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【第28話】二十年越しの眠れる森の美女と、筋肉馬鹿の事情<冥銭>

挿絵(By みてみん)

(本作の表紙イラストです!)

「山のような金紙なんて、あの世には一枚も届いておらぬわァ!!」 芸術鬼は頭を抱えて絶叫した。


「豚の体脂肪率ってのは、実はたったの18%なんだぜ」


酒吧鬼はまったく関係のない話題を振りまきながら、鏡の前でボディビルダーのように『フロント・ダブル・バイセップス(正面両手二頭筋)』のポーズを決めていた。


三生石によって前世の記憶を取り戻し、物理的に豚肉として食べられ、再び血の池で肉体を再構築された結果——前世の記憶と、若くして死んだ本来の肉体が完璧に融合し、全身バキバキの筋肉に覆われた、肌ツヤ抜群のマッチョな酒吧鬼が誕生していたのだ。


「ここまで奔走したのに何の成果も得られないとは! 一体どこで計画が狂ったというのだ!」 二人の会話は100%噛み合っていなかった。


「今の俺なら、天が落ちてきてもこの大胸筋で支えられるぜ」 酒吧鬼は『サイド・チェスト(側面胸大肌)』のポーズに移行した。


「金紙が届かなかったということは、お前はもう一度輪廻転生しなければならんということだぞ! 今度三生石を使ったって、もう酒吧鬼の記憶は引き継げない! 来世がゴキブリだったら、俺は『生命力に溢れたマッチョな豚』じゃなくて、ただの不気味な虫を拝むことになるんだぞ!」 芸術鬼はまくしたてた。「……いや、そのアイデア悪くないな。地獄の科学者に研究を依頼すべきかもしれん」


「そんなマッチョな豚、誰も食いたがらねぇよ」 酒吧鬼は『バック・ダブル・バイセップス(背面両腕二頭筋)』のポーズを取りながらツッコミを入れた。もはやボケているのかツッコんでいるのかわからない。


「人格が消滅する危機に瀕しているというのに、ツッコミを最優先するその芸人魂には感服するわ!」


「なんとかなるさ」 酒吧鬼は『サイド・トライセップス(側面三頭筋)』を決めながら言った。「それにしても、ボディビルのポーズってなんで筋肉の名前そのままなんだ? 必殺技みたいなカッコいい名前にすればいいのに。覇気が足りねぇよな」(※酒吧鬼から作者へのメタなツッコミ:功徳+1)


「で、どうだ?」 馬面めずが尋ねた。「酒吧鬼が戻ってきたらしいが、脈アリか?」


「体がゴツくなって、脳みそと性格まで変わっちゃったわ」 鐘藜ジョン・リーが言った。「スクラップ&ビルドの運ガチャには勝ったみたいね」


現在、ここは馬面の邸宅。地獄の女子(?)会こと「パジャマパーティー」の真っ最中である。メンバーは孟婆、鐘藜、そして馬面の三人だ。


「確かにいい体にはなったわね」 孟婆はゆったりと酒を飲みながら言った。「はぁ……前世の夫が酒吧鬼だってわかって、念願叶ってボコボコにしてやったら、急にやる気が失せちゃったわ」


「ボコった後に食ったんだろ?」 馬面がツッコむ。「本官がベジタリアンじゃなきゃ、一口もらいたかったぜ」


「亡者たちが私の作ったスープを泣きながら飲む理由が、今ならわかるわ」 孟婆は遠い目をした。「これを飲めばすべてがくうになり、前世も今生もどうでもよくなる。一万年も執着してたことが、急にちっぽけに思えてきたの。やっと見つけたら、相手は『豚』よ?」


「一万年もそんなこと考えてたなんて、バカみたいじゃない?」 鐘藜が笑った。「豚みたいに愚かね」

「お前ら、本当にいいコンビだな」 馬面は言いながら、「おいっす〜」と鐘藜の肩や尻を小突いてじゃれ合った。



「あんたたち、ホント呆れるわ」 孟婆は三歳児を見るような目で馬面と鐘藜を眺め、気怠そうに言った。「私、なんで『願いが叶った後』のことを考えてなかったのかしら。手に入れることばかりに執着して、手に入れた後のビジョンが全くなかった」


「あなたのスープ、たぶん匂いを嗅ぐだけでも効果があるのよ。長年その匂いを嗅ぎ続けて、免疫力が落ちてたのね」 鐘藜が冷静に分析した。


「絶対そうだな。だから俺も、昇給要求をいつも忘れちまうんだ」 馬面が同意した。


「絶対そうね。だから私も、転職要求をいつも忘れちゃうんだわ」 孟婆も頷く。


「絶対そうよ。だから私も、有給申請をいつも忘れちゃうのよ」 鐘藜も言った。


「「「乾杯!」」」


三人は一斉に杯を干した。


「それにしても、酒吧鬼が血の池から『豚頭人身(猪八戒スタイル)』で出てこなくてよかったな」 馬面が言った。「俺なんて時々、前世が軍馬で、もう一つの前世が将軍だったせいで、血の池がエラーを起こしてこんな馬顔にされたんじゃないかって疑うぜ」


孟婆と鐘藜は黙り込み、視線を泳がせて馬面と目を合わせようとしなかった。


「……おい、冗談だぞ。なんで黙るんだよ、ガチっぽくなるだろ!?」 馬面は焦った。


こんな時、酒吧鬼がいてツッコミを入れてくれればと切実に願った。誰もツッコんでくれないと、ただの「悲しき真実」になってしまうではないか! 早く俺にツッコんでくれ!


焦った馬面が孟婆と鐘藜に飛びかかり、ドタバタとじゃれ合いながら、地獄の夜は更けていった。


(第28話 完)

外食しようと思ってもお店が全滅……。この数日間、私の唯一の相棒はコンロとフライパンだけでした(笑)。ようやく『自炊地獄』から解放されそうです!

お腹も心も満たされたところで、物語の方も加速させていきますよ。

連休明けの更新も、ぜひ楽しみにしていてください!

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