43話 ダレンさんの株が上がると、何故か腹が立つ……不思議だ。
「特に感染は起こしてないみたいですね、痛みとかあります?」
「うん、大丈夫。刺さってるから、違和感は多少あるけど」
カテーテルの先端をガーゼでくるんで、首に固定してくれた。
これで、透析前と同じ固定になった。
ダレンさん、上手いじゃん。
いつの間にか、さっきまでボーッとしていたゴブリンはダレンさんの後ろに立っていた。
返血の様子を見てたのかな。
「ゴブリン? 透析の仕事に興味があるの?」
聞いてみる。
「うん。お兄ちゃん……次からは私もできるよ」
ゴブリンは頭いいもんね。
すぐ覚えちゃうのかもしれない。
まあ、確かに返血やら消毒は難しくはないけど……やりたいの?
「ゴブリンは頭いいなあ、すぐ覚えちゃうね。そういうの興味あるの?」
「うん」
ゴブリンは興味対象が変わってるなあ。
普通に、異世界の文化では医療は理解しにくいと思う。
魔法があるんでしょ?
「何で?」
「私、お兄ちゃんのこと……す、好きなの。役に立ちたい」
少し赤い顔で恥ずかしそうな表情でゴブリンが言っている。
ああ、なるほど……知識欲とか、探究心とかそういうのが強くなってる時期なのかな。
役に立ちたい?
そんなに気を遣わなくてもいいのに。
十分役に立ってるから大丈夫。
でも、何かやりたいと思うのは尊重したほうがいいと思う。
「いいよ。ゴブリンは勉強熱心だね。次からお願い」
快く引き受けてあげよう。
こういうことが、ひょっとしたら信頼関係につながって……出て行かないかもしれない。
「小林さん、ゴブリンの気持ちに応えてあげるんですね。交際するんですか?」
ダレンさんが変な事を言っている。
いつ、そんな話をしたのだろう。
「え? 何でそんな話になるの?」
疑問だ。
「どう聞いたって、そういう話だと思いますが」
ダレンさんが首をかしげて、そう言っている。
ゴブリンは恥ずかしそうにモジモジしてる。
ダレンさんが勘違いしている。
「そう?」
医療的なことを覚えてやってみたい、という話でしょ。
そういうのに興味があって、やりたいというのを恥ずかしがっているんだと思うんだけど。
こんなマニアックで変わったことに興味があるなんて、きっと、恥ずかしいに違いない。
「ゴブリンも、苦労しますね……折角、伝えたのに。ワタクシも人のこと言えませんが……」
ダレンさんの不思議な発言。
時々、変なこと言うからなあ。
「でも、見ただけで大丈夫? やり方とか不安があったら、ダレンさんに初めは見て貰った方がいいよ」
別に、信用してない訳じゃないけど、全く誰も見てないというのは患者としては不安。
「お兄ちゃんが、そういうのなら……初めは見てもらおうかな……字も読めないし」
ああ、そうか。
この施設のものは、ベルゼバブブことバアルさんのドジで、文字が元の世界のものだったな。
それで、よく機械操作が覚えられるね。
血流とかの数字表記が読めていたのか、怪しい……。
血流200ml/minとかで血液を返されたら、心臓がドキドキしちゃうよ。
初めに働いていた病院でもやられてる患者を見たことあるけど、血圧も脈拍も一気に上昇しちゃう。
やっぱ、怖いか。
「……ダレンさんに、機械表示の文字とか教わってからにして貰おうかなあ」
考えたら、不安になってしまった。
「え……? 大丈夫。私、できるから平気」
ゴブリンが慌てて、できるって言い張る。
そんなにやってみたいの?
「ワタクシが後ろから指摘しながらやれば、大丈夫じゃないですか?」
……まあ、ダレンさんがそう言うなら。
「ん~……。じゃあ、そうして貰うかな」
ダレンさんが責任持つというなら、断る理由がないな。
「ダレンさん、ありがと」
ゴブリンがダレンさんにお礼を言ってる。
あれ、ダレンさんの株が上がった?
ダレンさんの株が上がると、何故か腹が立つ……。
不思議だ。
そこへ、透析室の入口の方から声がした。
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