か・ぞ・く 19
朝になった。
「・・・・今日子さん、遅いな」
まだ帰っていないようだった。
「お父さん、おはよう」
明日香が眠たそうに起きてきた。
「お母さんは?」
ヤッパリ聞くよな
「分からない、仕事残業なのかもしれないな」
「じゃあ、電話する」
明日香が電話のシタにある引き出しを開けた。
「このメモにお母さんの会社先の電話番号あるの」
「賢いじゃないか」
電話かけてみることにした。
たった一度帰ってないからって電話するのは迷惑な気がしたが・・なんとなく声が聞きたいような気がしたから、かけることにした。
なるべく手短にしよう。
しばらくして電話が繋がった。
「もしもし・・あの石河今日子さんいますか?」
向こう側の女性は普通に対応していたが、名前を聞いて小声になった。
『あの、もしかして・・晴生さんですか』
「えぇ?そうですが」
女性がもっと小声で震えるような声で言った。
『あの、いますぐ逃げたほうが良いですよ!?今日子・・昨日捕まっちゃってるんです・・怖い人たちに・・私達も逃げられなくて・・できれば警察に・・っあ!!』
乱暴に電話が取られる感じがした。
「誰だ」
『こっちのセリフだごら』
がらの悪い男の声だった。
『おめぇもしかして晴生って野郎か?あ?』
「そうだ」
『まじか・・ちょっと待てろよごら』
柄悪いわりには対応普通だな。ここで切ったらどうなるんだろうか・・ちょっと試したいような気もする。
「お母さん?」
「いや、違うらしい」
『もしもし?』
また若い男の声が聞こえた。
「誰だ」
『俺?元虎君』
自分で君付けか
「俺に何かようか?」
『うん、ちょっと来てほしいんだよね~今日子にも会いたいっしょ?殺してあげるからおいでおいで』
「あんた頭大丈夫か?」
最初のほうはまだ分かるが・・最後のほう脅迫じゃないか
『来ないなら殺しに行くけど?』
「どっちにしろ死ぬんだな俺は」
『そ、あ、ちなみに警察に言っても無駄だから?』
今日子さんが捕まっているのは本当らしいな・・だったら
「じゃあ行くから、会社の場所教えろ」
『・・え?』
「いくって言ってんだよ・・今日子さんに合わせろ」
『・・・・殺してやるよ・・あ、ちなみに場所は~』
電話を切ると明日香が頬を膨らませていた。
「明日香もお母さんと電話したかった」
「お母さんじゃなかったんだよ」
頭を撫でながら言うと、なんだと残念がった。
「悪いけど、俺今日子さんとこいってくるから、明日香はお隣のお婆ちゃん宅に行って待っていてくれるか?」
「うん。いつ帰る?」
「分からない、おばあちゃんに伝えてほしいことがあるんだが」
「何?」
晴生は笑った。
「俺たち、オヤコになりますって・・」