4.一方、その頃。
応援いただけますと幸いです。
少しでも面白い、そう思っていただけましたら――あらすじをお読みください<(_ _)>
追記:あらすじじゃねぇよ! あとがきだよ!!(セルフツッコミ
「これは、どういうことだ……?」
「も、申し訳ございません。国王陛下……」
「学長である貴様が、まさか目先の成果に気を取られるとはな」
錬金術師の長――デオンは、国王であるガイアスに頭を垂れていた。
彼らの間には、一つの鉄くずが転がっている。それは先日、学会の錬金術師数名が提出した『金塊』であったものだった。
見れば分かるのだが、金になっているのは表面だけ。
中身は鉄くず。要するに――。
「これは、おそらく鉄と少量の金――それらを合成し作り出した『メッキ』ではないか。なにが大偉業を成し遂げた、だ」
ガイアスの指摘通り、それはまさしく『メッキ』に違いなかった。
デオンは何も言い返せずに唇を噛む。他の錬金術師が浮足立つのに乗せられ、しっかりと確認しなかったのだ。それを国王に暴かれ、苦悶する。
『価値』という、あまりに曖昧な概念を乗り越えること。
そして鉄という低価値なものから、金という高価値なものを生み出すということ。それらは錬金術師にとっての悲願であった。
しかし悲願を追いすぎるがあまり、デオンは見誤ったのである。
「この責任は、重いぞ?」
「申し訳、ございません……!」
怒りを滲ませるガイアスに、狼狽えるデオン。
その様子を見て、隣に控えていた男性がこう口を開いた。
「国王陛下。猶予を与えてはいかがでしょう?」
「ふむ……」
その男は、国王の右腕と呼ばれる宰相――フレイグス。
眼鏡の位置を直しながら、彼はデオンに侮蔑の視線を送りつつ言った。
「鉄を金に変える――それに相当する成果を、期限内に提出させるのです。それができなければ、国から錬金術学会への支援を打ち切るのがよろしいかと」
「なるほど、な」
「そ、そんな……!?」
フレイグスの言葉に納得するガイアス。
しかし反対に、デオンは困惑の表情を浮かべることとなった。
「鉄を金に変える以上の偉業など、錬金術には――!」
「ええい、まだ御託を並べるか!」
「ひっ……!」
懇願するデオンを叱責する国王。
彼は立ち上がると、無様な男にこう吐き捨てた。
「ただでさえ錬金術は、時代遅れと言われて久しいのだぞ! それにここまでの猶予を与えてきたのだ。そのことが分からないほど、錬金術師どもは愚かなのか!?」
「そ、それは……!?」
「ならばすぐに、成果を持ってくるがよい! ただし――」
身を翻し、その場を後にしながら。
「次に裏切りを働こうものなら、国外への追放処分とする!」――と。
◆
「ど、どうするんだ!?」
「鉄を金に変えることに並ぶ偉業など……!」
「我々は今後、どうやって生活をすれば……!?」
デオンが国王からの通達を持ち帰り、学会には激震が走った。
それもそのはず。自分たちの成果が認められ、これからは華やかな暮らしが待っていると、信じて疑わなかったのだから。
よもや、その成果が偽りであるとも考えずに。
「こうなっては、一から理論を立て直す時間はない……」
動揺する錬金術師たちに、デオンは苦しい言葉を投げかけた。
「基礎研究でも良い。その中から、応用できそうなものを探すぞ!」
だが、錬金術師たちの顔色はよくない。
むしろ青ざめた。何故かと問われれば――。
「デ、デオン学長……! 我々は、その――」
「どうしたと言うのだ……?」
「その……」
そうこの場にいる錬金術師は、みな一様に無様だったからだ。
「誰も、基礎研究をしておりません」
「なに……!?」
デオンの顔が強張る。
そして、冷や汗が静かに頬を伝うのだった。
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