2.初めてのダンジョン、そして窮地。
今日はここまで。
次回、ライルの戦闘回!
できれば、あとがきまで。
「おらああああああああああああああああああああっ!!」
リュードが大剣を振り下ろす。
するとそれを喰らったゴレムは、いとも容易く粉々になってしまった。
なんという腕力だろうか――というか、鎧だった。いまの彼には、そういった筋力的な問題は関係ないらしい。
「あっははは! 最高だなこの身体! 心臓もねぇから、息も上がらねぇ!」
「凄いね、リュード。もしかして、生前は一線級の冒険者だったの?」
「おうよ! あの時代、オレの名前を知らない奴はいなかったぜ!」
ボクがそう声をかけると、彼は自慢げに拳を握りしめた。
なるほど、それなら納得できる。
リュードの戦い方はとかく手慣れていた。
身のこなしであったり、剣の振るい方であったり。あまりこういった状況に不慣れなボクでも、彼の戦い方が素晴らしいのはよく分かった。
「ところで、ライル? さっきから何を集めてるんだ」
「ん、魔素の欠片だよ」
「あぁ、金か」
「いやいや、正確には違うけど……」
ボクはリュードの言葉に苦笑い。
たしかに冒険者であった彼にとって『魔素の欠片』は、換金アイテムといった感覚に近いのだろう。しかしながら、錬金術師のボクにとっては違った価値がある。
「魔素の欠片っていうのはね? 長年の蓄積によって生まれた『エネルギーの塊』みたいなものなんだ。錬金術や魔法の研究なんかでは、これを使って自分の力を補完したりするんだよ。例えばこうやって――」
ボクは欠片を一つ、手のひらに乗せてみせる。
そして、それを【置換】すると――。
「うお!?」
空中に浮かんだ欠片は、大きな炎となって燃え尽きた。
リュードは驚き、しばしポカンとした後に感心したようにこう言う。
「すっげぇな!? なんだ、今の!!」
「いやいや、大したことじゃないよ。いまくらいの炎だったら、大抵の魔法使いが使える。ボクがやったのは、あくまで欠片による補助を受けての【置換】に過ぎないから――」
要するに、油みたいな燃料を燃やしてるだけなのだけど……。
「いや、なんだか詳しくは分からねぇけどよ! その置換ってのは、もっと色々なことができるんじゃねぇのか!?」
「あー、うん。理論上は、ね?」
興奮気味に話す彼に、ボクは少し気圧されて頬を掻いた。
たしかにリュードの言う通り、魔素の欠片を使えば大抵の魔法は行使可能。つまりは『全属性の魔法を使用できる』のだ。
まだ、実践はしたことないけど。
場合によっては、ということも考えてはいた。
「他には何ができるんだ?」
「そうだなぁ、今考えているのは――」
楽しげにボクの話を聞くリュード。
彼に今考えている【置換】の運用方法を説明しようとした――その時だった。
「おい、ライル。ちょっと下がれ」
「え……?」
真剣な声で、リュードがそう言ってボクの前に立ったのは。
何事かと思ってボクも前を向いた。
そして気付くのだ。
「え、嘘だろ……?」
そこにいたある魔物の存在に。
漆黒の翼で宙を舞うそいつは人の形を模していた。しかしどこか不十分で欠損があり、見るだけで吐き気を催すような印象を受ける。
間違いない。
そいつは、ボクでも知っている危険すぎる魔物――。
「グルール……!」
神の座より崩れ落ちた悪魔。
それが、ボクたちの前を塞いでいた。
明日からは二話更新の予定です。
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