【第21話】親友の拳と、語られる「息子」の真実<冥銭>
「すぐにまた会えるさ」 酒吧鬼(バーテンダー鬼)は孟婆にそう言い残し、馬面には「余計なことは言うな」と目配せした。
「今回だけは信じてやる」馬面はそう言って去った。
酒吧鬼が歩き出すと、芸術鬼が慌てて追いかけた。 「おい、本当に言うつもりか?」 「言うわけないだろ」
「あのねぇ、ここには抜舌地獄行きの予備軍がいるんですよ」芸術鬼が言いかけた口を、酒吧鬼が塞いだ。
「俺はもう、孟婆が好きだった『彼』じゃない」 酒吧鬼は言った。「生前、彼女が好きになったのは俺か? それとも『彼』か? ……今の俺として彼女を惚れさせなきゃ、不公平だろ」
「前世の記憶があれば、攻略法もわかるでしょうに」
「あいにく忘れちまった。何回スープを飲んだかも覚えてない」 酒吧鬼は空を見上げた。「ただ、気になるのは……どうしてあの時の俺は、彼女を待たずにスープを飲んだのかってことだ」
「俺の推測ですがね」 芸術鬼は言った。「三生石で未来を見たんでしょう。選択肢は二つ。『記憶を消して、生きている彼女に会う』か、『記憶を持ったまま、死後の彼女を待つ』か」
「それが一番皮肉なんだよ。今の俺は後者を選んだが、あの時の俺は前者を選んだ。なぜだ?」
「当時のあなたは賢かったんですよ。後者を選べば、今のあなたみたいに拗らせるとわかっていた。あなたが死んで待っている間に、彼女が心変わりする可能性だってある」
「おい!」 酒吧鬼は反論しようとしたが、図星すぎて声が出なかった。「……俺だってあの時の自分を殴りたいよ。まさか彼女が一万年も待ってるとは思わなかったんだ!」
「殴れるもんですか」 芸術鬼は鼻で笑った。「だから言ったでしょう。**『彼女にとって一番重要な人物』**に転生するために、その選択をしたんだと。……十中八九、孟婆の息子ですよ」
酒吧鬼は足を止めた。 「……どうやってそれを?」
「推測じゃありません。生死簿を調べた時に最初に見つけましたよ。あなたは死後、孟婆の息子として転生しています」
「……」 酒吧鬼は絶句した。 (第15話でモンモンが言っていた「息子に似てる」という言葉……あれは比喩じゃなくて事実だったのか!)
「なんで早く言わない!」 「抜舌地獄出身者は、ジョーカーを最後まで切らない主義なんでね」
芸術鬼は続けた。「で、どうするんです? 言わないつもりなら」
「自分の力でなんとかするさ。転生までどれくらい時間があるかわからんが」 酒吧鬼は真剣な眼差しで言った。「俺は自分の力で孟婆を取り戻したい。いいか、よく聞けよ。もう二度と、お前が余計な手出しやデートのセッティングをするなよ」
「……ふむふむ」 芸術鬼はニヤニヤし始めた。 (出たな、地獄名物**「押すなよ絶対に押すなよ(=押せ)」**のフリ!)
「違う、お前はわかってない」 酒吧鬼は察した。「この友人は義理堅くて頭も回るが、お節介病が発動するとバカになるんだった……。いいか、復唱しろ。『私は孟孟に、酒吧鬼が顔敬秀だとは言いません』。本名を出せば重要性がわかるだろ」
「ワタシハモンモンニ、ジョウバグイガ・イェンジンシウダトハ・イイマセン」 芸術鬼は高速で棒読みした。「で、バーはどうするんです? 私が店長代理をやっても?」
(店を閉めると「鬼気」が枯れてしまうな……) 酒吧鬼は考えた。「俺が戻ってくるまでストライキも終わってるだろう。トラブルを起こさなきゃ任せるよ」
(第21話 完)
41PVの柱が見えました。 最初から最後まで付き合ってくれた、あなたへ。 「ありがとう」 次はリアルタイムで地獄を楽しんでください。




