46話 テレパシーだろうか。
「あ……。二人とも、何やってるの?」
ベルさんの声だ。
ベルさん、また着替えたのか。
なんかヒラヒラした服装になってる。
一瞬、そう思ったけれど、考えるべきところはそこじゃないと、即座に思考を切り替えた。
……何か、やばい感じ……。
嫌な予感がする。
今の状況を誰かが見たら、何だと思う?
……誤解されてしまう確率1000%。
ベルさんは俺とダレンさんの姿を見て、固まっている。
冷たい空気が流れる。
「ベルさん! 違うんだ、これは……」
また、ドラマとかで聞く、浮気現場が見つかった時のセリフを言っている俺。
これは、転んだのを支えてもらっただけなのに。
俺がダレンさんに抱きついているからって、そういう関係じゃないよ。
俺はどうしたらいい?
頭が混乱する。
今度は違う意味で、胸がドキドキする。
ベルさんはこっちを疑うような視線で見ている。
そこに、ゴブリンが戻ってきた。
「上がったよ。ダレンさん、次ど……ど? ど? ど!」
ゴブリンがびっくりして、こっちを見てる。
「ち、違うんだ。信じて……」
何を言ったらいいのかわからない。
どうすれば、どうすれば……。
そうだ、とりあえずダレンさんから離れないと……。
ダレンさんの身体から腕を外し、自分で立った。
目眩は一瞬だったようで、今は特に問題はないようだ。
「大丈夫ですか?」
ダレンさんが優しく、気遣ってくれる。
うわ……そんな優しい言葉は、益々状況を悪くしてしまうよ。
「お……お……お兄ちゃん……」
ゴブリンがショックのあまり、動けないでいる。
疑惑の目というのではなく、ただショックを受けているみたいだ。
「小林さん! 貴方は……貴方って人は……」
まるで、俺が殺人を犯したかのような反応だ。
ベルさん、なんだか怖いよ。
ベルさんが怖くて、直に見ることができない。
同性愛って、そんなに引かれることだろうか。
大丈夫……。
俺はダレンさんの魅力で何かが覚醒しそうだったが、まだ覚醒していない。
「小林さんは、女より男のほうが好きなんですか?」
さっきの状況を見れば、男が恋愛対象なんじゃないかと思ってしまうのも当然だ。
抱き合っていたように、見えなくもない。
ベルさん?
質問に答えようとして、ベルさんの姿をやっと認識する。
ベルさんの格好を見て目が釘付けになった。
何? その格好は……。
肩ヒモのある白いカーテンレースみたいなスケスケな素材が、身体を覆っている……。
ヒラヒラしてると思ったけど、透けてるレース素材だったんだ。
身体の肌色がレース素材の向こう側に見える。
全体的に下着のような雰囲気のものだ。
レース素材の向こう側は……ぜ、全裸?
頭の中で何か、ピンク色のものが広がってきてしまう。
レース素材の向こう側では、エロティックなシルエット。
ベルさんの身体の凹凸が、俺の感覚の中の凹凸を刺激しているような感じがする。
……と思ったら。
あ……何か下着っぽいものはつけてる?
白いレースの素材と白い下着の色が重なり、肌と衣服の境目を曖昧にするから、何も着けてないように見えた。
でも……、今は質問に答えるところだった。
「女の人の方が……」
答えようとして、ベルさんの身体以外が目に入らなくなった。
胸のふくらみが魅力的。
身体のラインが魅惑的。
パンティのレース素材との一体感が刺激的。
総評して……なんて官能的な姿なんだろう。
ベルさんの顔は全く目に入らない。
それどころか、周りの人物も景色も目に入らない。
ベルさんの身体以外は世の中にないような視界だ。
「小林さん……女の人にも興味あるのね」
何も答えてないのに伝わった。
テレパシーだろうか。
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