か・ぞ・く 8
「うぅ・・」
胸が苦しい。
「く・・はぁっ」
なんだ、胸が・・重みに押しつぶされそうだ。
あぁ、この感覚、懐かしい・・中学の頃にわけの分からない言いかがりでクラスの男子にフルボッコに去れた挙句、下に押しつぶされた時と同じ感覚・・。
・・まぁ、出世して別の方向からやり返したけどな。
「う・・重い!!!!」
ちゅん、ちゅん
「んな?」
「・・・・」
一瞬、コレが何か分からなかった。
「な・・・・んで?」
嘘、だろ・・まさか・・こんな・・
AM10:02・・今日はお仕事休みの今日子は愛娘を保育園に送り出した後、まったりとテレビを見ていた。さいきんはビーズ入りクッションで横になるのがダイスキです。
「・・・・あら?」
がちゃ・・扉が開くと、不機嫌そうな晴生が突っ立っていた。
「どうしたんですか?ダルマちゃん」
ニッコリと微笑む。
そう、晴生の上に無粋にも乗っかっていたのは、ダルマという名の、デブ猫であった。
「コレはいじめか?」
「いえいえ、その猫晴生さんのこと好きみたいですね、ほらゴロゴロ言ってますでしょう?」
「・・・・嬉しくない」
いい加減重たくなったので猫を掴んでいた手を離すと、床にバウンドした。・・驚異の肉だな
「そうだ、お隣さんにご挨拶しなきゃ」
「へ?」
「さぁ、着替えてください」
ダルマを今日子は抱き上げた。
「お隣のおばあちゃんは怖いですよ!」
・・普通『やさしい』じゃないのか?
少しして、飯嶋と書かれた家にいく。
ダルマを抱っこした今日子が先陣きって家の扉を三回強く叩き、返事が無いので扉を開けて中に入った。
「おばーちゃーん?お隣のー石河の今日子ですー居ますかー?」
「居る」
古い木の階段をのんびり下りてきた。
白髪の髪をお団子にした、大正でよく見る服を着た皺皺のおばあちゃんが降りてきた。・・目が厳しい
「なんじゃ、明日香か」
「いいえ、ダルマちゃんがお家に来ていたので、お婆ちゃんまだ寝ているのかなって」
「少し横になって、ついさっき動いてきたところじゃ、んで?誰じゃアンタ」
腰の後ろで手を繋いだおばあちゃんは、晴生を睨んだ。
「おばあちゃん」
今日子が間に入る。
「メガネはどうしたんです?」
「ん?」
おばあちゃんはポケットからメガネを取り出すとゆっくりとかけた。・・と、優しい目になった。見えなくて厳しい目になっていたらしい。
「まぁまぁ、上がりんせぇ」
二人は遠慮なくあがり、居間でお座布団の上に座った。
「お茶とお菓子おたべんしゃい」
「ありがとうございます」
おばあちゃんも座ると、ダルマがおばあちゃんのお隣に座った。
「アンタァ・・明日香がお父さんできるぅ言よったけど、やぁっと挨拶来たなぁ」
「すみません、遅れまして・・少々事情もありましてね」
「あんだ?」
少し説明をした。
しばらくしておばあちゃんは頷いた。
「まぁ、めんどくさいこと、今の若いヤツァいけんのぅ」
「慎重なんですよ」
「それが、メンドイ・・えぇかよ?そだなまどろっこしいことすっだら、いっそ結婚しちまえよ?こんままだったらアンタラ両方とも婚期ありゃせんぞ」
「俺は結婚するきないんで」
がし
「んだったら故郷帰れ!!」
ごす
「ぐは!」
お婆ちゃん隣に座っていたダルマを容赦なく晴生に投げ飛ばした。お、おもい・・。
「まぁまぁ・・お婆ちゃん」
「明日香は父さんほしんだ、アンタにその資格ないだら去ね!」
たまに思うけど、この人の訛りっぽいようで訛りじゃない喋り方何!?
「んなぁ・・」
「出てけ!」
お婆ちゃんとても大正生まれとは思えないほどパワフルで、そのままの勢いで晴生を投げ飛ばした。
今日子は手を叩いて感嘆した。
「あら、シラタマ・・」
「にゃー」
とことことことこ、歩いていくとおばあちゃんの足元に擦り寄った。
「・・おや、もうお昼の時間さね・・食べていきんさい」
「ありがとうございます、でも私ももう帰りますね」
「そうか、んだらな」
「はい」
「車に轢かれかけた・・」
「んなぁー」
投げ飛ばされた晴生は猫を見た。
「お前と心中なんて、死んでもイヤだ」
「んなぁー」
猫はゴロゴロと鳴いた。