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1.魂の【置換】、新しいパートナー。

お読みいただき感謝です。

応援よろしくお願いいたします!!









 ――工房に閉じこもって、二ヶ月が経過した。

 ボクはひたすらに【置換】の理論を突き詰めて、なにかに応用できないかと考え続ける。そしてたどり着いたのは、目に見えないものに形を持たせることができるのではないか、ということだった。



「え、っと……?」



 で、その結果なのだけれど。

 ボクは薄暗い工房の中で、過去に鉄の塊で生成した鎧を前に首を傾げていた。どうしてボクが首を傾げているのか、というと……。



「キミの名前は、リュードで良いんだよね……?」

「さっきからそう言ってるだろ? つーか、お前さんは誰なんだよ」



 ――喋っていた。


 鎧がボクの目の前で、はっきりとした自我を持って喋っていた。

 リュードと名乗った鎧は、周囲をキョロキョロと見回す。そして金属の擦れ合う音を立てながら、腕を組んでこちらを見るのだった。



「えっと、ボクはライル。ライル・コーナー」

「そうか、ライル。オレはお前に、訊きたいことが山ほどあるんだが?」



 そして、彼はボクを見下ろしてこう言う。



「オレ、もう死んでるはずなんだが。どういうことだ?」――と。







 【置換】というのは、すでにあるものの形状を変化させる。

 ボクはそれをさらに一歩前に進めて、こう考えた。


 死者の魂を鎧に移し替える、そういったこともできるのでは――と。



「まさか、成功するとは……」



 で、研究の成果を確かめるためにやってみた。

 簡単に説明すると、魂の位置を置き換え。魂の素材は不明のため生成できないから、その辺をうろついている死者の霊魂を使用して。


 そして、成功したのだ。

 いまだかつて、誰も成し得なかった偉業。

 ボクはそれを今、この手で成し遂げてみせたのだった。



「何の気なしにこの周辺をふらついてたら、急に目の前が暗転したんだが。とりあえずオレは、ライルに二度目の生をもらったわけか」

「そう、なるのかな……?」



 だけど、素直に喜べないのは彼がいるから。

 死者の魂を勝手に呼び起こすのは、どこかタブーのような気もしていた。だが、そう考えているとリュードは大声で笑いながらボクの背中を叩く。



「なに辛気臭い顔してんだ。大丈夫、オレはライルに感謝してんだぜ?」

「へ……感謝?」

「あぁ、そうさ!」



 彼は明るい口調で、こう続けた。



「オレは冒険者やってたんだが、ふとした拍子に死んじまってな! もっと暴れたかったんだが、ずっと叶わなくて成仏できなかったんだ!」

「なるほど……?」

「だから、これも何かの縁だ! 一緒に暴れようぜ!!」



 リュードはそう言って、ボクの手を取る。



「冒険者――か」



 そこで、考えた。

 自分には向いていないと思って、いの一番に除外していた選択肢だけど。もしかしたら、フィールドワークのついでに良いのかもしれない。それに、ダンジョンでは素材も採れるし。何より、この二ヶ月の研究で至った仮説を実証するにはちょうどいい――と。



「うん、分かったよ。一緒に行こう!」

「よっしゃ! そうと決まれば、善は急げだな!」



 リュードはボクの答えにまた笑った。

 鎧姿で表情がないというのに、心底嬉しそうなのがよく分かる。引っ込み思案なボクとは正反対な性格だけど、自然と気分が明るくなる人柄だった。


 そんな彼がボクの新しいパートナー。


 もしかしたら、案外悪くないのかもしれない。

 そう思うのだった。



 



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