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ブラッディフェアリーズ・ウォー  作者: 不忍唐傘
俺終了のお知らせ
10/12

#9

「幌鍬くん、今日こそは一緒にお弁当を食べようじゃないか」

「……うん、食べよう」


午前中最後の授業が終わることを告げたチャイムの音が鳴り止んでからしばらくすると、直の机から黒髪と蒼い目が特徴的な生徒と銀髪と緑眼が特徴的な生徒が顔半分だけを覗かしている。


遠い目をしている直とは対照的に周りのクラスメート達は好奇心いっぱいの目でこちらを見て、ちょうどいい話題だ、と言わんばかりに話のネタにしているようだ。


「…………鯉淵さん?」

「……どうかしたの?」


一つ一つ突っ込んでいたら、とてもキリが無いが、一番違和感を感じたこと――多校生であるはずの音対がこの場にいることについて、猫かぶりモードが抜けきらないままの状態で尋ねてみた。

しかし、相手の方は自分がこの場にいることに違和感を覚えていないらしく、抹茶チョコレート味の変わり種ラムネをゴクゴクと飲んでいる。


「何でココにいるんだ?」


疑問の部分までちゃんと口に出して、再び問いかける。

どうやら、彼女の脳内に「察する」というコマンドは存在していないらしい。


「……今日、こっちの学校は開校記念日だから休みなの」


音対が直が聞きたいこととは少しズレた答えを返す。

埒があかないと感じた直は小さくため息をつく。


「生徒会室に行こうか。 私は『いつも通りのキミ』と話がしたいんだ」


―*―*―*―*―*―


渋々ながらも音対と新月と向き合いながら、生徒会室で芝に作ってもらった弁当をつつく。

仕事の締め切りが近かったためか、いつもよりも枝豆やトマトといったような調理に手間がかからないものが多く入っている。


普段なら暴君直は昼休み中に芝を呼び出して、再調教を始めるところだが、締め切り前など事情がある時はかなり甘めに見ている。

唯我独尊、という言葉が本家本元とは違い、ダークサイド寄り気味な意味で似合う直だが、芝には甘いのだ。


「まず、幌鍬くんがどうして私に絡まれたかについてだが」

「人違いだろ」


学食の横に設置されている購買で購入したとおぼしき、シーチキンが入ったおにぎりの透明な包装をはがしている新月が口を開いた。

しかし、すぐさま直がその言葉を遮る。


「……春巻き、美味しそう」


さりげなく新月の隣ではなく直の隣に座っている音対が、いつよだれが垂れてきても不思議ではないほど羨ましそうな表情で直の春巻きを見つめる。

もちろん、まだまだ育ち盛りで自分の弁当だけでは足りない、と感じるくらいの直が他人に自分のものを分け与えるなどということはなく。

箸でひょいと春巻きを掴み、音対の目の高さまで引き上げ、しばらくそこで止め、音対が我慢できなくなりそうになったら口に運ぶ、という嫌がらせを春巻きの数と同じ回数行った。


春巻きが目の前に来る度に分けてくれるのではないか、という期待に目を輝かせ、それが直の口の中へと消えていくと絶望感溢れる表情をする音対は直のサディスティックな心をくすぐるらしく、直は同じく春巻きの数だけ嬉しそうに歪んだ笑みを浮かべいた。


「そうだ。 それは人違いだったのだが……。 そう、それと、秋里椛が発見されたんだ」


直は弁当をつつく手を止めないものの、話だけは聞いているようで、秋里椛とかいう意図的では無いにしろ、自分を死の寸前まで追い込んだ人間の発見の報に思わず顔を上げる。


「残念ながら、息はしていなかったがな」


新月が不敵で、獰猛な笑みを浮かべる。

しかし、音対も直も話は聞いているようだが、食べることに多くの神経を割いているらしく「うん、それで?」などと適当に流しつつ、先を急かす。


「彼は残念ながら『オリグナン』という化け物に喰われていた」


同時に、おにぎりが入っていたものと同じ袋の中から一枚の写真を取り出し、二人の前へそっと置く。

直はチラッと一瞥してすぐに自分の食事という作業に戻ったのだが、音対は違う反応を示した。


「……これ、見た」


写真の中にあるとはいえ、死体を見たというのに、いつもと寸分違わぬスローテンポ気味なしゃべり方で自分が見たことについて、詳しく語る。

直はおろか、新月も相槌さえ入れないため、生徒会室にハスキー気味な音対の声だけが響く。


「で?」


音対が話し終わったのを見計らい、直が新月にたった一語で訪ねた。


「やはり、秋里椛は死んでしまったらしいよ」


新月の口から愉しげに発せられた残酷な言葉を直は「違う」の一言で一蹴する。

そして、こう続けた。


「そんなことはどうだっていいんだよ」


愛らしい薄い桃色の唇が歪な弧を描く。


「この俺を前にして、長々と知らない奴の話をしてるんじゃねぇーよ。 この雌犬(ビッチ)共が!!」


完全に化けの皮が剥がれた直がそう叫んだ。

普通ならば、新月達は傷つくべきシーンなのだろうが、彼女らも一筋縄で行くような相手ではなかった。


「やっと、会えたな。 幌鍬直くん」

「……私は断然猫派」


彼女達はあからさまに不機嫌な直に思い思いの返答をしてみせる。

それによって、より一層直の機嫌が悪くなってしまったというのは言うまでも無いだろう。

実は私も猫派だったりします。

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