第0話:ありがちな設定と読むまでもない序章
簡単に説明するならば、ライトノベル主人公にありがちな設定とでも言えばいいだろう。
何の話かというと、俺の今の現状だ。
父は研究者で今年からロンドンへと旅立っていった。
そして母はさも当然かのように、
「ロンドンって一度暮らしてみたかったんだよね」
とだけ言って、父についていくと言った。
この時、俺は少しだけ寂しい気持ちになったものだ。
何故なら両親がロンドンへ行くということは一人息子の俺も当然ついていくわけだ。
高校に入学して1年が過ぎ友達もできて楽しい高校生活を送っていたのに。
しかし、そういう心配はなかったようだ。
両親は俺にこう言った。
「ついてくるなよ。父さんたちは2人で行くんだから」
まぁ、当たり前だが一瞬、自分の耳を疑った。
混乱した気もするが、すぐに冷静になったのであんまり覚えていない。
俺は素直に喜んでいた。
一人暮らしが出来ると。
まぁ、世の中そう全てが上手くいくわけではないと、俺はすぐに知ることになるわけだが。
「お前の一人暮らしにあたって色々言っておくことがある」
「何だよ父さん、急に改まったりして」
「まぁ、聞きなさい。一人暮らしとなると色々大変だろう。特に食事面の大変さは尋常じゃない。ということで、父さんたちは可愛い息子のことを考えて素晴らしい事を思いついた」
ついてくるなよって真顔で言っといて何が可愛い息子だ。
という突っ込みは胸の奥深くに隠しておいて、俺は先を促した。
「隣の如月家。そこのご両親にお願いしてお前の食事面の世話をお願いすることにした」
「はぁ?何言ってるんだ?」
「心配するな。もう向こうとは話がついている。付き合いが長いからな快く引き受けてくれたよ」
確かに如月家とは付き合いはとても長い。
向こうの両親と俺の両親はどうやら大学時代からの付き合いらしく、とても仲が良い。
向こうにも俺と同い年の娘が一人いて、そのせいか俺も昔からずっと可愛がってもらっている。
でも、だからと言って食事の世話をしてもらうのは気が引ける。
「仲が良いのは分かるけどさ。それは流石に迷惑だろ」
「大丈夫だ。向こうもお前のことを息子同然に思っている。一緒に住んでもいいとさえ言ってくれたからな」
「・・・・はぁ」
「何もため息を付くことはないだろ。食事の世話をしてもらうことが、どれだけありがたい事か後々気づくだろうから、それもでは父さんの言ってることに従っておきなさい」
「・・・・はいはい、それでいいよ」
「分かってくれるなら、それでいい。あ、ちなみに父さんたちは1週間後には日本を経つんだから、お前はもっとしっかりしろよ」
父さんの言葉に適当な返事を返して俺は自分の部屋へ引き返すことにした。
この時、既に俺の喜びは消えていて嫌な予感がしているだけだった。
久しぶりに小説を投稿します。
ラブコメの長編は初めてなので、不安もありますが楽しんで執筆します。
より多くの皆さんに読んでもらえるよう頑張ります。