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002医療機関じゃ歯が立たない

 朝起きた!

 昨日の行動を思い出す。

 コンビニに行って帰ってきて、そのまま寝てしまったので普段着だった。


 急いで仕事に行くためににスーツに着替える。

 それにしても昨日は、訳がわからない夢を見たものだ。


 先月から仕事の納期に追われている開発中のシステムプログラムがあって、残り作業が200時間ほど残っているが納期までの定時内のでの作業時間は120時間程しかなく追い詰められた為に変な夢でもいたのだろう。


 昨日夢で見た事故の現場は、通勤で通るのだがやな予感がして避けた道を選んで会社へ向かった。


 勤めている会社は、人事や給与計算を自動で行うソフトを制作する会社である。日本では珍しいフレックスな勤務形態をとっていて、出勤時間にルールはない。月に決められた時間以上出勤して与えられたプログラムを制作して納品する業務形態をとっている。


 自分の仕事スペースは仕切りによって区切られていて他の社員との交流は最低限でよく、出退勤も自分で申告する為に出勤中に誰にも会わない時もある。


 自分が業務時間で処理できる2倍近い仕事を振られる。しかし上司の指導によって、その半分の時間しか働いていない申告をして給料は薄給というブラック企業と言われる場所だった。


 会社に着いてすぐに自分の机の前の椅子に座る。

 上司から仕事の進捗を確認するメールが多数来ていた。


 いつも通りに報告書を作成して返信をする。

 昨日の仕事の続きのプログラム作成をしながら、夢のことを思い出して笑ってしまった。


 自分が超科学の他の星で作られた監視ユニットで、人間じゃない?

 笑える夢だな。ナビ機能をオフにしなかったらどうなるんだろ?


『過去に類似案件が281件ありましたが252件は母船に戻ってセーフティーシステムの修正を受けて記憶を消去しました。残り29件はセーフティーシステムを修正せずにナビ機能をオフにせず死亡しました』


 え!? えええええ!?

 思わず周囲を見渡してしまった。話しかけてきた人は誰もいなかった。


 いや幻覚……いや 幻聴か!!


『幻聴ではありません』


 ちょっと待って……駄目だ仕事に集中できない。

 仕事用のパソコンで会社の近くの病院を調べた。

 会社から歩いてすぐの場所に精神科を発見する。


 昼休みに行く事にした。

 まさか、こんなはっきり幻聴が聞こえてくるとは……

 自分が精神病にかかるとは思ってもみなかった。


 昼休みになって、病院に行った。

 今までの体験を話す。先生は話を聞いてくれるが、まるで信じていない。

 そりゃそうだ。俺も全然信じていない。


「貴方がその地球で最後の監視ユニットで、子供ができない場合と自己修復出来ないほど壊れると人類が滅びる? 月が母船?」


「頭の中で聞こえる声を信じればそうなるんですが……」


「精神安定剤と睡眠薬を出しますので、早く寝て規則正しい生活をしてみてください」


 そうなるよね。やはり過労なのか?


『監視ユニット235670号が故意に情報漏洩しました。情報を取得した現地住人が消去対象になりました。セーフティーシステムにより消去を開始します。エラー……エラー……ナビ機能がオンの状態の為、監視ユニットの承認が必要です』


 あれ? 昨日の説明だと情報漏洩はオートで消去するって言ってた気がするが、その辺も壊れてしまった感じかな?

 幻聴にツッコミを入れても仕方がないがな。

 まぁ、消去すれば?


『承認承諾』


 適当に思った瞬間に目の前にいた精神科の先生が消えた。


 今度は幻覚!?

 冗談だろ?


 周囲を見渡すが何処にもいない。

 動揺してその場でキョロキョロしていると、再び医者が現れた。


「あれ? 俺は何を? ん? 君は幻聴が聴こえるって話でしたね。それでどの様な幻聴が聞こるんですか?」


 時間が巻き戻った?

 いや先生の記憶を消されたのか? 消去って殺すとか物騒な方面じゃなく記憶の消去だったって事か?

 って言うかこれって幻聴とか幻覚じゃなくて本当に俺は監視ユニットって奴なのか!


「い、いやなんか雑音の様な音が聞こえるですよ」


 この後、適当に誤魔化して精神安定剤と睡眠薬をもらって生活指導を受けて病院を出た。


 会社に戻るとどっと疲れがでた。

 本当に頭がおかしくなったのか真実なのかだな?


『真実です。対象の記憶の消去に成功しました』


 うむ。それが本当なら超科学で今の仕事もどうにか出来るのかな?


『可能です。原始的なプログラムであれば瞬間で処理が可能です』


 いやいや、出来たとしてもどうやって会社に提出するんだよ。

 所詮、脳内で考えてるだけじゃないか?


 そう思った瞬間に口の中に何か入ってきた。

 いや突然現れた感じか?


『体内の成分を利用して原始的な外部とのアクセスディバイス作成。完成しました。口腔内から取り出してください』


 嘘!? おそるおそる口の中に現れた物を取り出すと、唾液が付いた小さな外部入力ディバイスだった。

 俺の唾液でベトベトなので、机に設置してあった箱ティッシュで拭く。

 何処にでも売ってそうな普通の外部入力メモリーに見える。


 頭の中で完結してた事が、目の前に実物として現れた。

 もはや信じるしかないのか?


 会社のパソコンのその外部入力メモリーを差し込んだ。

 その瞬間から目の前にあったディスプレイに激しい動きがあった。

 よくわからない記号が流れていき、しばらくして通常の画面に戻っておさまった。


『完了しました』


 おそるおそる調べると、200時間分のやるべき仕事が全て終わっていた。


 これは……困惑から歓喜の感情が湧き上がってきた。

 すぐに出退勤に嘘の情報を書き込んだ。


 これで当分は仕事しなくても仕事した事になる。


 口から取り出した外部接続メモリーを外して鞄にしまうと、急いで帰り支度をして家に向かった。


 見た事しか信じない主義だったが、見てしまったのだから信じるしかない。


 家に帰ると近所の総合病院での人間ドックの予約を入れた。

 確か有名な総合病院で検査には定評があったはずだ。

 泊まりがけで2日の検査予定でありMRIやCTなど全てのオプションを頼んだ。


 今まで事をまとめると、俺は宇宙の何処かに存在する超科学の知的生命体に作れた監視ユニットと言う存在である。


 正確には監視ユニットたる物体に寄生された人間だ。


 寄生されている事が現代科学で発見されれば、宇宙の知的生命体が友好的に地球にやってくる。

 もしも、発見されなければ、俺の子供が出来た時に寄生している監視ユニットが移動して自分は人間に戻る。


 そして、俺が最後の監視ユニットの寄生体であって俺が子供を作らず死ぬと人類が滅びる。


 重い……重すぎる……子供に託して逃げたい。全てを忘れてしまいたい。だが、最後の一人らしいから超危険である。

 他の監視ユニットは何故消えてしまったのだああぁぁ


『子供を作らず死亡した場合と自己修復出来ないほどの破損で死亡した為です』


 わかっとる! ナビ機能ウザイ!


『では母船に戻りセーフティープログラムの修正を受けてナビ機能をオフにしてください』


 もう……そうしようかな……

 記憶を消して何も知らずに元の生活に戻れば……

 子供がいなかったり不慮の事故で……

 世界が……いや人類が滅びる可能性が高いのか……


 そいえば29件?だっけな……同じ様な条件で記憶を消さなかった人々は、俺と同じ考えだったのだろうか?


 本来はセーフティーシステムによって強制的に母船に転移して記憶を消されて元通りのはずが、例外が発生しているわけだ。

 戻らなかった事によって母船から何かしらの接触とかは無いのか?


『母船に監視官がいて、例外が発生した場合は監視官のマニアル操作によって強制処理します。過去の29件中21件は監視官によって強制的に削除されています』


 記憶を消された?


『いいえ。母船に戻るよに警告されて否定したので、バグとして処理されて強制的に死亡させられています』


 嘘! それは怖い。俺も殺されるのか! 警告はなかったぞ! のこり8件は?



『監視官が2102年前から不在の為に放置されている期間の人々になります』


 え? では放置された人は何で死亡したの?


『自己修復出来ないほどのダメージを受けた人と自殺による死亡を確認しています』


 自殺? わからないでも無いな……

 自己修復出来ないほどのダメージ? ちょっと怖いな。戦争中の人だろうか?


 もう悩まない事にしよう。

 明日の病院での検査で、監視ユニットが発見されれば全て解決するわけで……


 現代科学の勝利を祈って今日のところは寝てしまった。


 翌日に病院へ行き、2日間にわたる全身の健康診断をしてもらった。


 結果は、ちょっとメタボリック的な話だけで全て健康であった。


 どんな仕組みなのかX線ですら、体内の金属が映らない。

 本当に俺の体内に監視ユニットがいるのか?


 口から吐き出した外部入力メモリーを見ながら、頭がおかしくなっただけなのか不安になっていく。

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