が・そ・く 18
「あっれー?懐かしい顔だね」
高い高層ビルの最上階の社長室にて、元鷹はワイン片手に振り返った。
「そっかー?まぁ、兄貴はいっつも安全地帯にいるからな」
弟の皮肉に兄は嗤う。
「言うようになったね、機嫌悪いっしょ?」
「あぁ、悪いね、今日子がみつからないんだ」
「へぇ・・」
ワインを一気飲みしてグラスを空にすると腕をつかまれ、グラスから手を離してしまった。
がしゃん・・グラスが割れる。
「ふざけないでくれよ兄貴、知ってるんだろ?」
「君のほうが知ってるんじゃないのか?」
何人かのがらのわるい青年が社長室をうめる。
殺気だっていた。
「どこだ?」
兄貴は笑って紙を見せた。
○○
「今日子ー」
同僚の愛海子は微笑みながら走ってきた。
「どうしたの?」
晩御飯を考えていた今日子は愛海子の声で現実世界に引き戻されながら返事をした。
「社長が至急今日子を呼べって」
「・・えぇ?」
社長?私何かミスでもしたかしら
「行ってみるわね」
駆け足で社長室に急ぐ。
「・・この匂い」
煙草と癖のある酒の匂い・・。
ノックをすると怯えた社長の声が返ってきた。
「・・失礼します」
「あぁ、今日子・・会いたかった」
がらの悪いお兄さん達が社長の首を掴んでいた。
「社長を放してください。元虎さん」
「わーい、今日子だぁー!」
人の話を聞かない男は笑顔で今日子に飛びついた。
「俺今日子探して世界一周しちゃった」
「スゴイですね、そのまま世界の果てで死んでください」
今日子は急いで腕から逃れるとにらみつけた。
「私、もうアナタの玩具でも、なんでもないんです」
「俺のものだよな」
「違います」
ぴしゃりと言い放つと、シュンとした顔を見せた。
「何でそんなに俺を嫌うんだ?なぁみんな」
「さぁ?」
元虎の仲間が笑いながら肩をすくんだ。
・・社長お気を確かに!よだれ垂れて白目むいてますよ!
「もう私に付きまとわないで下さい!私だってもう結婚するんですから」
「誰と?」
「っ!」
腕をつかまれ捻りあげられる。
骨の軋む音が聞こえた。
「俺以外の誰と結婚するって?なぁ?俺しかいないだろう?お前には?誰だよ・・誰と結婚するんだよ」
「誰が・・」
「言えよ!・・殺すからさ」
床に投げつけられ、受身も取れず顔を直に打った。
「っ」
髪の毛を掴みあげられ、顔を覗き込まれる。
「俺はこんなにもお前を愛してるのに、どうして・・」
切なげに言うと、目を閉じた。
「・・・・おい」
「へい」
男が複数今日子を掴み持ち上げた。
「俺の部屋に閉じ込めとけ」
「了解」
「ボスは?」
「俺か」
目を薄っすらと開けた。
「今日子を誑かす野郎を沈めて来る」
「っ!止めてっていってるのよ!私はアナタなんて大嫌い!嫌いなのよ!顔も見たくない!殺すなら私だけ殺せば?そうすれば永遠にアナタだけのものじゃない!」
「そんなことするわけないだろ」
元虎は振り返り今日子の顎を掴んだ。
「・・お前の目の前で男殺して・・その後でゆっくりと調教してやるよ」
「やめて、もう・・開放してよ!ばかぁ」
元虎は連れて行かれる今日子を見て目を細めた。
「さて、まずは情報でも集めるかな?」
社長と眼が合う。
「・・・・な?」
あれ?ほのぼの・・?