唯のお父さんは日本でも有数の大企業である如月財閥の社長だ。
故にとても忙しく、単身赴任をしており、時折唯のお母さんが様子を見に行っているのだ。
「そうなのか。それなら、別々に食べればいいんじゃないのか」
「明日はね。でも、今日の晩御飯の分はどうやら作り置きしてあるらしいの。だから、今日は食べに来て。さすがに捨てるわけにはいかないから」
「それはいいけど、それだけならメールでも良くないか?」
「それだけじゃないの。お母さんに頼まれごとをしたの。どうやら、取り寄せの注文が今日届いてるらしくて荷物を取りに行ってほしいらしいのよ。それが何なのか聞いてないから荷物持ちを手伝ってほしいのよ」
「なんだ、結局命令と一緒みたいなものか」
「そう言われてみれば、そうかもしれないわ」
まったく・・・。
まぁ、どうせ断れないのだから構わないが。
「何だこれ・・・。こんなの配達にしてもらえよ・・・」
唯と一緒に受け取りにいった荷物を見て俺は驚愕した。
明らかに20㎏はありそうな、マッサージチェアだった。
「お母さん、車で取りにくる予定だったから余計なお金をかけないようにと配達はしなかったんでしょうね・・・」
「ってか、それをお前に頼むっていくらなんでも・・・」
「たぶん、お母さんのことだから真悟が手伝いに来てくれるって予想したんじゃないかしら」
確かにあの人ならありえるな。
俺たちの通う学校始まって以来の天才と称される程の頭脳を持つ唯の母親だ。
それぐらいの予想は簡単にしただろう。
普段は優しく、いつも笑顔を絶やさない人だがたまに小悪魔に代わる。
それがあの人の魅力なのかもしれないが、これはやり過ぎだ・・・。
「これ持てるの?真悟」
「持てることは持てる。でも、持ちたくはないに決まってる。ここから家まで遠くはないといえ、絶対に嫌だ」
「持てることは持てるんだ・・・。じゃあ、持ってもらおうかな」
この悪魔が・・・。
そして、この後俺は20㎏もの荷物を抱え家へと帰ることになった。
第2話と同日投稿になります。
20㎏の荷物持って帰るって本当にきつそう。
当然ですが、僕自身はやった事がありません。
さて、次の話の予告です!
次は唯の可愛らしい一面が見れるはずです。