【第15話】地獄の「息子カード」と、昏睡メモリアル<恋文>
「なんか変じゃない? 鬼屋敷(お化け屋敷)なのに、なんでこんなに明るいの?」 陳怡君——中身は曉軒——が眩しそうに言った。
「わからないけど、確かに異様だ」 張志豪——中身は沐璇——も同意した。
「わっ!」 突然、白い影(鄧律儀)が飛び出し、すぐに闇へ消えた。**「事了拂衣去,深藏身與名(事を了して衣を拂い去り,深く身と名を蔵す)」**のごとく、一瞬の犯行だった。
「今の見た?」怡君が聞いた。 「何も見えなかった」志豪は震えていた。「あの影が現れた時、光が強すぎて……憑依が解けそうになった」
彼らにとって、この鬼屋敷は**「光の洪水」**だった。 黃韻佳が貼った本物の魔除けの札が、強烈な法力を放っていたからだ。 逆に、人間である韻佳たちにとっては、ただの薄暗い通路であり、吊り橋効果でドキドキする絶好のデートスポットだった。
「ここ、怖いな……」志豪が弱音を吐いた。 遠くで韻佳がガッツポーズをした。(恐怖で身を寄せ合うカップル、尊い!)
「鬼屋敷なんてこんなもんよ」怡君は強がった。 二人は一人の「本物の幽霊」と出くわした。 その霊は、ここで地縛霊として封印されていたが、誰か(韻佳)がお札を剥がして移動させたせいで、封印が解けてしまったのだ。
「がおー!」 五、六歳くらいの幼女の霊が、白い服を着て現れた。 「かっ、可愛い〜!」 怡君は思わず抱きしめようとしたが、手は空を切った。 「本物の幽霊だ」志豪が言った。
遠くから見ている韻佳には、詹曉軒(怡君)が何もない空間に向かって手を伸ばし、怪しげな儀式をしているようにしか見えなかった。
「お嬢ちゃん、どうしてここに?」志豪が聞いた。 「ずっとここにいたの。今日、急に外に出られたんだ」幼女は言った。「私を助けてくれた人があなたたちを驚かそうとしてたから、私も真似したの。がおー」
「やだもう、心臓に悪いわ(可愛すぎて)」怡君は胸を押さえた。 「お姉ちゃん、私と似てるね」 「あら、お姉ちゃんが可愛いってこと? 上手ねぇ」 「お姉ちゃんって……」志豪は突っ込んだ。「君には彼女の本来の姿が見えるのか?」
「誰が私たちを驚かそうとしてるの?」 幼女は後ろを指差した。怡君と志豪は顔を見合わせて笑った。
床には、演出用の金紙(冥銭)が散らばっていた。 人間には不気味なゴミだが、彼らには温かい光に見える。二人はデートの記念に金紙を拾い始めた。幼女も面白がって手伝った。
その時、足音が近づいてきた。 韻佳がスマホの録画ボタンを押した。「親友のゴシップは……いや、芸術は私が守る!」
「わっ!!」 律儀が再び飛び出した。 二人は驚いて、持っていた金紙を放り投げた。
金紙が雪のように舞い散る中、四人の目が合った。 時が止まる。
「やばっ、バレた!」 韻佳は律儀の襟首を掴み、脱兎のごとく出口へ逃走した。
怡君と志豪は大爆笑した。幼女もつられて笑った。 この血塗られた刑場跡に、数十年ぶりに純粋な笑い声が響いた。
「この子、どうする?」怡君が聞いた。 「私はここから出られないの」幼女は言った。
「そうか……」 怡君は自分と重ね合わせた。(地獄に行けば友達ができるかもと思ったけど、芸術鬼たちは志豪の友達だもんね……)
「じゃあ、ここで頑張って驚かすのよ。見える人がいたら、憑依して外に出られるかもしれないから」 怡君は虚空を撫でた。




