44話 勝手にベルさんは、身に覚えのない言葉を吐き捨てて走り去っていった
「あ~すっきり。シャワーあがりました。次の方どうぞ」
あ、ベルさんの声が聞こえた。
シャワーから上がったようだ。
でも、着ている服が違う。
人型に初めてなった時に来ていた服……どういうものだったか。
そうだ、白いウェットスーツのような服を着てた。
今はそれじゃない服を着ている。
ベルさんって、そんな服を持っているんだ。
バスローブ?
タオル生地の白いバスローブを着ている。
大きい胸。
若干はだけてるような、そうでもないような。
男性なので、多少目がいってしまう。
何でまた、そういう服装をするのだろう。
そして、どうしてそんなモノを持ってるのだろう。
ベルゼバブブがベルさんを創ったのだから、そういう生活用品が与えられていても不思議じゃない。
まだ、バスルームから出てきたばかりでそのまま来たのだろう。
身体からは湯気が上がっている。
頭にはタオルがターバンのように巻かれていて、表情はスッキリしている。
シャワーの割には入浴時間は長い方だろうか?
入浴時間の基準はわからないけど……。
まあ、女の人は入浴は長くて当然のような気がする。
もう、9時半を過ぎていた。
「ベルさん、上がったんですね」
ベルさんが近づいて来ると柑橘系をしたシャンプーの良い香りが強くなっていく。
自分達が前日に使ったものとは違ったものを持ち込んで使っているのかもしれない。
「はい、この姿になって初めてのシャワーです。とても気持ちよかったです」
知識はあってもシャワーには入ったことがないという状況は、不思議な感じがするのだろう。
ゴブリンの異世界知識と似ている。
やったことないのに知ってて、やればできてしまうという不自然さは本人はどう感じてるのか。
「ゴブリンも入ってきなよ、パジャマとか着替え持ってさ」
シャワー室は2階だから、忘れ物をすると1階の透析室まで戻って来なくてはいけない。
着替えのパジャマは返却ボックスに返ってきてるかも。
それか、ベッドの所にあるハンガーから生えてきてるかもしれない。
そもそも2階の生活スペースにドクロン装備を保管してあるから、何でもあるはずだ。
「うん、分かった。じゃあ、入ってくるね」
ゴブリンは透析室から出ていった。
あれ、ベルさんもゴブリンと同じ方向に、戻っていこうとしてる……。
「ベルさん? どこ行くの?」
「え? ここではやり難いので、2階の洗面台でスキンケアと、髪の毛を乾かしてこようかと……」
ああ、そうか。
シャワーから上がったことだけを伝えに来たのか。
女の人は髪の毛が長かったり、美容に気を遣ったり大変だ。
「ベルさんってさあ、色々自分のものを持ってるんだね」
「ええ、魔法ポケットを持っているので」
「何が入ってるの?」
「日常生活品です。シャンプー、リンスとか、化粧品とか下着……生理用品、避妊具まで……」
女性に必要なものが一通り、何から何まで備えられているとかとても便利そうな気がする。
戦闘には役に立たなさそうだけど……。
何か照れてる?
恥ずかしいこと聞いたかな?
「小林さん……、女性から下着や生理用品のことを言わせるなんて……」
ダレンさんが説明してくれた。
「え? 俺、そんなつもりじゃ……」
勝手に答えたんじゃないか。
「小林さんのエッチ……」
ベルさんは、身に覚えのない言葉を吐き捨てて走り去っていった。
話の流れだと洗面台の所へ行ったのだろう。
何が何だか分からないが、少しだけ腹が立った。
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