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第八話、お泊まりデート

「いや、もっとちゃんと寝て⁉︎ いつも何してんの?」

「ベッドの上でゴロゴロ? 光流がいると寝れるかも。ショッピングより先にうちにくる? 添い寝して」


 ——添い寝⁉︎ 僕の心臓が確実に止まる自信しかないんだけど?


 心臓の前に意識が飛びかけた。

 それを見ていた愁がケラケラと腹を抱えて笑っていて、揶揄われたのだと分かっていてもその顔があまりにも尊すぎて、写真を撮ってスマホに収めた。五年は寿命が伸びた気がする。愁に向けて合掌すると「ねえ、拝まないでくれない?」と、さすがに引かれた。


「もうすぐ修学旅行だね。班とかどうする?」

 誰かの声が聞こえてきて、そちらに視線を向ける。


 ——班か。修学旅行、愁と一緒の班で一緒の部屋がいいな。


 修学旅行へ行くにあたって一つ不安要素がある。小学生で行った研修や修学旅行で夜間に発作が出た事があるからだ。


 中学生の時は出なかった気がしたので大丈夫だとは思うけど、あまり安心はできない。

 一人思案していると、一人の男子生徒が足早に近づいてくるのを察して目を合わせる。井口という名前の生徒だった。


「なあなあ、村上と海堂さ、修学旅行の時俺らの班にならない? ちょうど二人居ないんだけど俺らの班ってさ、あの……一緒にいるの嫌がられるんだよね。お前らも二人一緒がいいだろ? な?」


 困ったように微笑まれる。

 どういう意味なんだろうと待機している三人をみると、言いたい事が何となく理解出来た気がして「あー」と小さく声を出す。

 彼らはそれぞれがクラス内でも有名なカップルだ。きっとカップル二組の間に居づらいのだろうと推測できた。


「愁、どうする?」

「光流に任せる」

 それなら良いだろう。自分としても他のメンバーがカップル同士で動いてくれたら気兼ねなく愁と一緒に行動出来るのもあって嬉しい。

「じゃあ、一緒になってもいいかな? 僕は部屋も愁と一緒がいい」

「おう! 任せろ! 寧ろ有難いし嬉しい!」

 まだホームルームで話題に上がっていないのに、早々と班が出来てしまった。




 ***




 ——やってまいりました。お泊まりデートの日です。


 しかもその後愁の部屋に初お泊まりだ。この部屋には何度も泊まっているが、人の部屋で見せる顔と自分の部屋で見せる顔というのは違うものだろう。


 どんな部屋でどんな顔を見せてくれるのか想像するだけで頭が爆発してしまいそうで、ベッドのスプリングに何度も額をぶつけて弾ませる。


「違う。単なるお泊まりだからっ! いかがわしくないからっ! それは妄想!」


 自室の中で一人でノリツッコミしてみる。


「妙な妄想ばっかしてるし僕行かない方が良いんじゃないかな?」


 推しを汚している気がして妙に後ろめたい。

「でも、ちょっと周りには見せられないような推しの表情とか……? 撮る一択‼︎」

 だからダメだってば。そんな写真撮ってどうするの? 自問自答で葛藤してばかりで最後に賢者タイムに入った。

「やっぱりお泊まりは断ろう……」

「何してんの、光流。ドタキャンは許さないから」


 背後から愁の笑いを含んだ声がして思いっきり身をすくませた。

 とうとう幻聴が聞こえるようになったのかと思ったけれど、違ったらしい。そこには愁が立っていた。


「なに光流、オレのエッチぃー顔が見たいの?」

「エッチ……っ⁉︎ 違っ、さっきのはそういう意味じゃなくて……その……っ」


 しどろもどろで答えると愁が意地悪に笑んで見せた。


「なんだ、違うんだ。オレはそっちの意味でも良かったのに」

「ちょっ、愁‼︎ あまり揶揄わないで!」


 今日は一段と輝いて見えるのはちゃんとした私服姿だからだろうか。髪の毛もちゃんとセットされていて、耳にピアスが開いている。


「あ……耳、開けてたんだ?」

「うん、中学生の時から開いてる。こういうの嫌?」

「ううん、死ぬほど似合ってるしカッコいい。なんか大荷物だね」


 愁が大きめの紙袋を手をしているのを見て、声をかけた。


「家にあった服色々持ってきたから光流にあげる」

「え、本当に⁉︎ 嬉しい。でも僕には大きいんじゃないかな?」

「大丈夫だと思うから試しに着てみて」


 だから先に家に寄ってくれたんだと思うと嬉しかった。

 床の上に座り込んで中身を取り出していく。中にはドライヤーみたいなものとスタイリング剤がいくつか入っていた。


「これは?」

「コテとワックス。あとは部分的に色をつけるやつ。洗うと落ちるから大丈夫だよ。オレが全部やってあげる」


 服は着回しききそうな物ばかりで、一週間分はあった。指定された服に着替えると、愁が髪の毛にスタイリング剤を持ち込んだ後で、コテと呼んだ物に手を伸ばした。全体的に少しだけ髪の毛を巻かれていく。


「愁、何してるの?」

「光流の髪の毛にカールつけてる。人って髪型一つで結構変わるもんだよ?」


 まあ、それは愁を見ていれば分かる。素の愁とウィッグ頭の愁は全然違って見えて初めて知った時は驚いたからだ。

 ただ瞳の奥の熱というか、意志の強そうな眼差しは変わらなかった。だからこそ気がつけたんだけど。


 髪を巻いた後で無造作にかき混ぜられる。今度は毛先だけ強調するように別のワックスをつけられ、最後に青色をした太いペンみたいなのを部分的に入れられた。


「あ、ヤバ……気合い入れすぎたかも」

「え、もしかして似合わない?」


 愁が口元を押さえたまま横に首を振る。


「そうじゃなくて……逆というか……」

「どういう意味?」

「光流、オレ以外と出かける時があっても出かけないでね」

「支離滅裂なんだけど?」


 どこか挙動不審になっているのが面白くて愁を見上げて視線を絡ませた。すると見る間に愁の顔が赤くなっていったので、そのご尊顔をまたスマホに収める。


「照れてる愁の顔って可愛いよね」


 大きな手の平が視界を覆った瞬間、頬に温かいものを押し当てられた。


「何?」

「何でもない。ほら、準備終わったから行くよ」


 腕を引かれて立ち上がらせられる。スマホと財布だけをバッグに入れたとこで腕を引かれて一緒に一階へと降りた。



「あらあら、光流くん。今日は一段と可愛いわね。じゃあ愁くん、光流くんをよろしくね。うちにもまた泊まりに来てくれるかしら?」

「近々お伺いします。じゃあ、光流借りていきますね!」


 美咲に手を振り、外に出る。最寄駅で電車に乗ってショッピングモールのある駅で降りた。


「凄い人だね」

「休日だから余計にじゃない?」

「へえ、そうなんだ。愁はどのショップに行きたいの?」


 家を出る前から中々視線を合わせてくれない愁の顔を覗き込むとまた顔を赤められてしまった。今日の愁の照れるツボはよく分からない。


「ねえ、僕やっぱり変なんじゃない? さっきから周囲からの視線がいつもと違ってて落ち着かないって言うか……」

「変じゃないよ……変というか、可愛い」

「ふふ、気を遣ってくれなくて良いのに」


 自分の事は自分が一番よく分かっている。


「そんなんじゃ……」

「愁、これは? なんか愁にめちゃ似合いそう!」


 愁の手を引いてショップの中に入る。マネキンが着ていた服を探して愁に合わせると、マネキンよりも様になっていた。


 ——来て良かった! 真剣な表情で服選びする推し尊い!


 目頭を押さえて歓喜に震える。普通にシャッターを切るだけじゃ物足りなくてバーストで収める。


「ちょ、バーストはやめて!」

「だってかっこいい」

「光流って感じするけど。それじゃお店の人にもお客さんにも迷惑かかっちゃうでしょ?」


 ハッと我に返って「すみませんでした」と言ってバッグにスマホをしまった。

 興奮し過ぎていて周りが見えていなかったようだ。肩を落としていると、さっき自分が選んだ服だけを買った愁に手を引かれて店を出る。


「ごめんね。他の服は良かったの?」

「光流が選んでくれたやつだけでいいよ。もっとゆっくりできるとこ行こう?」


 ——手……。


 意識が一点に集中していき、顔が火照り出す。意識してしまうともうダメで、手に心臓でもあるかのように脈打ち出した。


 ——手を繋いで歩くとか、本当にデートみたいだ。


 愁は揶揄っているだけかもしれないけれど、自分にとっては初めての経験なのもあって面映い気持ちになった。

 時折り、愁の顔を盗み見る。照れるわけでもなく、疑問にも感じて無さそうな表情をしていたので、こんなに緊張しているのはフェアじゃない気がしてきた。


 ——愁ってズルいよね。


 でも、カッコいい。ズルい……かっこいい。また堂々巡りだ。推しにはどう足掻いたって勝てる気がせずに諦める。

 そもそも勝手にドデカ感情を抱いているのは自分だけなのだから仕方ない。分からないように深く息を吐き出した。


 いくつかショップを渡り歩いて服を買った後でフードコートで昼食を食べていると、三人連れの女子グループに声をかけられた。


「こんにちは。綺麗な色ですね、染めてるんですか?」


 愁の髪の毛に自然な動作で女の子の細い指が緩くかかる。


「地毛だよ」


 目的は愁なのだろうけど、愁があまり喋らないからかこっちにまで話を振られる。いわゆる逆ナンと呼ばれるものかもしれない。初めてなのでこれをそう呼んでいいのかは分からないけど。


「一緒に遊びに行きませんか?」

「え、あの……」


 こういうのは初めてでしどろもどろになってしまった。クラスの女子なら話すのは慣れてきたけれど、全く知らない人とどう接していいのかも分からずに、喋るのがツラくてドリンクを手に取る。


「ごめんね、オレたち恋人同士で今デート中だから遠慮してくれる?」

「ごふっ」


 今まで見たこともないくらいに爽やかな笑顔を浮かべて言った愁を見て、思わず飲んでいたジュースを吹く。


 ——恋人……っ。てか、何でジュース飲んでたの僕。今のキラキラ笑顔を撮りたかった……。


 せっかくのジュースももったいない。二口分は損した。せっかく愁が買ってくれたのに。

 貰った服に掛かっていなかっただけでも良しとする。


「光流大丈夫?」


 聞きながらも笑っているので、大して心配はしていなさそうだ。その間に女子たちはそそくさと去って行ってしまった。


「心配してないくせに」

「うん、ごめんね。面白かった」


 フルフルと肩を震わせて笑っている愁の頭に手を伸ばす。「何?」と視線で訴えかけてくるのを無視して、さっき女の子に触れられていたあたりの髪の毛に指を絡める。


「僕以外が愁に触れるのって……なんか嫌だなって思って」


 唖然とした顔をされたので、今更ながらしまったと後悔した。


「あ……ごめんなさい、何でもないよ。今のは変な意味じゃないから! だから気にしないで」


 ヘラリと曖昧に笑ってみせる。いつものように話題を逸らそう。ネタを探す為に左右に視線を巡らせた。が、先に次の話題を振ったのは愁だった。


「食べたらここ出て別のショップ行ってもいい?」

「うん、どこでもいいよ。僕は愁が行きたいとこに行きたい」


 今まで興味もなかったというのもあり、ファッション系統にはかなり疎い。今日の服装だって愁からの貰い物で、しかも組み合わせたのも愁だ。


 ——あれ? でもサイズが僕にピッタリなのはどうしてだろう?


 愁との体格差を考えてみても、お下がりがピッタリな筈がない。推しが尊過ぎて写真を撮っていたのもあって疑問にも感じていなかった。


「愁、服ってさ……」

「そろそろ行こうか?」


 愁が二人分のトレイを持って立ち上がる。話し出したタイミングが被ってしまい、真相は聞きそびれた。

 それから場所を移動して色んなショップを渡り歩いていく。愁自身の服だけじゃなくこちらの服まで買い始めたから焦った。


「修学旅行で必要でしょ?」

「そうなんだけど……。あとでレシートちょうだい? ちゃんと返すから」

「光流、今度はあそこにしよう?」


 はぐらかされ、手を引かれる。また手を繋がれるとつんのめって転けそうになってしまった。


「ごめんね。大丈夫だった?」

「うん、平気」


 ——そんな軽々と受け止めないで……。


 距離が近過ぎて心臓に悪い。近距離で拝む推しの顔はもはや凶器に等しい。


 ——僕はきっとこのご尊顔を拝む為に生きてきた。


 心の中で深く頷く。それからは手もずっと繋がれたままで歩くペースも落とされた。恐らくは合わせてくれたのだろう。


「オレ、デートってした事ないから舞い上がっちゃって相手に合わせるの忘れてた。ちゃんと検索して勉強したんだけど……上手く出来なくてごめんね。足とかしんどくない?」

「ううん、大丈夫。愁は? しんどくない? その前に僕と一緒で退屈じゃない?」


 大きく瞬きされる。


「光流と一緒にいて退屈なわけないじゃん。すっごい楽しい」


 ——無邪気な笑顔っ、尊すぎる!


 大口を開けて笑った愁をパシャリと写す。


「本当に光流は油断も隙もないね」

「推しの満面な笑みとかご褒美以外の何ものでもないよ」


 ふふっと微笑むと逆に写真を撮られた。荷物がたくさんの手で写すなんて、手先もかなり器用だ。


「お返し」

「僕の顔なんか写しても良い事ないよ?」

「使い道ならあるよ。この角度からの光流の上目遣いはヤバいから……てか、ほら行こう?」


 ——使い道……? 何に使うんだろう?


 今度は軽く手を引かれたのでつんのめって転けそうになる事はなかった。

 途中途中で休憩を交えながら服を買っていく。


 ——どれだけ買う気なのかな。


 手を繋いでいる分、愁の右手に荷物だけが増えていった。重そうだ。見てみぬふりは出来なくて空いている左手を差し伸べる。


「僕も持とうか?」


 少し考えた顔をしてから愁が破顔した。


「んじゃ、この三つお願いしていい?」

「任せて!」


 荷物を引き受けて歩き出す。愁が行きたいと行った店でまたいくつか買い物を済ませて外に出る。


「まだ服買うの? それとも別のものも買う?」

「ううん、今は借りてる部屋に向けて歩いてる」

「ふーん、そうなんだ……」


 ——部屋……部屋? こんな都心部に⁉︎


 そういえば金持ちだったと思い返して、封筒の事を思い出した。


「愁さ、まだお金そのまま持ち歩いてるの?」

「ううん、今は殆ど銀行に預けて使う分だけ家に置いてるよ。前に光流んとこ行った時、美咲さんに言われたんだよね」


 いつそんな話をしていたんだろう。全然気が付かなかった。


「なら、良かった。僕もあれはどうかと思う」

「そうなのかな。すぐ出せて便利だったんだけどね」

「盗まれるからダメだよ。それに始めは盗む気なかったとしても、魔がさしちゃう可能性もあるからね?」

「そういうもん?」

「そういうもんだよ」


 分かった、とどこか機嫌良さげに歩く愁の顔を横から見上げる。

 一日くらい一緒に居れば推しの尊さに慣れるかと思ったけど、推しの魅力は慣れるどころか増している気がした。


 太陽光にさらされてキラキラと輝いていたプラチナブロンドは、今は夕日のオレンジ色に溶け込んでほんのりと哀愁さと儚さを演出している。微かに香るくらいの推しの香水ぽい香りを風が運んできて「グッジョブ」と心の中で叫んだ。


 ——大変です。自然界が推しを演出する為に存在しています。寧ろいい仕事しすぎです。


 眩暈がした。


「疲れた?」

「ううん、違くて……愁が輝き過ぎていてツラい」

「うん、意味わからない。あ、着いたよ」

「……」


 ——推しの部屋が、ターミナル駅直結の高層高級マンションだなんて聞いていません。


 さっきとは違う意味でまた眩暈がした。そのまま自動ドアに向かいそうになって思わず足を踏ん張る。


「待って待って待って、愁! ここは僕が足を踏み入れちゃいけない気がするっ‼︎」

「そんな事ないよ。気にしないで? ほら、行くよ光流」

「え? ええっ⁉︎」


 まだ足を踏ん張ったままでいると、愁に顔を覗き込まれた。


「オレの部屋に来るの……嫌?」


 困ったようにはにかまれると、その顔の良さに脳神経を焼き切られた気がして、背筋を伸ばす。


 ——え、何? マンションの照明までもが推しを輝かせてくるんですけど?


 その前にそんな顔で頼まれて断れるわけがない。


「嫌じゃないです‼︎」


 無意識に大きな声で答えていた。推しに弱すぎる自分に腹が立ったのは初めてだった。


「良かった。じゃあ行こうか」


 ——何してるの僕……。


 無理無理無理。推しにあんな捨てられたような子犬みたいな顔で「嫌?」なんて聞かれたら断れないじゃないか……。


 ——あ、写真撮り損ねた。


 あらゆる意味でショックを受け、落胆を隠せない。

 ホテルのロビーのような場所に入ると、何かの用事を済ませてきたのかコンシェルジュが急いで歩いてきて頭を下げられた。


「おかえりなさいませ、海堂さま」

「三枝さん、ただいま。この子これからちょくちょくオレの部屋に来ると思うから覚えといてくれる? オレが居ない時に来てもオレの部屋に通してくれていいので」

「かしこまりました」

「よよよよよろしくお願いします。村上光流です」


 頭を下げて挨拶を済ませるなり、エレベーターに向かった。

 全てにおいて緊張する。どの内装も見慣れないものばかりで落ち着かない。エレベーターに乗り込み上を目指した。二十三階で止まったのでエレベーターを降りる。扉の外から室内を見てまた足を止めてしまった。


 ——広っ‼︎


 とても一人で住んでいるとは思えない空間が広がっていて、いつどこかの扉が開いて家族が顔を出してもおかしくなかった。

 ただやはりシンプルすぎるというか、広いだけで生活臭というものがまるでない。一人でこの空間はあまりにも寂しすぎる。愁が寝れない理由はこの部屋のせいなんじゃないかとすら考えてしまった。


「こっち座ってくれる?」

「うん、分かった」


 怖気付いていたのも忘れて、リビングに置かれてある無駄に大きなソファーに腰掛ける。


「愁いつからここに住んでるの?」


「転校してきてからだから、ここは住んで日が浅いよ。あの人の仕事の都合で転々としてたから、その前もその前もこんな感じかな? 中学から一人で住んでる。でも毎日あの人と顔を突き合わせなきゃいけないのかって思うと一人の方がマシ」


「あの人?」

「産みの母親」


 前に教室内で妹の事を〝あの子〟として片付けていたのを思い出し、家族間の仲が良くないのは言われずとも感じ取れた。踏み込んで聞いて良い話じゃない。また愁も話したくない様子だったのもあってそのまま口を閉ざす。


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