か・ぞ・く 13
前回の宣言どうり、回想シーン
「いやぁ、はははは~助かったぜ」
体中雪まみれの男は鼻を真っ赤にさせながら微笑んだ。
「・・・・いえ、引っこ抜いただけですから」
「あっれー?元気ないなぁー?俺永原元虎っていうんだけどさー、全然怪しくないんだぜ」
いきなり自己紹介を言い出し、怪しくないと聞いてもいないのに言い出した・・。
「はぁ」
「君は?」
「石河今日子・・」
「今日子かー」
元虎は今日子の頭を掴むとワシワシと撫で回した。
「はは!辛気臭い顔して、どうしたどうしたー?」
「・・関係のない話ですから」
「なんかあるのかー、大変だな・・売春は」
「は?」
元虎は腕を組んで神妙な顔でうんうんと頷いていた。
「お金が必要なんだなー、売春するほど・・駄目だぜー家族愛は大事にしないとな!」
「売春なんてしてない!!」
怒ってそう叫ぶと、元虎は目をパチクリさせて笑った。
「じゃぁ、なんだ?」
「・・・・お母さんが、再婚相手を連れて、消えちゃったのよ・・私に借金をのせたまま」
「うっわー、兄貴みたいなヤツだなー」
「兄貴?」
元虎はポケットから小銭を取り出すと、近くにあった自動販売機にお金を入れて温かい飲み物を一個かって、今日子の顔に当てた。
「俺が何とかしてやるよ今日子」
「・・・・え?」
何この人馴れ馴れしい・・。
「んじゃな」
今日子はしばらくその背中を見ていたが、手に中の温かいものを見る。
「・・・・あんこ汁」
家に帰り、玄関に鍵をかける。
「よし、落ち着いて、考えるのよ」
まず、義務教育だからお金なくとも中学は追い出されないし、もう卒業だから問題ないわ。問題は高校よね・・
「・・あー、入りたかったなあの学校!」
定時じゃきっと間に合わない、今までバイトの一つもしたことはないし、児童相談所って電話番号なんだったかしら・・お隣のおばさんとかに逃げ込もうかしら・・あぁ、でも親戚の盥回しってイヤ過ぎない?何より人の迷惑になるってのが・・
「・・・・」
お風呂入ろう
数十分後・・。
「・・・・きゃああああああああ!?」
「よ!風呂上りか?色っぽいな!」
顔をバンソーコーやシップだらけにした元虎がいた。
「なんで?不法侵入で訴えるわよ!」
「止めろよ~裁判はいい加減うんざりだ」
経験あるの!?
「何しに来たのよ!」
「何って?兄貴に上手く言ってさ、君このままココで住めるようになったよ?借金もないし、高校もいけるし、親は帰ってこないけど生活の必要費は兄貴が出してくれるって」
「兄貴ばっかじゃない!?」
元虎はコタツの中に入ってぬくぬくとしていた。
「・・そっちが何者か分からないけど結構です!返す当てもないし」
「兄貴が高校生しながら、うちの会社に働いてくれたらいいって」
「どんな会社よ」
「俺は良く分からないけど、なんか開発したり、調べたり、実験したり、壊したりだって」
「なんかってなによ」
「微生物?」
バイオハザード!?
「それは一部の話だった~あっはっは、表向きは宇宙開発に貢献してる」
「そう、やっぱりお世話になれません」
「えぇー本気でぇ?」
「本気です」
「じゃあ、今すぐ荷物まとめて出てって」
「は?」
元虎はコタツに入ったまま横になって目を閉じた。
「君の身にかかってる借金はそれほど大きいって事、普通に一生働いたって返せないぜ」
「脅してるの?」
「まさか!」
元虎は目を開けて微笑んだ。
「仲良くしようぜ、今日子」
これが彼との出会いで、運命の始まりでもあった・・。
「高校を無事主席で入学し、私が働くように言われた会社は大手中の大手・・『インビジブル』晴生さんの働いている会社です」
「ちょっと待てよ」
拓郎が頭を押さえながら言った。
「『永原元虎』って」
「はい」
○○
「やぁ!君が今日子ちゃん!ボクは永原元鷹社長さ!」
「・・・・お義父さん!?」
「あっはっはっは!」
○○
「お父さん!?」
「はい、つまり母の再婚相手が元鷹さんだったのです」
「今日子さん」
晴生は眉を顰めていった。
「どんな人生送ってきたんですか」
今日子は微笑んで流した。




