か・ぞ・く 7
「今日子さん!」
日曜日、悩める高校生、由加里が泣きながら今日子の胸に飛びついた。膝を明日香に枕にされて動けない晴生はその様子を眺めていた。
上松由加里はよく来る、週に一回は必ず来る。
まるで今日子をどこぞの宗教の教祖のように称えているようにも見える。
(・・よくもネタがつきないものだ)
今日子が『悩める高校生』と変なあだ名をつけた理由もよく分かった。
「で、どうかしたんですか?」
洗濯物を干すのをちゃっかり手伝ってもらいながら会話に入った。・・なんて効率のいい人なんだろう・・。
「私・・どうしたらいいのか分からなくて」
なにが
「落ち着いて、ゆっくり話ましょう」
晴生なら確実突っ込んだところを今日子は優しく語りかけた。由加里はうなづくと洗濯物を干しながら話し出した。
簡単にまとめるならこうだ。
『友達同士が仲違いをして、どっちにつくかと聞かれて答えれずに居たら、両方からはじかれた。』
というものだ。
・・・・なんとも容量の悪い娘だな。
(ま、俺なら両方とも縁を切って、一人で好きにするけどな)
「私、どっちかだなんて、決められないです・・」
「それはそうですよ」
今日子はニッコリと微笑んだ。
「両方とも、お友達ですものね」
今日子はきれいごとしか言わない・・もしかしたら分かっているのかもしれない。
悩める学生の相談っていうものは、真面目で厳しいことではなく、柔らかく自分の意思に反しないものを求めているということを
「選べないんですよね、でも、選ばなければならいのなら、選ぶのは由加里ちゃんが決めなくちゃ」
「え・・無理、だって・・二人とも小学校から一緒だし」
「だったら、動かなきゃ」
今日子は由加里が持っていた洗濯物を奪ってニッコリと背中を押すように微笑んだ。
「動く?」
「そうですよー、『二人と一緒に居たい』なら、『二人を仲直りさせる』ぐらいの勢いでいかないと」
「ム、無理ですって!あんなに険悪な雰囲気の中に入れっこないですって」
「だったら諦めて『新しい出会い』に縋るしかないですね~」
珍しく今日子が意地悪な発言をしている。
飴ばかりではないということなのだろうか・・まぁ、あれでも十分優しいほうだと思うけれど。
「口にしなければ、行動におこさなければ、伝わらない想いもあるんですよ」
やけに重みのあるセリフだった。
「・・・・」
「ね、晴生さん」
何で俺・・?
「あぁ」
よくわからないけど肯定しておく。
「分かりました、私、頑張って仲直りさせてみます!」
「その調子!」
今日子に背中を押され、由加里は去っていった。
学生って、忙しいもんだな本当。
「晴生さん」
洗濯を終えた今日子が隣に座った。
「ん?」
「旦那様になる決心はつきましたか?」
「さぁ」
上松由加里
「心をこめて思いっきり告白したのに、どうしてそうあいまいなことを言うんですか」
クスクスと今日子は笑う。
お前に一言言おう。
今日子は実はいい奴ではないと。
いや、いい人ですよ?




