50話 俺はダレンさんに判断を丸投げした。
なんで?
悲しそうな顔をどうしたら、直してくれるんだろう。
医療に興味があるんだっけ?
「これから先……、俺の透析も処置も全部お願いね。頼りにしてるよ」
「……うん、わかった。任せて」
それでも、曇った表情のゴブリン……。
何か変なこと言ったっけな。
「お兄ちゃん。……お兄ちゃんが元気になったら、私は一緒にいたらダメなの?」
ダメじゃないけど、一緒になんていたくないだろ?
「それは、ゴブリンが一緒にいたいなら居てくれればいいし……ゴブリンに任せるよ」
「一緒にいたいって、言ってくれないのね」
ん? 何だか面倒くさい反応だ。
一緒にいる気もないのに、そういうことを言う。
まるで、人間の女性みたい。
あえて、任せるって言ってるのに。
「……うん……一緒にいたいけど、任せるよ」
元の世界でも、こういうことがあった気がする。
そういえば、女の人って面倒くさいところがあるんだよな。
ゴブリンも性別が女だから、こういう面があるのか。
ゴブリンの表情は、いつの間にか明るくなっている。
「うん、任された。一緒にいたいのね……ウフフフ」
俺は一緒にいたいけど、ゴブリンは俺の治療が終わったら興味がなくなるんだろ?
きっと、病気が治っても、俺は相変わらず弱そうだ。
ゴブリンは強い人でなければ、一緒にいてもつまらないに決まってる。
でも、あともう少し……。
再生腎臓の技術で透析がなくなって、モンスターを一人で倒せるようになったら……。
みんなに迷惑かけないからさ。
……病人でいる間だけ、一緒にいてくれれば……俺には十分。
そんなことをやっていたら、ダレンさんが戻ってきた。
「あ、ダレンさん。お帰り」
「小林さん、シャワーってやっぱ最高ですね。病院の設備に大衆浴場もつけちゃいますか」
なんだか、ダレンさんは上機嫌だ。
確かに、大きなお風呂は入りたい気がする。
病院や老人保健施設とかでは、デイケアとして入浴介助サービスなどを提供している。
ここにあっても、あまり不自然な感じはないかもしれない。
「ポイント的にはどうなの? あまりに消費が多いと、後のことに支障が出るんじゃ……」
俺はポイントの残りがいくつか知らないけれど、消費が心配になった。
「10000ポイントくらい。今のゴブリンならすぐです……まだ、蛇が倒せてないからアレですけど」
ダレンさんは、大衆浴場を作りたそうだ。
10000ポイントって、安いの?
規模がわからないから、何とも言えない。
初めの感覚からすると、夢みたいに大量な消費ポイント。
ドラゴンを倒して大量に入ったポイントで感覚が麻痺してるとか?
でっかい蛇がまだ倒せてないから、そんなにたやすい話ではないかもしれない。
モンスターを倒せない限りは、医療行為だけで物品を消費してるし、ポイントは減るばかり。
でも……、ダレンさんに任せておけばいいや~。
できないわけじゃないけど計算とかメンドクサイ。
俺って、臨床工学技士の資格とったけど……頭の中が文系だし。
「いいよ。ダレンさん。任せる」
俺はダレンさんに判断を丸投げした。
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