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天史拾遺長歌集  作者: d_d本舗
22/112

天野商店のふたり


「最近な? 眼がヤベェんだわ………」


「は? 老眼ですか?」


“都会田舎”の高羽市において、新興と往古が際立って共存する東白砂地区。


古くからの小路(こみち)と、新たに敷かれた市道が交わる住宅地に、天野商店は小ぢんまりとした看板を掲げている。


「老眼の神さんなんぞ聞いたことねぇよ……。疲れ目……、眼精疲労だなこりゃ」


「眼精疲労の神さまも聞いたことないんだけど……。そんなにアレなら、某プラとか仕入れればいいんじゃないの? ちゃんとした既製品」


「や、そこは(こだわ)りっつーか」


扱う品は模型と駄菓子類であるが、この模型というのが店主みずから作り上げた精巧なミニチュアだ。


寺社建築に始まり、帆船に艦船、車や飛行機などを豊富に取り揃えている。


売れ行きはそこそことの事だが、やはり安価な駄菓子にこそ需要があるようで、そろそろ費用対効果を真剣に考えた方がいいというのは、他ならぬこの店の看板娘による(げん)である。


「こだわり……。拘りですか。 拘りでお腹が膨れると良いですね?」


「なんなのお前? プリン食ったことまだ怒ってんの?」


ゆえに、この商店のあり方としては、抜群のクオリティを誇る模型を鑑賞しながらお菓子を頬張れる場所。


もっぱら近所の子供たちによる(いこ)いの場として成り立っていた。


事実、私も小学校最後の一年は、休みの日になれば友達と足繁く通ったし、中学生時代はほぼ入り浸り。高校に上がった今でもなお、学校終わりに店を訪れるのが日課になっていた。


もちろん、この商店には看板娘(ともだち)がいる所以ゆえん)もあるが、類まれな居心地の良さが、私たちを引きつける要因のひとつかも知れない。


ともあれ、上辺だけでは(はか)れない気苦労があるのは、どの世界でも同じことだ。


「あれ? 空調の人とお話するの、今日だっけ?」


「おう、昼から」


「さすがに夏場にイカれたら(まず)いもんね、冷凍庫」


「だいたいヤワすぎんだよ。もうちっとこう……」


「いっそ雪女でも連れてきたら?」


単に商売の苦難とは少しばかり毛色の異なる課題が、人ならざる彼らにもたしかに在るようだった。


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