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45話 何で、ドキドキ?

 そして、透析室には俺とダレンさん二人きり。


 二人ともベルさんが去った後を眺めてた。


 ベルさんがいなくなっても、眺めてた。


「ダレンさん、明日から……筋トレ……頑張るよ」


「どうしたんですか? 急に」


 ダレンさんが不思議そうに、俺の方を振り返る。


 何だか色々あったけれど、1日を振り返ってみると殆どがベッドの上だ。


 そして、今もベッドの上。


 今日、身体を動かせたのは、午前中だけ。


 ドラゴンから逃げる時だけだったと思う。


 あと、一生懸命ゴブリンのワンピースをめくろうとした時に頑張ったか。


 これじゃあ、いつまで経ってもガリガリのヘナヘナのままだ。


 高血糖状態が続いて、新陳代謝が負の状態に傾き、どんどん筋肉が減って行ったのは過去の話。


 今の自分は人工膵臓のお陰で血糖値は正常だし、透析だってたくさんできる。


 たくさん食べて、筋トレしたら……カッコイイ身体になれるかもしれない。


 あっちこっちが貧弱だけど、特に胸がないのが気掛かりだ。


 胸がなくて……、本当に寂しい。


 筋肉が欲しい。


 いつ触っても、自分の身体はホントに貧乳だ。


「いやさ、ベッドの上にずっといるだけじゃ……筋肉付かないなって思ってさ」


「だから、ずっと言ってるじゃないですか。明日から筋トレするって。ベッド上リハビリ」


 ダレンさんが言うと、内容が厳しそうに聞こえる。


 リハビリとか言っても、厳しくて命の危険があったりしない?


 一応、言ってる人が神様基準だし……。


「……ダレンさん。そんなに激しくしないでよ」


 心配この上ないので、ストレートに言ってみる。


「大丈夫ですよ。少しずつやりますから」


 ホントに大丈夫かな。


「な、何をどういうふうにやるの? 俺、人間だからね。神様基準にしないでよ」


「重力を掛けて、やってみましょう……といっても、死んじゃうから少しだけ……」


 筋トレって言ってたのに、重力を併用しようとしてる……なんだか、恐ろしそうだ。


「重力って、本当に効果あるの? ダレンさん。アニメじゃないんだよ」


「あのアニメの世界の重力修業は、当時は嘘っぽかったですが、今は研究されて効果があるって言われてますよ」


 本当かな……。


 神様だから嘘を言っても大丈夫だと思ってる?


 俺は某有名なアニメのように手からエネルギー波とか、空を飛んだりとか、大猿とかにはなれない。


「重力を掛けると神経の中のシナプス伝達効率が上がるらしいです」


「良く分かんない……」


 難しい。


「運動学習能力が上がるって、偉い先生が言ってるので……効果があると思うんですけど……」


 研究論文があるらしい。


 でも、何となくでやろうとしてる……。


 そもそも、魔法で変な基準の重力を掛けられたら困る。


「ダレンさん。変な発想禁止……」


 怖いから、重力は阻止。


「まだ、研究が途中ですからね……何となく、やってみたかったのになあ」


 研究対象だったらしい……良かった……止めておいて。


 何か効果あるかもしれないけど……。


「それにしても……ずっと、ベッドの上だからダルくなっちゃったよ」


 伸びをしてみる。


 気持ちいい。


 筋肉が楽になる感じがする。


 ちょっと、立ってみようかな。


 ベッドサイドに足を下ろしてから、足の裏を透析室の床につけて靴下のまま立つ。


 スライム素材の靴はベッドの下に入り込んでしまっているようだ。


「大丈夫ですか? ゆっくり立ったほうが良いですよ。起立性低血圧で倒れるかもしれないですから」


「大丈夫、大丈夫。前よりは、ステータス上がっているんだから……」


 ……と言っている途中で、一瞬クラッときた。


 後ろに倒れれば、ベッドがあるから大丈夫なのに……前に重心が……。


 あ、危ない。


 顔を前から打ち付ける……。


 ……と思って、目をつぶった。


 あれ。


 途中で身体が止まった。


 目を開けると、ダレンさんが受け止めてくれていた。


 いつの間に、こんな近くに……。


 俺はダレンさんの首元に抱きつくような形で支えられていた。


 がっしりとした身体。


 ダレンさんの身体の温かさを感じる。


 筋肉がついていて、男らしい手……。


 男の人独特の汗と脂の匂いがする。


 ダレンさんと、こんなに近づいたのは初めて……。


 羨ましい……目指すべき理想の筋肉だ。


 ちょっと、ドキドキ……。


 何で、ドキドキ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 元々は、ゴブリンちゃん編は、本編なんですね。 番外編にされたんですね。 未だ、読んでないものの、ゴブリンちゃん編の存在には気付いてました。 読んでなくても、確かに今、読むうえで、とくに不自由…
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