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6.魔法の【置換】、決着。

まだ、もちょっとだけ続くんじゃ。

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 ――一羽の鳥が、空に飛び立つ。


 レクイエは、一人の年老いた男性の寝台の横に立っていた。

 彼が眠りに就いてどれくらいの時間が経っただろう。かつて共に切磋琢磨した相手も、老いには勝てなかった。レクイエのように、捨虫の魔法を会得した者とは違う。時の流れは残酷で、容赦なく人の命を奪っていくのだ。


 それが例え、レクイエが唯一倒せなかった相手だとしても。



『どうして。目を、開けてくれ……!』



 彼女は喉を震わせ、そう言った。

 しかし、その男性は何も答えられない。



『頼む、キミがいないと。私は気が狂ってしまいそうなんだ……!』



 必死の懇願も、届くことはない。

 何故なら、この時にはもう彼は――。



『頼む。頼むから……!』



 レクイエの願いは届かない。

 ただ無情に、部屋の中に響くだけだった。









「きた……!」



 ――この戦いの中で、最大威力の魔法が迫る。


 レクイエさんの周囲には、尋常ではない量の魔力が渦巻いている。気を抜けば足が竦んでしまうような、そんな魔力の奔流だった。

 それでもボクは直進をやめない。

 ここで止まっては敗北は必須であり、勝利の目は万に一つもない。



「いくぞ、恐れるな……!!」



 そう自分を鼓舞して、魔素の欠片を大量に握りしめた。

 そして、次の瞬間だ――。





「さぁ、これで終わりだよ! ――ライルくん!!」

「ぐ、う……!?」





 魔法がボク目がけて、一直線に放たれたのは。

 真正面から、こちらもそれにぶつかる。一見して自殺行為とも取れるそれだ。

 だけどボクの計算に狂いがなければ、ほぼ間違いなく――!




「うお、おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」




 ――彼女の魔法を【置換】できる、はずだ!!



 腕を前に突き出し、魔法を受け止める。

 握りしめた魔素の欠片が眩い光を放って、その攻撃を吸収していく。理論は正しい、魔力から魔法への変換の『逆』――すなわち『魔法から魔力への変換』による『無効化』は可能だった。もっともレクイエさんの大魔法、ボク自身の身体にも多大なる負担が伴うけど……!




「ぐ、う、おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」




 歯を食いしばる。

 彼女の魔法はまだ途切れない。

 だが、確実にその威力は弱まって――。



「いま、だ……!」



 ボクは、最後の力を振り絞って。

 最後の疑似転移魔法を、展開した……!







「なに、が……?」



 レクイエは消失する魔法に、思わず目を疑った。

 そんな理屈はあり得ない。仮にあり得たとしても、自分の膨大な魔力をこの青年が受け止め切るだなんて、あり得ない。彼女はそう思った。

 だが、それが現に目の前で起きているのだ。


 だとすれば、それは空想や妄想ではなく――紛うことない現実。


 ここで少しでも力を抜けば、確実に殺られる。

 そう考えたレクイエは、出力の落ちた魔法、それの安定を図った。


 しかし、その瞬間だ。




「な、しまっ――!?」




 突如として、ライルの姿が掻き消える。

 そして背後に気配を感じた彼女は、とっさにそこから距離を取るが――。



「く――!?」



 さらに疑似空間転移が展開される。

 バランスを崩したレクイエ。そんな彼女の綺麗な顔に――。



「終わり、です……っ!」



 魔素の欠片を握りしめたライルの手が、突き付けられた。

 そこで、勝敗は決する。






 最強の魔法使い――レクイエ・ウォータイム。




「あぁ……」




 彼女は、静かに息をついて。





「私の、敗北だな」





 二百年振りに、それを認めるのだった。




 


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