か・ぞ・く 15
「あっちゃん」
「何?たっくん」
保育園で明日香は絵本を読んでいた顔を上げるとたっくんは外を指差した。
「あのおじさん、あっちゃんの名前呼んでたよ」
指差す方向を見ると、保育園の先生に疑惑の眼差しで見られて困っている晴生がいた。
「あ!お父さんだ!」
「えー?あっちゃんお父さんいないんじゃなかったの?」
「いるよ」
明日香は立ち上がると晴生に飛びついた。
「紀子せんせーお父さん来たから帰るー」
「え?でもね明日香ちゃんのお父様ですか?」
「違います、代理です」
「お父さんだよー」
食い違う意見に先生は首を捻りながらも明日香が懐いているのでこれ以上は何も言わなかった。
手を繋いで帰っていると、悩める高校生上松が電柱の横で立っていた。
「由加里姉ちゃんなにしてるの」
「確かに手ぶらでなにしてる」
由加里はそわそわした顔で晴生を見た。
「あの・・今日は明日香ちゃん今日子さんが迎えに行ったんじゃないんですか・・?」
「?」
三人で家に帰ってみると、特に誰も帰ってきた様子はない。
今日は残業になるかもしれないしならないかもしれないから、明日香を頼みますって言われた晴生には特に気になることは無かったが、由加里はそわそわしていた。
「どうしたのか?」
「あの、私・・」
テルルルル・・電話が丁度良くなった。
「はい」
≪あ、晴生さん?今日少し残業になるのでかえるの遅くなるので、晩御飯適当にお願いします≫
「分かった」
電話を切ると明日香が誰ー?と聞いた。
「今日子さん」
「え?」
由加里は驚いた声をあげたあとで両手をフッタ。
「あ、いえ、あの・・私帰ります」
急いで逃げるように走り玄関から出て行った。
「・・・・なんだったんだ?」
「さぁ?お母さんなんてー?」
「晩御飯適当でだと」
「じゃあ、お父さんハンバーガー作って」
「グーじゃなくてか」
由加里は帰りながら、家を振り返った。
「良かった・・気のせいだったのね・・」
由加里の消えた道を、バイクが止まった。
「・・・・さぁてと」
バイクから降りた男は、石河さん宅の前に立った。
「んなー」
「ぶは!なんだこの猫、おっもしれー」
チャイムを鳴らす。
晴生はハンバーグを焼きながら明日香に声をかけた。
「少し手が離せない、出てきてくれ」
「はーい」
お気に入りの人形片手に明日香は玄関に行く。
「セールスだったら、相手が何かを言う前に「いりません」って言えよ」
「分かったー」
ガチャっと玄関を開けると、男と眼が合った。
「あれ?」
「?」
男は明日香と同じ目の高さにしゃがむとニカッと笑った。
「君は誰かな?」
「おじさんは誰?セールスマン?」
男は頭をかいて懐から飴を取り出した。
「やるよ」
「わぁいありがとう」
明日香は喜んで受け取ると男は立ち上がった。
「あっれー?俺場所間違えたかな?」
「?」
「おい、誰だった?」
晴生と眼が合う男。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・どちら様ですか」
「いや、コッチのセリフだから」
晴生はエプロンをのけて明日香を自分のほうへ引き寄せながら言うと男は、笑った。
「ゴメン、間違えた」
颯爽と去っていった。
「・・・・・・なんだったんだ」
「おいしー!この飴小豆味だ」
「飯の前に飴食べるな・・小豆味?」
なんてまずそうな・・。
男はバイクにまたがると、男が一人現れた。
「元虎さん、急に消えないで下さいよ・・手下みんな迷子になっちまったんすよ」
「探しといて」
「ちょ、元虎さん!何処行く気ですか」
男はニヤッとわらった。
「愛する女のところ」
「毎回ソレ言ってますね」
男たちはバイクに乗って移動する。
「ハンバーグ小豆の味する」
「だろうな」




