か・ぞ・く16
「あら」
今日子が家に帰る途中・・いつでも悩める高校生、上松由加里が公園でいつもの如く落ち込んでいた。
昔初めて会ったときもこのように落ち込んでいて、あまりの沈みっぷりに誰もが近寄りがたそうだったので、話しかけたのがキッカケであった。
「由加里ちゃん、どうしたんですか?」
ブランコの横に座ると、由加里は泣きそうな顔で今日子を見た。
「お友達の仲直りできなかったんですか?」
「・・・・できたんですけどぉ・・」
ぶわっと涙をながした。
「今度は私だけハブられるようになってしまってぇ・・」
うーん、なんとも不憫な子だなぁと今日子はしみじみ思った。
「どうしてですか?」
「分かりません・・本当どうしてなのか・・」
「そうですか・・」
くずくずと泣き出す彼女を慰めながら今日子は思う。
(もしかしたら、この子の気づかない部分でなにかあるのではないかしら・・例えば、うざいとか)
・・って、ココで言ったところで本人には分からないんだから意味ないよねって話ですよね
「今日子さん、私ウザイですか!?」
「え?!」
心読まれたのかと思いました。
「言われたんですか?」
「・・・・」
「言われたんですか・・」
まぁ、正義心・・というよりは、なんでしょう・・多少この子は自分を正当化させて、他人を見下す傾向が・・無きにしも非ず?
「私には分かりかねますが・・由加里さんはもう少し、自分を見直してみては如何ですか?」
「自分をですか?」
「はい、もう少し素直に思いを相手に伝えてみては如何でしょう・・そうすればきっと向こうも何かしら言ってくれると思いますよ」
「何かしらってなんでしょう・・酷いことだったら・・私」
「お友達はそんな酷い人ばかりなんですか?」
少しずるい質問をすると、由加里は少し悩んで頷いた。
肯定するンかーい・・
「だってそうでしょう!?私はこんなにも親身になってみんなのために思ってるのに、皆は私のことウザイ子呼ばわりですよ!?・・私なんて死んでしまえばいいんです!!」
「そんなことっ!嘘でも言ってはいけません!!!」
ぴしゃりと言い放つと、由加里はうな垂れた。
「・・由加里ちゃん」
今日子は彼女の手を撫でながら優しく言った。
「人間何度も死にたいと思うこともあるでしょう」
私だって何度も思った。
でも
「死んでしまったらそこまで、死んで相手に後悔させようだなんて無駄ですよ、相手はすぐ忘れるんですから・・人は生きるので精一杯なんです。死んだら負けです・・ね?」
今日子はシッカリと手を握り必至に諭す。
「分かりましたか?」
「はい・・ありがとう今日子さん」
やれやれ、今日はこのぐらいで納得してもらえたようだ・・この子は放っておくと何を思い悩むのか分からないし、本当心配してしまう・・
・・多分、自分の母親に似ているからつい、手を焼いてしまうのだろう・・あの人も、誰かに頼らないと生きていけない人だった・・そしてお金にも貪欲で・・
「今日子さん?」
「あ」
いけない、ぼうっとしていたわ
「もう、帰らないと・・それじゃあね」
「あ。今日子さん」
「?」
足を止めて振り返ると、由加里は気まずそうな顔をした。
「あの・・知らない男の人に、今日子さんのこと聞かれて、家の場所教えてしまいました」
「知らない・・男?」
「はい、黒いジャンバーの・・えと、なんか人の良さそうな人で・・飴をくれました」
「・・飴?」
「はい、お、おかしいですよね。あんこ味のあめですよ」
「・・・・」
「きょ、今日子さん?」
媚びる様に由加里が顔色を覘いてくる、怖い顔でもしているのだろうか・・
「・・は!晴生さん!明日香」
今日子は走り出した。
「あ!今日子さん!」
無事でいて!!!




