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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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「ハナウタ」

作者: ロート
掲載日:2026/01/24

結構頑張ったので感想をいただけると嬉しいです。修正点等もあれば教えてください。語彙についていって貰っても構いませんので、よろしくお願いします。

“ハナウタ”それは命が果てた者たちの人生の唄。これはそれらの歌詞を記した日記である。


ーーー



いつからだっただろうか。ベッドに入って寝ると、歌のようなものが聞こえるようになった。歌詞を聞き取ろうものならば目を瞑っているにも関わらず、目の前に景色が広がりだす。今から最初に見た景色を書こうと思う。



『閉じていた目を開く。真っ白な天井。横には点滴がぶら下がっており、右腕へとつながっている。おそらく病院なのだろう。


左手側には大きな窓がついており、日向が心地いい。窓に手を伸ばそうとするが左腕が上がらない。見てわかったが両腕も体も細く痩せこけっている。この体は病弱なのだろうか。そもそもこの体は誰のものだろう。


元々の自分の体は持病もないし、病弱なわけでもない。体を起こしているのも辛いので、ベッドに体を預けるとすぐに瞼が落ちた。弱っている体は疲労が溜まりやすいのだろう。


次に目が覚めたのは、看護師に起こされた時だ。点滴があるのでご飯はいらないが、体を清潔にする必要がある。


自分では動けないので看護師に拭いてもらうが、不思議と恥じらいはない。やはり自分の体だという意識がないからだろうか。


拭き終わった後、ベッドを整えていると廊下の方からタッタッタと小さく、早い足音が聞こえる。


「おにいちゃん!見て見て〜、今日学校のテストで100点取ったの〜!」


小さな女の子が紙を一枚、痩せこけた膝に乗せて見せてくる。見た感じ、小学2、3年といったところだろうか。


すると体が勝手に動く。女の子の頭を力の入らない右手で軽くポンポンと頭を叩く。


「100点か〜。偉いな〜。やっぱり俺の妹は天才だな。」


口と体が勝手に動く。さっきまでは自分で体を動かせたのに。


困惑していると急激に瞼が重くなる。やはり、この体の疲労は異常なほどにたまりやすいみたいだ。そのままベッドに寝っ転がって目を閉じた。


目を開くとそこはいつも通りのベッドの上だった。天井は明るい茶色をした木。クリーム色のタオルケットに白色の毛布。自分の部屋のベッドだとすぐにわかる景色。

今までのは夢だったということだ。あまりにも現実味の強い夢旅行だった。』



―――



今日は学校で模試があったためか、いつもよりも疲れている気がする。今夜はできればゆっくり寝たいがおそらく……また夢を見るのだろう。そう思いながら目を閉じる。



『バゴオォオオン!と大きなと言うか、日常では決して聞くことのない大きさの音が耳の入る。音のせいでキッーーンと耳鳴りが続く。


鼓膜が破れてしまいそうだ。夢の始まりがこんなのでは先が思いやられる。


「おい!貴様!そんなところで寝ている暇はないぞ!」


怒号と銃声が飛び交う中、叱責を喰らう。ここは一体どこか、という問いより先に察することができた。ここは塹壕の中に築かれた防衛線。つまりは戦場なのである。


証拠に自分は焦茶の軍服を見に纏い、右肩にはライフル銃がかかっている。腰には短剣が刺さり、胸ポケットには包帯がある。おそらく衛生兵も来れないほどの激戦区域。


生臭い血と焦げ臭い火薬のにおい、そして兵士のうめき声と忙しく走り回る足音、何より爆発による熱風がこれは現実だと言い聞かせてくる。ここではやらなければやられるだけ。ならば少しでもあがかなければ。


隣の兵士を見ながら見様見真似でライフル銃を構える。引き金に指をかけると鉄製のひんやりとした冷たさが手に伝わる。


「バカ!頭を出しすぎだ!そんなんじゃ早死にするぞ!」


なっ、あの兵士をまねたのに……と思いながらお手本にした兵士の方を見ると、黒く濁った紅色が視界いっぱいに広がっていた。兵士の頭からはヘルメットが外れ穴が開いている。遺体となった兵士から液体がが自分の足まで這うように近づいてくる。まるで助けを乞うように。もう死んでいるにも関わらず。


夢だから平気だと思っていた自分の考えが否定される。ここでは死ぬ。新鮮な鉄分の匂いが鼻をつく。


やばい、やばい、やばい。これは死ぬ。塹壕の陰に隠れながらライフル銃に抱きついて震える。銃を撃ったことのない素人である自分にこんな場所でどう生きろというのだ。


「さっきから何をしている!一発でも多くの弾丸を撃て!当たらなくてもいい!弾幕を張れ!」


そうか、狙わなくていい。撃つという行動自体がここの場においては大切なのだ。


銃だけを塹壕から出してひたすら撃つ。撃っては薬莢を排出し、弾を込めては撃つ。マガジンはどっかに落としてしまった。一発づつ込めて撃つしかない。


直後、爆音とともに塹壕が揺れる。爆弾によって壁が削れてしまった。もう隠れるところはない。顔を上げると目の前にはミサイルの弾頭が自分めがけて飛んできていた。


この時、死を覚悟した。というか死んだと思う。だから戻ってきたのだ。いつもの落ち着くベッドに。』


戦場にいる人に悪いかもしれないが、あんな所には二度と行きたくないし経験もしたくない。まだ鼻に焦げた火薬と血なまぐさい匂いが残っている気がした。



―――



さあ、今日も今日とていい夜だ。ここ最近は悪夢にうなされる。少しぐらい寝かせてほしいものだな。


『目を覚ますと天井が見える。ただ、自分の部屋の天井ではない。星空の壁紙のようなものが壁から天井へと伸びている。

体に違和感は特にない。強いて言えば女子であるとだけ言っとこう。上半身を起こすと窓から突き刺すような光に照らされる。


さっきまで夜だったのに急な朝は脳みそが混乱するな。今回するべきことは何なのだろう。体の年齢はおおよそ十一歳、ならば小学校に行くべきか。小学校なんて何年ぶりだろう。すこしワクワクとして気持ちで部屋のドアを開けると真っ白い廊下が広がっている。おそらく新居か。


階段を見つけたのだ降りてみるといい匂いがする。よく焼けたパンの匂いだ。


「おはよう。よく眠れた?朝ごはんは机に並べておいたから食べっちゃって。じゃあママは仕事だから、ちゃんと学校行ってね」


会話的にこの体の母だろう。

母は急ぎながら上着を着て足早に家を出ていった。机の上には茶色く焦げ目のついた食パンと目玉焼き、小皿にはりんごが取り分けられている。机に座って朝食を食べながら考える。


このまま学校に行ってもこの体の記憶がない以上どこかしらでボロが出るのは間違いない。最悪学校に行かないという手もあるがあまりやりたくはない。

……まあなんとかなるか。


朝食を食べ終えると赤色ランドセルを背負って家のドアを開ける。

そういえば俺は登校班も知らない。そもそも学校がどこかも知らない。悩んでいると声をかけられる。


「お〜い、もう全員揃ってるよ。学校いかないの?」


声の方向を見ると優しそうな顔をした男の子がいる。身長的に小学六年生だろう。つまり俺の登校班の班長。そのまま班の中に入って歩き出す。少しの間歩いてわかった。誰も話しかけてこない。この体あまり外交的な性格ではないのだろう。幸い今回ばかりはそっちの方が助かる。


二十分もしないうちに学校ついた。なんだか久しぶりすぎる学校を前に小一時間くらいは傷心に浸れそうだ。

はっ、同学年の子がいなくなる前にこの体が行くべきクラスと席を聞かないと。そう思い隣りにいた男の子に話し掛ける。


「……あの、私のクラスと席って知ってる?」

「は?お前何言ってんだ?俺と同じクラスだろうが、殴られすぎて頭おかしくなったのか?」


?殴られすぎて?この体はいつも殴られているのだろうか。それだとかなり面倒くさい学校生活になりそうだが。まあなんとかなるか。そのまま男の子について行き席に着くまではいけた。


……やることがなくて暇すぎる。小学生って休み時間何をしているのだろう。男の子は校庭でスポーツだろうか。じゃあ女の子は?少なくとも一人ボッチでいるわけではないことは分かる。女の子全員が独りぼっちなら流石に小学校時代の記憶が残っているはずだ。


机の中を漁ってみるとゴミがかなりの量落ちてくる。いや、ゴミじゃない。紙をくしゃくしゃに丸めたものだ。広げると赤だったり黒だったりと色々な色で「消えろ」「じゃま」などと小学生らしい悪口が書かれている。この体はいじめられていたのだ。まあ今になってこんな言葉で傷つくわけないんだが。


授業が始まる前に先生に紙を提出してみたが、ゴミ箱に捨てられた。まあ教師なんてこんなもんか。実際いじめというのは教師は大抵気づけるらしい。ただ対処が面倒くさいから無視するのが多いらしい。良くないことではあるけど、大人も疲れているってことだ。


まあ正直悪口はどうでもいい。気にならないからな。面倒くさいのはこれだ。今度は群れをなしてたグループの一番うるさい奴にトイレへ連れてこられた。人数は相手が4人。この体では勝てない。不本意ではあるが大人しく女子小学生の洗礼を受けるとしよう。


数分後数多くの罵声と多少の暴力を耐え抜いた。この体の持ち主からすれば相当な苦だろう。可哀想に。


小学生である以上転校したいと思ってもあの母親に言えるわけがない。面倒事を増やしたくないだろうしな。だが小学生のメンタルには限界がある。死にてくても死ねない。


逃げ場のない尋問室のようなものだ。口にすることは許されず、ただ毎日を耐え抜く。何事もないように。四時間目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると騒々しくなる。


そうか、四時間目が終わると給食の時間だ。給食なんて存在を忘れるほどには時間が経過していたからな。給食係が配膳を終えるとせきに座ってみんなでいただきますをした。これもまた懐かしい。


給食を食べていると影ができる。直後ビチャッビチャ!とスープから音がなる。どうやらさっきの女子が上から消しゴムや鉛筆を入れたようだ。いじめにしてはやり過ぎではないだろうか。振り返るとニヤニヤと笑みを浮かべた女がいる。


「なに?睨まないでよ。あんたに借りた消しゴムと鉛筆を返しただけよ」


イラッと来た。流石に我慢ならない。気づいたらこの体は女に対して右腕を振り上げていた。それはもう全力で腕を振り下げた。だが容易に躱された上に足を引っ掛けられて転ぶ始末。


非常に惨めだ。ぶっ飛ばしたい相手を前に地面にひれ伏すんだ。ただ、ただ歯を食いしばることしかできなかった。


その後は後ろからものを投げられる程度で終わった。学校が終わり次第家に直行した。帰り道は覚えている。行きのときに道の特徴を見ながら歩いてから。服も汚れている。自尊心も削られた。惨めだ。泣きたくなったが、涙はでない。


この体になっていじめというのを初めて経験をした。こんなにも汚いものなのか。こんなにも無力感に追われるのか。もういい。


家に入ったら部屋に戻って眠りにつこうとしたが寝付けない。ただずっと壁を見つめ続けていた。無気力に、これは自分の体ではないのにこんなにも死にたくなるものなのか。


今日は疲れた。いつもの数十倍は疲れた。眠ろうに眠気が一切こない。どうにかしようと部屋を見渡すと、机に置かれたタブレットを見つける。教育用か、はたまたねだって買って貰ったものか。


タブレットには動画配信アプリも入っている。イヤホンつけて音楽を聴きながら目を瞑ると思ったよりも寝やすくなった。気づいた時にはもう朝だった。部屋はいつもの部屋。体も小学生女児じゃない。微かにだが頬に涙の乾いた跡があった。』



ーーー



あれ以降、不可思議な夢を見ることはなくなった。ただ、あの夢を見たことで新しい考えを見つけたような気がする。どんなに逃げたって、汚くたって、惨めでも、悲観的になってもいい。精一杯生きてみようと思えた。


自分の人生を、誰かが見る唄にしても恥ずかしくない様に。

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