か・ぞ・く 11
「晴生さんと同じ会社の方・・」
今日子はニッコリしながら拓郎の目の前にお茶を置いた。
「あ、どうも~~~」
デレデレしやがって・・。
「すみませんが、今日お泊りさせてもらえませんか?」
「あら、いいですよ?」
「拓郎」
晴生は拓郎の頭を掴んだ。
「何を企んでいる」
「いやぁーはっはっは、ほんとにもう俺ってば好かれてて」
「拓郎!」
横に寄れたネクタイを掴みあげる。
「拓郎ちゃん、お父さんのお友達なの?」
明日香が間に入ってニコニコと笑った。
・・空気よめ
「お、可愛いなー俺は拓郎だ、拓郎ちゃんって呼んでいいよ」
「明日香っていうのーお父さんのお友達?」
「そうだぜー」
「違うだろう」
「ちがくないだろう、俺と友達じゃないって言うならお前、主任とお友達になりたいってのか」
「なんでそうなるんだ、死んでもいやだね」
「あらあら」
今日子はクスクス笑いながら晴生の分のお茶も差し出した。
「主任さんは随分嫌われているんですね」
「すごくな!」
いい笑顔で拓郎は微笑んだ。
「でも、アレはあれであの人の愛情表現なのかもな、晴生とそこは似てるなって思ででででで!?」
「ソレが用事か」
腕を締め上げながら晴生は目を光らせた。
「まぁまぁ、晴生さん」
今日子がやんわりと諭す
「そうだわ、私晩御飯を買ってきますので、お二人で留守番お願いしてもよろしいですか?」
「どぞー」
「お前が言うな!」
今日子は微笑むと明日香を手を繋いで部屋を後にした。
居なくなったのを確認して晴生は拓郎を睨んだ
「本当に何しに来た」
「主任から、頼まれてな」
拓郎はお茶を飲みながら懐から写真を取り出した。
「・・・・コレはっ!!」
主任の美しい筋肉をふんだんに醸し出したキモ写真
びり!!
「おいおい、気持は分かるけど、少しはコメントしてやれよ」
「何の意味があるんだあの写真」
「さぁ?本命の写真はこれな」
「・・・・?」
そこには遠慮がちに笑う今日子の写真があった。今よりも若い印象を受ける、髪の長さも肩までしかない・・。
「・・ストーカー?」
「俺も同じ事を彼に言ったよ、笑って流された」
相変わらずわけの分からない男だ
「!」
今日子の背景に広がる自然や、建物、来ている服に見覚えがあった。
「この場所はうちの社でもあの男のお気に入りしか入れないはず」
「てか、俺らの働き場だよね」
こうみえて幹部なんです
「でも、馬鹿な」
今日子は別の会社で働いているし、大学になど入っていないはず
「なんでだ?」
「さぁな」
拓郎はお茶を飲みほし、後ろに倒れた。
「なかなか美人じゃないか~楽しくやってるか?」
「ふん」
「素直じゃないヤツだなー・・昔の傷は癒えたか?」
「・・・・黙れ、なんのことだ」
「相変わらず、面白みのない男だ」
「ネーお母さん」
「なぁに?」
「拓郎おじちゃん、いい人だね」
手を繋いで買い物帰り、夕暮れには二人の影を映す。
「・・・・あのね明日香」
今日子は明日香の顔を見た。
「お母さんは、明日香がダイスキだからね」
「明日香もダイスキー」
「ありがとう」
今日子は微笑んだ。
「あの主任のことだ、意地悪でこんな写真見せて来いって言ったんだよ、気にすることはない」
拓郎の言葉に耳を傾けながら、晴生は溜息をついた。
「気にしていない、ただ」
「?」
「・・・・本当に主任は性格が悪いと思っただけだ」




