【第14話】お化け屋敷の張天師と、刀山ピクニック<冥銭>
銀色に輝く丘陵。 雪景色にも見えるが、よく見ればそれは無数の鋭利な刃物だ。 ここは陰間第七層・刀山地獄。 かつては冒涜者や殺生者が悲鳴を上げる場所だったが、ストライキ中の今は静寂に包まれ、皮肉にも地獄で最も美しい絶景スポットになっていた。
鏡のように磨き上げられた刃の上を歩けるのは、軽功の使い手か、罪のない者だけだ。
酒吧鬼(バーテンダー鬼)はスイカを放り投げた。 スパッ! 落下したスイカは刃に当たって綺麗にスライスされ、彼が差し出した皿の上に並んだ。
「便利だな、ここ」酒吧鬼は言った。 「よくこんな場所を思いついたわね」孟婆も感心していた。
場所を選んだのは芸術鬼だ。 『絵を描く時はレイヤー(層)が大事です。まず背景の刀山を描き、次に鬼や血を描く。今の地獄は鬼も血もないレイヤー1の状態。つまり絶景です』 あのナンパ計画が、まさか自分のデートプランになるとは。
各層地獄の境界線は本来厳格だが、芸術鬼が引き起こした「金紙インフレ」と、酒吧鬼が作った「贖罪券システム」により、罪が通貨として流通し、国境が消滅したのだ。 酒吧鬼がここにいられるのも、天才(芸術鬼)が持っていた「刀山地獄フリーパス(贖罪券)」のおかげだ。
「さあ、どうぞ」酒吧鬼は皿を差し出した。「スイカ、リンゴ、梨。全部カット済みです」 「じゃあ、頂くわ」孟婆は悪戯っぽく微笑んだ。
「あの、なんてお呼びすれば? 『孟婆』は役職名ですよね? 本当に孟さんなんですか?」
「あだ名でいいわ」彼女は言った。「親友は私のこと**『孟孟』**って呼ぶの」
「モンモン……」
「変でしょ? そう呼ぶのは世界で数人しかいないわ。……ねえ、食べ終わったら山に登りましょ!」
「えっ? 見るだけじゃなくて?」
「せっかく来たんだもの!」
孟婆は靴を脱ぎ捨て、裸足で刃の上に飛び乗った。 ぴょん! 彼女の体はゴム毬のように弾んだ。 「うふふ、捕まえてごらんなさい!」
「軽功の達人ですか!?」
「違うわ、**『功徳』**よ!」 彼女は空中で叫んだ。「長年スープを配って徳を積んだから、地獄の刃も私を傷つけられないの。……あなたのカクテルが苦かったから、自分の徳が足りないのかと焦ったわ!」
「ここは砂浜じゃなくて刀山ですよ……」 酒吧鬼は独りごちたが、彼女の笑顔を見て覚悟を決めた。 恐る恐る刃に触れる。切れない。彼には罪がない(受刑済み)からだ。しかし功徳もないので弾まない。彼は刃をかき分けながら必死に後を追った。
遠くから監視していたイケメン幽霊は舌打ちした。 「チッ、あそこは俺には無理だ」 彼には罪がある(らしい)。
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一方、芸術鬼は馬面将軍の太ももに縋り付いていた。
「お願いです閣下! もう一度だけ三生石を使わせてください!」
「貴様、地獄を自宅のリビングか何かと勘違いしてないか?」 馬面は呆れた。「転生もしない、身内も探さない。何のために使うんだ?」
「人探しです!」
「またか! お前、まだ懲りずにトラブルを起こす気か?」
「違います! 孟婆のために……いや、孟孟のために!」 芸術鬼は事情を説明した。
馬面は腕を組んだ。
「……三生石は役立たずだ」
「え?」
「三生石のデータ容量には限界がある。記録できるのは**『前世・今世・来世』**の三つだけだ。もし対象者が四回目の転生をしたら、一番古い『前世』のデータは上書き(オーバーライド)されて消える」
馬面は続けた。「モンモンが陰間に来た時、彼女の旦那はすでに二回輪廻していた。だから三生石で検索してもヒットしなかったんだ」
「モンモン?」芸術鬼は耳を疑った。
「あいつは本官の**マブダチ(親友)**だ。文句あるか?」 馬面は鼻息を荒げた。「モンモンが転生を拒否している以上、三生石には彼女の来世データも生成されない。スープを飲んで転生予約をした者だけが、データベースに登録されるんだ」
「つまり……」 芸術鬼の脳内でパズルが組み上がった。 「孟婆の旦那は、一度目の転生後、三生石で孟婆との前世を見た。そしてスープを飲んで二度目の人生へ。そこでまた死んで戻ってきた時、三生石で自分の来世(三度目)を見た。……そこで『孟婆と再会できる』と知ったから、スープを拒否した?」
「……あるいは」芸術鬼は青ざめた。 「スープを拒否して、記憶を持ったまま逃亡した?」
(第14話 完)
お読みいただきありがとうございます。 別作品で「測字(漢字を分解して占う)おじさん」の話を書いているんですが、AI翻訳が息をしてません。 漢字の言葉遊び(ダジャレ)は、最新のAIにとっても地獄のようです。 無事に翻訳できたら公開しますので、気長にお待ちを。




