2:幼馴染はラブホへ、俺はバイトへ
古戦場走ってますが2人騎空団だと36000位維持するのが難しいですね~~~~
と言うわけで本日2話目です。
佳織に振られた翌日は、気力が起きずに俺は学校を休んだ。
そのままGW突入するまで何もする気力がなく一日布団で寝ている生活を送っていたが、夜になり空腹でリビングに行くと起きていた父さんに声をかけられた。
…気づけば4月も終わり日になっていた。
「九郎。―――どうだ、
気分転換に一つ、父さんの知り合いの喫茶店でバイトしてみないか?人手が足りなくて困っているんだ。まずはGWの間だけでもどうだろうか」
そんな父さんの気遣いと提案に、どうせやることもないし時間も余ってるし・・と2つ返事で頷いた。
バイトは5月1日からで、商店街の喫茶店―――夜はバーもやってるらしい―――「ナイチンゲール」は、駅近くの商店街にある、オシャレな喫茶店という事だ。
初日は昼前くらいからと言われているものの、遅刻しないように少し早めに家を出て向かった。
商店街の近くでよく知った姿があった。男と腕を組み、しなだれかかりながら歩く佳織と、マッシュルーム頭のヒョロ長い男。そんな2人の姿に、ズキリ、と胸が痛む。
―――互いに距離があり、佳織たちは俺に気づいていないようだ。
佳織の足取りは軽い。そして2人はそのまま、商店街のハズレにあるラブホテルへと真っすぐ入って行った。その際、周囲を見渡した佳織と目があった。
佳織は一瞬驚いた様子だったが、フッ、と馬鹿にするような顔をして男に抱き着きなおし、
足早にホテルへと姿を消した。昼間からみたくもない光景を見てしまい、気が滅入りそうになる。
だが落ち込んでいても仕方がない、と溜息をひとつついて、頭を切り替えてバイトに急いだ。
ナイチンゲールという名前から鳥か何かのイメージをしていたが、凄く“赤い”色のお店だった。
看板や外壁が赤くてすごく目立つ。
――――店の名前、ナイチンゲールの由来って…。
そんな事を思いながら店のドアを開くと、初老のダンディな男の人がいらっしゃい、と声をかけてくれた。キュッキユッといい音を立てながらグラスを磨いている、白髪を襟足で結んだ男前でいい声をしている男の人だ。
「こんにちは。アルバイトのお話をいただいた判官です。えっと、店主の雅東さんを訪ねるようにと伺っているのですが…」
恐らくこの人が雅東さんだろうと思いつつ声をかけると、予想通りに「ああ、私がマスターの雅東だよ」と頷く。
「君は判官九郎君だね?晴九…おっと、君のお父さんから聞いているよ。
はっはっは、いや、しかし君はお母さん似の美男子だな、父親に似てもっと厳つい子を想像していたよ」
雅東さんはそんな事を言いながら迎えてくれた。
アルバイトなんて初めてだけれど、フランクで話しやすそうな人で良かったと思う。
…とはいえお給金が発生する仕事なのだから、真面目に取り組まなくては。
制服―――白いシャツにスラックス、革靴というシンプルなものだが―――に着替えて、洗い物を頼まれたので昼になってからはひたすら洗い物をしていた。
なかなかどうしてお昼を回ると結構な人で賑わい、次から次へと洗い物も飛び込んでくるからだ。
どんどん入るオーダーを雅東さんがとってはテキパキと料理をしていく。
はた目から見ていてもその動きは無駄がなく、素直に凄いと思えるものだった。
「ほう、中々に手際が良いじゃないか」
雅東さんからはそんな声をかけられるが、かえって恐縮してしまう。
皿を洗う時はスポンジで内外を挟んで一回で綺麗にしたり、
元々家でも家事はしていたので洗い物ならやりなれているが、
流石にプロの動きをみると家の家事した程度の素人とは違うな、尊敬する。
「もう30分もすればお客さんの波もはける。落ち着いたら、まかない飯にしようか」
そういって優しく笑う雅東さん。…カリスマ感じるマスターだなぁ。
店内のお客さんがいなくなり、落ち着いたところでふぅ、と額の汗をぬぐう。
「ご苦労様。どうだね、初めての労働の感想は」
雅東さんがそう言いながら肩を叩いてきた。
「働くことって大変ですね。両親を改めて尊敬しました」
そう言うと、「はっはっは、そうだな。働くことは大変だ。
―――だが、労働の後の飯は美味いぞ」
そう言う片手にはオムライスがあった。
「うちの自慢の一品だ。ゆっくり味わって食べてくれ」
そう言って俺をカウンター席に促し、にっこりと笑う雅東さん。
促されるままに席に座りオムライスを食べ始めたが、滅茶苦茶美味しかった。
「お父さん、ご飯なんか作ってー」
そう言って、俺より少し年上位の女の人が入ってきた。金色の髪をロールアップにした、パンツスタイルの抜群のプロポーションをした美女。ツリ目がちで勝気な印象を受けるけれど、間違いなく10人が10人美人だというだろう。
「…仁奈。お前は手伝いもしないで全く…」
そんな美人さんにため息を零す雅東さん。
「えっと、娘さんですか?」
会話の流れからこの美人さんは雅東さんの娘さんということだろう。
俺がそう言うと、そこで俺の存在に気づいたのかふむふむ、と俺を視て何度か頷く美人さん。
「あ、君ね~?幼馴染を寝取られた傷心のアルバイト君って」
そういいながら俺の隣に腰かける美人さん。
「あ、私は雅東仁奈。そこにいるおっさんの娘だよー。大学がないときは店を手伝うこともあるからよろしくねー」
「どうも、俺は判官九郎です。一応、今日からGWの間アルバイトをさせてもらうことになってます。宜しくお願いします」
そんな俺の様子をなんだかじろじろと見る仁奈さん。
「…えっと、何か…?」
「え~、そこは『俺なんかしちゃいました…?』とか言いなよナローシュっぽく」
うぅん、何言ってるかわからないな…。
「いや、君顔の形とか目鼻立ちも整ってるし、垢ぬけてないところはあるけど彼女寝取られるようには見えないなーと思ってねー」
この人言葉がストレートというか、何と言うか…。なんて答えたらいいのかわからないぞ。
「仁奈。九郎君が困っている。お前は不躾に物を言いすぎだ」
みかねた雅東さんが声を賭けてくれるが、仁奈さんははーいと適当な返事。
「あー、九郎君オムライスじゃんいいなー!貰うねはむっ」
そう言って仁奈さんは、俺が手に持っていたスプーンの先をその上にとったオムライスごと口に含んだ。
「んー、やっぱりお父さんのオムライスって世界一ィィィィ!」
ドイツ軍人みたいなテンションで俺の手ごとスプーンを握り動かして、
パクパクとオムライスを食べ進む仁奈さん。
「パクパクですわー」
「おい、こら仁奈!」
雅東さんの制止する声などお構いなし。
「…あ、ごめんごめん。これ九郎君のだもんね。はいあーん!」
そうして俺の手からスプーンを奪い、オムライスを掬うとこちらの口に差し出してくる仁奈さん。距離が…距離感が近い!!
「えーと…間接キスってヤツになりませんか?」
一応気になったので言ってみる。
「細けぇことはいいんだよ!オラッ口開けろ!嫌なら直接チューするぞ」
と年頃の女性にあるまじき発言で迫る仁奈さん。
距離感の詰め方が早いなこの人…と思い観念して口を開けば、程よいテンポでオムライスが口に運ばれてくる。ちなみに、途中ちゃっかり自分も食べることは忘れない。
雅東さんはというと、「すまんな、九郎君…」と頭を抱えていた。
傷心も吹き飛ぶパワフルなお姉さんだなぁ、と思いながら
俺は仁奈さんになすがままにオムライスを食べさせられるのであった。
少し活動報告で振れましたが、拙作の過去作のセルフオマージュ的な部分があります。
こんな感じのルートもありだよな~と当時思いついた方向性を試してみたりしています。
SDGsっぽい感じですね(違う)