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【第33話】金紙に書かれたラブレターと、功徳の光<冥銭>

挿絵(By みてみん)

(本作の表紙イラストです!)

「ここが孟婆もうばを監禁している場所か?」


酒吧鬼は血の池の水を全て使い切ってしまったため、これ以上負傷しても回復する手段がない。痛む脇腹をさすりながら言った。「たぶん、肋骨が何本かイカれてるぜ」


「ああ。蛮横鬼の奴、正気の沙汰ではない。孟婆殿を『過酷なダイエット(ランニングマシン)』で苦しめるとは」 芸術鬼が忌々しそうに言った。


「俺……俺は、入らないでおく」 酒吧鬼が急に立ち止まった。


「また出たか。その『ヘタレ病』、どうにかしろ」 芸術鬼は呆れた。「正々堂々と彼女のハートを射止めたいだの、前世の縁に頼りたくないだの、ヒーロー気取りのテンプレ展開はご免だの……そんな茶番をいつまで続ける気だ」


「良心が咎めるんだよ」


「酒吧鬼(前世)だった頃は良心なんて欠片もなかったくせに!」


「当然だ。地獄で散々苦しんで、俺は心を入れ替えたんだよ!」


「ペッ」 芸術鬼は酒吧鬼の鼻先にツバを吐きかける勢いで言った。「この臆病者め」


「お前みたいに、後先考えずに行動できるほどバカじゃねぇんだよ」 酒吧鬼は鼻で笑った。「毎回お前のケツ拭き(後始末)をさせられる身にもなれ」


「誰が後先考えてないだと?」


芸術鬼は本当に後先考えず、酒吧鬼の顔面にストレートパンチを叩き込んだ。


「クソッ、文明レベルが『ギリギリ道具が使える類人猿』並みの奴とは、どうにもコミュニケーションが取れねぇな!」


酒吧鬼は芸術鬼の長く伸びた舌を思い切り下に引っ張りながら、強烈な膝蹴りをお見舞いした。


「教化不可能な筋肉ダルマめ! 再起動するか、さっさと輪廻転生してしまえ!」


「もう一度転生したら、俺という存在は永遠に消滅するんだよ!」



殴る蹴るの泥仕合が半時(約一時間)も続いた。傷の上に傷を重ね、ボロボロになった二人の鬼は、肩で息をしながら床に大の字に倒れ込んだ。


先に立ち上がったのは酒吧鬼だった。彼は手を差し伸べ、芸術鬼を引き起こそうとした。


芸術鬼はその手をパシッと払い除けて言った。「勘違いするな。これは『ひとしきり殴り合った後に芽生える男の友情』みたいな青春ドラマではないぞ」


「二つの前世で何百年も染み付いた習慣を、そう簡単に変えられると思うか? 三つ子の魂百までって言うだろ。変わろうと思ってすぐに変われるもんじゃない」 酒吧鬼は言った。「簡単に変わっちまったら、俺が今まで生きてきた意味がなくなるじゃないか」


「鬼(亡者)が一人で生きていれば、自分のために変わることなど難しい。結局のところ、誰かのために自分を変えるしかないのだ」 芸術鬼は諭すように言った。「お前が最後に変わったのは『死んで転生した時』だ。お前は死ななきゃ学べないのか? 少なくとも『変わるべき時』を知っていれば、なりたい自分になる選択ができるはずだ」


「死んで学ぶのが一番手っ取り早い」


「ならば俺が教えてやろう! 現世で蹴りを入れられれば地獄に落ちるかもしれないが、地獄で蹴りを入れられれば『天国ハッピーエンド』に昇れるかもしれないぞ!」


芸術鬼は電光石火の如く、全力を込めたドロップキックを酒吧鬼にお見舞いした。その蹴りには、かつて孟婆と対峙した時の恐怖の記憶と、「久病成良医(長く病を患えば自ずと名医になる)」の如く、散々食らい続けた『馬面の蹴り』の完コピ技術が込められていた。


「……これのどこが『転生』と違うんだよ! さっきのありがたい説教は全部屁理屈か!」


「お前はもう手遅れだ。物理で解決した方が早い」



強烈な蹴りを食らった酒吧鬼は、ランニングマシンの上の孟婆めがけて吹っ飛んでいった。空中で彼は必死に体勢を立て直し、孟婆を衝撃から守るための「肉クッション」になろうと抱きついた。


一万年もの間、変わることを拒み続けたこの女鬼に恋をしてしまったのだ。自分自身が何かを変えなければ、彼女の肉クッションになる資格すら——いや、その特権(ご褒美)を味わう資格すら得られないと、酒吧鬼は本能で理解していた。


「あら。どうしてそんなに傷だらけなの? 私を助けるためにそんな姿に?」 目を覚ました孟婆が尋ねた。


「ああ」 酒吧鬼はカッコつけて答えた。


「地獄の鬼に『良心』なんて機能は実装されておらんのに」 芸術鬼が余計な一言を放ち、酒吧鬼から強烈な睨みと「舌を引っ張って膝蹴りするぞ」というジェスチャーでの脅しを受けた。


孟婆はその小競り合いには気づかず、舌を引っ張る真似で固く握られた酒吧鬼の拳をそっと包み込んだ。彼女の手から黄金の光が放たれ、酒吧鬼の全身の傷が瞬く間に完治した。


「こんなかすり傷、わざわざ『功徳の光』を使うまでもなかったのに」 酒吧鬼は胸を張り、「血の池に浸かればすぐに全快するからな」と強がった。


「あのー、孟姐メンネエさん、私のこの全身の打撲も、ぜひともその光で治していただけないでしょうか!」 芸術鬼は恥も外聞もかなぐり捨て、孟婆の足にすがりついた。


「失せな」


孟婆は芸術鬼を容赦なく蹴り飛ばした。「血の池に浸かれば全快するんでしょ」


「痛ぇぇっ!」


孟婆は意味深に微笑みながら言った。「世の中、一発蹴っ飛ばせば解決しないことなんてないのよ。もし解決しないなら、二発蹴ればいいの」


そして最後に、酒吧鬼に向かって優しく微笑みかけた。


(第33話 完)



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

台湾の風習と地獄のブラックジョーク、そして少し切ないラブストーリーを交えたこの物語も……いよいよ明日、最終回(大結局)を迎えます!

見慣れない文化や設定もあったかと思いますが、画面の前の『あなた』がここまで付き合ってくださったこと、作者としてこれ以上の喜びはありません。

彼らが最後にどんな選択をし、どんな結末を迎えるのか。

泣いても笑っても、明日がラストです。どうか最後まで、彼らの物語を見届けてやってください!

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