2.知的好奇心。
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この世界には七賢人と呼ばれる、各分野のエキスパートがいる。
ウォータイムはその中でも魔法に特化し、最強の名を欲しいままにしている存在だった。噂では各地を旅しているとのことだったが、まさか彼女がそうだったとは。
翌日、ボクはダンジョンに潜る最中にも悶々としていた。
そんなこちらを見て、リュードが首を傾げる。
「なんだ? そんなにスゲェ奴なのか、レクイエ」
「凄いなんてものじゃないよ。だって世界最強の魔法使いだよ……?」
ゴレムなどの中階層の魔物を倒しながら、ボクはそう答えた。
「でもよ。そいつが、相棒のことを強いって、認めたんだろ?」
「そうだけど。必ずしも勝てるわけじゃないよ」
「そんなもの、なのか?」
「そんなものだよ」
するとリュードは、ふーん、と言いながらまた一体ゴレムを屠る。
というところで。ボクはふと疑問に思った。
「あれ、そう言えば――リュードは七賢人を知らないの?」
どうして彼は、七賢人の存在を知らないのか、と。
彼らの存在は今や、世界中の話題だ。こちらの疑問に、リュードは言う。
「知らねぇな。どうにも、生前の記憶はまだ曖昧なんだ」――と。
生前の記憶が曖昧というのは、魂の【置換】による影響か。
とにもかくにも、彼は七賢人の強さを知らない、ということだった。一国の軍隊を相手にしてたった一人で圧倒した者や、大災害を解決した者。
そういった人間たちの集まりであるということを……。
「大丈夫だって、相棒。オレの見立てでは、対等だぜ?」
「と、言いますと?」
剣を肩に担ぎながら言うリュード。
ボクが首を傾げると、彼は笑いながらこう言った。
「あくまで勘だけどよ、相棒には――」
どこか、こちらの手の内を見透かすように。
「まだ試してないこと、たくさんあるんだろ?」――と。
その言葉に、ボクは息を呑んだ。
たしかに彼の言う通り、ボクの理論では対抗手段がある。
それでもまだ、理論は理論に過ぎない。仮説なのだ。だから――。
「試してみたいけど、それは相手の強さ次第だよ」
そう、言葉を濁した。
するとちょうど良いタイミングで、リュードが言う。
「相手の強さなら、ここで分かるみたいだぜ?」
「え……」
岩陰から、奥を覗き込みながら。
同じようにすると、その先にはレクイエさんの姿があった。そして――。
「げ、グルールが三体!?」
いま、まさにあの悪魔を相手にしようとしている。
彼女は杖を構えて、静かに魔力を高めた。
すると――。
「あ……」
ボクがそう息を漏らすと同時だ。
グルール三体に向かって、物凄い速度の火炎弾が放たれて……。
「そこで見ているだけかい?」
こちらを振り返るレクイエさん。
彼女の背後で、グルール三体はいとも容易く絶命した。
「…………」
ボクはそれに、思わず苦笑い。
無意識に頬を掻いた。
「あの、レクイエさん?」
「どうしたんだい。ライルくん」
「どうして――」
そして、姿を晒しながら訊ねる。
彼女の微笑みを見つめながら、素直に感じた疑問を。
「どうして、本気を出さなかったんですか?」――と。
彼女の魔法は、やはりすごかった。
しかし、どういうわけか理解できてしまう。
レクイエさんはまだ、本気を出してはいない、ということを。それを指摘すると、彼女は面白そうに目を細めてこう言うのだった。
「なるほど、キミにはそう見えるのか」
そして、改めて手を差し出しながらこう告げる。
「ますます気に入ったよ、ライルくん。ぜひ、手合わせ願いたい」
ボクはその言葉に、理論を検証したい欲と身の丈を天秤にかけて……。
「……分かりました。やりましょう!」
知的好奇心に敵わず、そう答えるのだった。
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