1.七賢人の一人――ウォータイム。
ここから第1章。
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「うぅぅぅ…………!」
「ね、ねぇ? リュード、無理しなくていいよ?」
「無理なんかしてねぇ! 相棒の冒険者デビューの宴だ! オレだけ工房に引きこもるなんて、できるわけないだろう!?」
「そ、そうなんだ」
ギルド併設の酒場にて。
ボクとリュードは、改めてパーティー結成のお祝いをしていた。
しかし、忘れかけているが彼は鎧に定着した魂。中身はスカスカで、食事を摂ることなんてできなかった。それでも生前の記憶のためか、目の前の料理に未練がある様子。
だから工房に帰っても良いと言ったのだけど。
いまのように意地を張って、テーブルから離れようとしない。
「――大丈夫だ、相棒。空腹はねぇから」
「そ、そう……」
――た、食べづらい……!
飢えた獣のような声を発しているリュードに、思わず苦笑いが出てしまう。
そうしていると、こう声をかけられた。
「もし、そこの二人。ご一緒していいかな?」
「…………?」
不意打ちを喰らって、声のした方を見る。
するとそこに立っていたのは一人の、あまりに綺麗な女性だった。
長く色素の薄い髪をしており、前髪は片目を隠している。瞳の色は世にも珍しい紫で、その整った顔立ちもあってか吸い込まれるような印象を受けた。
身に着けているものから見て、魔法使いなのだろうか、と推測。
しかし気になるのは、どこか古めかしい衣装であることだ。
「なんだ、お前さん?」
「申し遅れたね。私の名前はレクイエ、旅人だよ」
「レクイエさん、ですか」
そう言って彼女は、小さく首を傾げて微笑む。
「それで、隣――いいかな?」
「あ、どうぞ!」
断る理由もないのでボクは、空いている席に座るよう促した。
すると美しい所作で、レクイエさんは着席。店員に飲み物を注文してから、ボクたちを見てこう言うのだった。
「早速で悪いのだけれど、先ほどの戦い、見せてもらったよ?」
「え、それってグルールとの……」
「そう。素晴らしい戦いだった」
ボクが首を傾げると、レクイエさんは小さく笑う。
そして、こう続けるのだった。
「まさか、空間転移という離れ業を見ることになるとはね?」
「あー、アレですか」
どうやら褒められているらしい。
思わぬことに、ボクは頬が熱くなるのを感じた。
しかし、そんなこちらの様子に気付いていないのか、彼女はさらに――。
「アレは、世界を渡り歩いている私でも見たことがなかった。いったい、どんな絡繰りだったんだい?」
「え、えぇ……!?」
ずずい、っと。
その綺麗な顔を近づけて、そう訊いてきた。
息がかかりそうな距離まで迫られて、ボクは思わず情けない声を上げる。
すると、そんなボクを見かねてリュードがこう言うのだった。
「おっと。うちの相棒を誘惑するのは、そこまでにしてくれよ?」
「あぁ、済まない。世界有数の才能に出会った興奮が、抑えきれなかった」
レクイエさんは少し驚いた様子でそう答える。
改めて距離を取り、こちらを見て真剣な声で――。
「ぜひ、手合わせ願いたいものだ」
「え……?」
そう、言うのだった。
レクイエさんはそこで、静かに目を閉じる。そして――。
「このレクイエ・ウォータイムなら、不足はないと思うが?」
そう、フルネームを口にするのだった。
ボクはそれを耳にして、全身の毛がよだつのを感じる。
「返事はまた、次の機会でもいい。楽しみにしているよ?」
「え、あの……!?」
そして、彼女は別の席に移動するのだった。
遅れて飲み物が運ばれてきて、リュードはそれに対応している。だが、ボクにとってはそれどころではなかった。
なぜなら――。
「ウォータイム、って……あの!?」
――ウォータイム。
それは、世界に存在する七賢人の内の一人の名。
その中でも最強の魔法使いと名高い、その人物のものだったのだから。
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