猫とアイスキャンディ
汗が頬を伝って床に落ちる。
ジリジリという音すらしそうなほどの暑さの中、手すりに腕を置いてぼぅっと空を眺めていた。
「もっと青かった気がするんだけどなぁ。」
そう独り言を漏らす。
「もう駄目だ!」
あんまりの暇に嫌気がさして、ベランダで空を眺めてみたは良いものの、体を覆うじっとりとした汗と無遠慮に輝く太陽に負けて部屋に戻ろうとする。
見知らぬ猫がいた。
「だれだい?君は?」
足下にいる猫に問いかけるも、当然返事はなく、猫はじぃっとこちらを見つめる。
「君はどこから来たのかな?」
しゃがんで問いかけても変わらずこちらを眺めているだけ。
「一応ここ4階だよ?」
立ち上がって隣の部屋の様子を伺ってみても、探してそうな気配はない。
太陽はそんな事お構いなしに光を浴びせ続ける。
「あっついな、ホントに。」
部屋の中に入って冷蔵庫からアイスを取り出しそれをパクつきながら、またベランダに向かう。
猫は気に入ったのかベランダで横座り、しっぽでぺしぺしと床をたたいていた。
「君も食べるか?」
アイスを少し手にとって差し出してみる。
猫は鼻を近づけてフンフンと匂いを嗅いだ後、鼻でアイスを手から落としてしまった。
猫は立ち上がると、少しも気にする素振りを見せずに部屋の中に入っていく。
「贅沢な奴。」
猫は言葉に一切耳を貸さず、我が物顔で部屋を闊歩するとソファの上に陣取った。
アイスを食べながら、それを眺めてぼやく。
「僕、猫アレルギーなんだけどな。」