49話 ゴブリンは何か悲しそうな顔をした
寝る時……。
寝る時?
そっか、どこで今日は寝ようかな……。
ここで寝ると、病人気分が増してテンション下がりそうだから2階で寝たい。
初めの部屋は住居だったけど、ここは完璧な病院だ。
ここにいると、入院中みたいなストレスがある。
狭いけれど、ここにいるよりはあの部屋に帰りたい。
休むなら、あの部屋だ。
狭くても、散らかっていてもあそこの方が落ち着く。
「お兄ちゃん。私って家族?」
ゴブリンが疑問を吐き出すように聞いてきた。
「家族みたいなものかなって……」
家族であってほしい、という願望。
「そっか」
「うん、今はゴブリンなしに俺は生きていけないから……」
「私がいないと……生きていけない?」
現実問題、モンスターを倒せるのはゴブリン頼り。
ベルさんもいるけど、昼間は攻撃できないから効率悪いし……人格が二つある。
蛇が苦手とか言ってたし……気持ち悪いものは苦手そう……。
設定が不安定すぎて、扱いづらそうだ。
俺が攻撃できるようなら、意味を成すけれど、ゴブリンがいなかったらモンスターは倒せない。
「自分じゃ、俺……何もできないからさ。嫌いでもいいから、せめて……腎臓が良くなるまで、出ていかないで欲しいな」
「家族って、そんなに簡単に出ていくものじゃないと思う」
「そう? 俺の元いた世界は、すぐにバラバラになって生きようとしてたよ」
そんなこと言っても、いつかゴブリンはきっと俺のことを捨てて出ていくのだろう。
ダレンさんだって、その内……次の仕事に行くのだろう。
ベルさんは病院のスタッフっぽいから病院に残るかな……。
ベルさんは未知な存在過ぎて、予想がつかない。
「家族って、私が知っている意味と違うんだね」
ゴブリンが寂しそうに言う。
「……多分……違くはないけど、そういう関係であろうとするのは難しいことだと思うよ」
元の世界では親だって離婚するし、子供だって出ていくし、介護だって放棄される。
そういったことが、普通に起こっていた。
同じ遺伝子で繋がっていても、全く考え方が違ったりする。
だから、いくら家族だとゴブリンのことを言ったからって、その言葉で縛りたくはないと思う。
今は一緒にいてくれないと困るけど、全部治療が終わったら、一緒にいてくれなくてもいいよ。
この病院だって、治療が終わったら俺は出ていくつもりだ。
治療がちゃんと終わるかどうかも、わからないけど……。
まあ、おんぶに抱っこの今の状況じゃ説得力ないな。
ゴブリンは俺が話している間中、俺の顔をじっと見つめている。
そんなに、大したことは言ってないんだけどね。
「俺も強くならないとな……」
頑張ってくれているゴブリンとダレンさんに申し訳ない。
これから、ベルさんにも頑張ってもらうけど……。
「お兄ちゃん……強くなりたいの?」
ゴブリンが当たり前のことを聞いてくる。
「当たり前。目標は冒険者で勇者で、ゴブリンやダレンさんがいなくても生きていける人」
「……」
ゴブリンは何か悲しそうな顔をした。
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