4.期待。
戦闘開始ぃ!!
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冒険者の対決――すなわち、決闘というものは案外、街の風物詩らしい。
その証拠に、王都で一番の広場には決闘専用の舞台が用意され、それを取り囲むようにして観衆ができていた。正直なところ、こうなるとは思っていなかったわけで……。
「あわわ、わわわわわ……!?」
ボクは軽くパニックに陥っていた。
なお、隣では――。
「おぉ~! この景色、懐かしいな!!」
相棒であるリュードが、のんきにそう言っている。
どうにも話を聞く限り彼は、生前はなかなかの暴れ者だったらしい。決闘は日常茶飯事で、それ以外にも非公式の喧嘩で常勝無敗を誇ったとか。
そりゃ、強いよな――とか、今さらながらに思ったり。
そうこうしているうちに、決闘の時間が迫ってきた。
舞台に上がる階段の前にやってくると、そこにはすでに相手がいる。
その人――世界最強の魔法使い、レクイエ・ウォータイムは、その綺麗な顔に優しい笑みを浮かべるのだった。
「今日は、よろしく頼むよ」
「は、ははっはい!」
「ふふふ」
声を上ずらせるボクに対して、彼女は余裕の笑み。
それを見て――。
「………………」
ボクは、思うのだった。
もしかしたら、この人が見ているのはボクではないのでは――と。
きっと誰か別の、もっと強い人。
だから、ボクみたいに震え上がっている相手には笑っていられるのだ。
「さぁ、そろそろ行こうか」
「…………はい」
それを確かめるより先に、レクイエさんは行ってしまう。
ボクはそんな彼女の背中を見て拳を握りしめた。
そして、ようやく恐怖心が――。
◆
――正直、期待外れだった。
レクイエは決闘の直前に震え上がったライルを見て、そう思う。
グルールに対して決死の戦いを挑んだ青年を認めた時には、もしやと感じたのだが、どうやら気のせいだったらしい。
彼はレクイエの求めているような相手ではなかった。
「…………」
舞台に上がると、昔を思い出す。
観衆の声に、対戦相手。そして立会人の宣言。
それらが雰囲気を高めて、やがて盛大に弾ける感覚を知っていた。肌を裂くような緊張に、耳をつんざく悲鳴や歓声。
自分の追い求め続けるモノ。
しかし、今回もまたそれには程遠かった。
「では、始め――!」
レクイエにとって、かつて宴に等しかった戦いの火蓋が切って落とされる。
だが、今日はもうすぐに終わらせよう。そう思った。
だから――。
「サヨナラ――ライルくん」
一定距離の位置に棒立ちしている相手に、そう小さく伝えた。
先制攻撃――確かな火力を持った魔法を撃ち込む。
すると轟音鳴り響き、煙が上がった。
それで、終わり。
なんとも呆気ない終わり。
「…………はぁ」
レクイエはため息をついて、目を伏せた。
詰まらない。心底、詰まらなかった。
そう、思った瞬間だ――。
「どうしたんですか? ――レクイエさん」
「…………なに?」
はっきりと、彼の声が聞こえたのは。
少しの驚きを持って前を見ると、そこには――。
「へぇ……!」
無傷のライルが、立っていた。
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