【第16話】結婚式のポケベル暗号と、油鍋のフルコース<恋文>
「頼む、誰か両替してくれませんか!」 遊園地の前で、スーツ姿の若い男が叫んでいた。彼は手にした二枚の百元札を振り回しながら、焦って腕時計をチラチラ見ていた。
通りがかりの人が財布を出してくれたが、男は首を振って落胆した。 そこへ、お化け屋敷から出てきたカップル——詹曉軒(中身は陳怡君)と李沐璇(中身は張志豪)が通りかかった。
怡君はズボンのポケットから財布を取り出したが、一緒に**金紙**が一枚ひらりと落ちた。さっきの「天女散花」で紛れ込んだやつだ。 「これなら両替できるわよ?」彼女は悪戯っぽく言った。
「あんた、八字(運気)が軽すぎるだろ。デートに冥銭持ち歩くなんて」 男は苦笑したが、すぐに真剣な顔になった。「俺は今日の結婚式の付添人なんだ。新郎新娘(新郎新婦)への関門ゲームで、紙幣番号に『4649』と『114106』が含まれる百元札が必要なんだよ!」
「数字の語呂合わせ?」
「そう、ポケベル(BBCall)暗号だよ!」 男は必死に説明した。「**『4649(ヨロシク)』と『114106(アイシテル)』**だ。この二枚を合わせて『これから一生ヨロシク、愛してる』っていうプロポーズになるんだ!」
「一生ヨロシク、愛してる……か」 男は祈るように手を組んだ。「頼む、あってくれ!」
「あら」 奇跡が起きた。曉軒の財布には、その両方の番号があったのだ。 (※6桁の『114106』が揃っているのは天文学的な確率だが、今の彼らには強運な幽霊がついている)
「うおおお!! 命の恩人だ!!」 男は歓喜した。「もしよかったら披露宴に来てくれ! ドタキャンが出たから二席空いてるんだ。俺の奢りだ!」
男は有無を言わさず二人を引っ張っていった。 「今の結婚式って、こんなハードなの?」志豪が聞いた。 「どの時代も結婚は戦争だよ」男は嘆いた。「昔は『鬧洞房(初夜の寝室荒らし)』がメインだったけど、今はその前哨戦である『伴娘の関門』が過激化してるんだ」
「面白そう」怡君は笑った。 「面白がってる場合じゃないよ。吉時が過ぎちゃうんだ。親御さんたちは人数なんてどうでもよくて、とにかく式を始めてくれって祈ってる状態さ」
新婦の実家は遠方のため、遊園地近くのホテルに宿泊していた。披露宴会場は地下だが、それでも若者たちはゲームをやめる気配がない。 「見てもいい?」怡君が聞いた。 「どうぞ。ただし巻き込まれないようにね」男は愛の証(紙幣)を持って走っていった。
ラスト関門は**『情熱のキス』**。 新婦の部屋の鍵が、氷の塊の中に封印されている。新郎は熱いキス(舌)でそれを溶かさなければならない。しかもキーホルダーごとガチガチに凍らされていて、全部溶かすには水600ml分くらいの熱量が必要だ。
新郎はすべての氷を溶かす愚は犯さず、鍵に近い一点を集中攻撃していた。 だが、舌が氷に張り付いてしまい、水をかけて剥がすという地獄絵図が展開されていた。たぶん、水をかけたせいで余計に凍りついている。
「これ、抜舌地獄と氷山地獄のハイブリッドじゃん」 志豪は戦慄した。新郎の舌は感覚を失い、だらしなく垂れ下がっている。まるで初めて会った時の芸術鬼のようだ。舌が口の中にあるのか外にあるのかもわかっていないだろう。
ようやく氷が解け、新郎は震える手で鍵を回した。 ドアが開く。ウェディングドレス姿の新婦が現れる。 その美しさに、新郎はすべての苦痛を忘れた。恋心が再燃する。 だが、彼は舌を口に戻し、手の甲でよだれを拭うという、最高に締まらない動作をしてしまった。まるでただのエロ親父だ。
(今の結婚式って過酷だな……時代の変化についていけない。むしろ氷山地獄で舌を抜く方が効率的かも。今後の地獄の参考にしよう) 志豪は心にメモした。
新婦は新郎を助け起こすと、伴娘の頭にゲンコツを落とした。 「やりすぎよ」 「ごめんなさ〜い。でも、真似したわけじゃないわよ?」伴娘は舌を出した。
その光景に、ロビーの野次馬たちから歓声が上がった。
※注釈:台湾のポケベル暗号について
本文中では日本の読者の皆様に伝わりやすいよう「4649(ヨロシク)」「114106(アイシテル)」と翻訳しましたが、**台湾の原作(中国語版)**では以下の数字が使われています。
•1314 = 一生一世
o意味:一生涯、永遠に。発音が似ているため。
•520 = 我愛你
o意味:愛してる。
台湾では「5201314(一生愛してる)」という並びが、恋人たちの定番の暗号として今でも広く使われています。




