雨
雨の気配がする。
湿った空気が漂っている。
雨といえば、私は雨音を聴くのが好きである。
ポツポツと降る雨は、断続的に落ちてくるものと大きく音をたてるものとがある。
断続的に落ちてくるものはどこか忙しなく、私の耳心地は大変よい。遠くで降っている錯覚を覚えるし、居眠り中の毛布のごとき温もりと優しさがある。
だが大きく音をたてる雨もある。重い腰を下ろすように物に打ち付け、水滴が四方八方わかれていく力強さ。離別を思わせる雨の涙。
私はこの音が好きだ。耳に深く落ちる音ゆえに、雨音が奥行きを作り出す。雨は遠くて近い。
はあ。雨音を聞いて寝付く生活をしてみたいものだ。
読書時間のお供に雨音を聞く。湿った紙にうんざりしたらゴロ寝して、雨が止んだときを待ちわびる。最高じゃないか。
残念ながら、雨がそんな慎ましやかで幸福な時間ではない。
当方、頭が緩やかに締め付けられ、軽い吐き気を覚えている。眠れそうもない。
いつだろう、雨の音が好きになったのは。
いつだろう、雨を察知するのが頭痛になったのは。
雨は好きも嫌いも抱かせる。憎たらしいやつ。