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ブラッディフェアリーズ・ウォー  作者: 不忍唐傘
俺終了のお知らせ
11/12

#10

「私はいつも通り、情け容赦無い君に会いたかったんだ。 誰であろうと、容赦なく踏み倒せるような君に!!」


興奮気味で早口にまくしたてる新月は恍惚とした、しかし、残虐に目を爛々と輝かせる。

少しでも刺激しようものなら、桜色の唇から覗く犬歯に肉を食い破られるのではないか、と本能的に恐怖しまうほどに狂気を撒き散らし狂喜する新月を、通り冷めた緑色の瞳が捉えている。

特に何も言わず、表情も動かさない。

しかし、瞳は逸らさない。


「気でも狂ったのか?」


怪訝な表情を浮かべた直が、何かのスイッチが入ってしまっている新月に問うてみる。

何故か新月を食い入るように見つめている音対のことも気になったのだが、そちらよりも明らかにおかしい新月の方に興味が向いているらしい。


「いや、私は正気だよ」

「……犬も可愛いと思うけど、やっぱり猫派」


一人だけいまだに、犬派猫派の話を引きずっている音対を横目に直と新月が会話のドッジボールを続ける。

音対も一方的にボールを投げ続けてはいるものの相手がいないため、例えるならドッジボールというよりはスポーツテストなどで行うハンドボール投げの方が近いだろう。


「さて、今度こそ本題に入ろうか」


新月がコホンッと一度咳払いをしてから、ちゃんと椅子に座り直し、口を開いた。


―*―*―*―*―*―


「ねぇ、昨日思い出したんだけど、この間のあの子って新月っていう名前じゃない?」


芝と共に夕飯をつつきあっていると、唐突に彼が言った。


「……お前の知り合いなのか?」


芝の口から飛び出した自分を殺そうとした人物の名前に、直は唖然とした表情で震える唇からその言葉を必死に絞り出した。

今日は勢いで猫を被らずに接してしまったものの、どうあがいても自分を「殺した」人物と恐怖無しで接することは不可能だ。


「うーん……。 知り合いっていうか……」


言葉を濁してごまかそうとしているらしい芝を直が睨みつける。

そして、ちょうど反対側に座っている彼の股間を思い切り踏みつけた。

芝は箸を取り落とし、声にならない叫び声を上げ、椅子から滑り落ちる。


「狙ったのか? この変態が」


不運にも直の足元付近に落ちてしまった芝を、直は鼻で笑って、楽しそうに踏みにじる。

芝がピクピクと動く度にギューッと強く踏みにじり、彼が逃げようという素振りを見せた瞬間に容赦なく頭を踏みつけた。


「ごまかすな、早く言え」


床でプルプルと痙攣している芝に直が命令した。

直にだいぶ特殊な躾をされる前から既にマゾで奴隷(いぬ)気質であった芝としては嬉しいのかもしれないが、身体的にはかなり痛いようでうずくまったまま、なかなか起き上がらない。


「あ……う……」


芝は何かを言いたいらしいのだが、痛みが強すぎたせいか何も言えないらしい。

心の中で少しやりすぎたか、と反省した直だが、きっと三分後にはその反省した心はすっかり無くなっているだろう。


「……芝?」


心配から少しばかり優しくなっている直が、念のため、芝の名を呼んでみる。

彼は返事をする気力が残っていないらしく、弱々しく左手を軽く挙げて、聞こえている、というサインをする。


このまま問答していても、しばらく動けなさそうな芝が相手である限り意味がないだろう、と察した直は風呂場へ向かった。


「しょうがないな、俺が風呂に入ってる間に布団敷いておけ」


そう伝えると芝がやはりプルプルと震えながら左手を挙げた。

それを見て、一瞬微笑んだ直はすぐに風呂場へ向かって歩き出した。


―*―*―*―*―*―


「あの新月ってい……」

「芝、しっぽ」


風呂からあがった直に冷たい麦茶を渡し、布団の上に座った芝の言葉を遮り、直が要求した。

先ほどまでチラチラと顔を覗かせていた優しさはログアウトしてしまったらしい。


「うん、分かった。 ちょっと待って」


そんな直の横暴な態度を気にする様子のない芝が頷いた。

そして、彼が目をギュッと閉じて三秒くらい経ってから、芝の頭に顎を乗せてスタンバイしていた直の頬とにふわふわとした感触が現れる。


直は目を輝かせて、それをひっつかみ、さらに数秒遅れてやってきた腹部に伝わるもふもふした感触の元を抱きしめる。


そうして、ひとしきりもふもふゴロゴロした後に、ため息を一つ吐き、布団の中に潜る。

髪と統一された金色混じりの茶色の犬のような耳としっぽを出したまま芝は邪魔にならないように、とその横に移動し、畳の上にゴロンと横になる。


「それでね、新月っていう子のことなんだけど」


直の様子を窺いながら芝が話し始める。

直の方も今回はちゃんと話を聞く気があるようで、布団にくるまっているものの大人しく芝が続きを語り出すのを待っている。


「五年ぐらい前……僕が二十歳の時に、ずっとストーカーされてたんだよ。 一人暮らしで借りてた家に侵入されたりしたから、警察にも被害届けを出したんだけど、全然被害が収まらなかったんだ」

今日から相変わらずゆっくりですが、更新を再開させていただきます(´∀`*)

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