40話 ドラゴンとスネークの合挽き肉ハンバーグ、スタミナソース掛け
ダレンさんがタブレットを読んで、今日の料理を教えてくれた。
「ワタクシのはフコダインたっぷりスライム海藻風サラダ……」
うん、知ってる。
前と一緒だからね。
「みなさんのハンバーグはドラゴンとスネークの合挽き肉ハンバーグ、スタミナソース掛け」
ドラゴンと蛇は似てるけど、混ぜていいものなんだろうか。
普通は豚と牛でしょ?
ドラゴンと蛇は肉が全然違うと思う。
蛇の肉は食べたことないけど。
味が心配。
スタミナソースは蛇の滋養強壮エキスとか入っているのかな?
折角、病人で草食系男子を全開にしているのに……元気になってしまったら不都合はないだろうか。
「スライムとスネークのスタミナスープ」
これのスタミナという意味が知りたい。
ニンニクの匂いはしないな。
スープは青色で、何かの肉がゴロゴロ入っている。
青色はスライムがベースのスープで、肉は蛇なんだろうなあ。
味が全く想像できない。
「ドラゴンと蛇のウロコのパリパリサラダ」
ウロコって食べられるの?
大きいウロコはドラゴンのウロコで、小さいウロコは蛇のウロコなんだろうけど。
周りの海藻はダレンさんのと似ている。
きっと、スライム由来の海藻風のものだ。
ウロコは油で揚げられているみたいで、見た目は黄色い。
茶色でないのは、何か普通とは違う油でも使っているのだろう。
「スライムトースト」
うん、これはお昼に食べた。
美味しいパン。
「スライムと蛇のスタミナソーダ」
うん。
蛇が入ると、名前にスタミナが付くことがわかった。
なるほどね、ジュースに蛇をきっと無理やり入れてる。
なんか、今回は色々不安になる料理の面々。
ハンバーグは500g位ありそう。
そんなに食べられるかな。
不安があっても、空腹で食べざるを得ない。
「いただきます」
俺は食べ始めた。
ゴブリンも、ダレンさんも、ベルさんも食事に挨拶をすると、食べ始める。
俺はまずは、サラダからだ。
血糖値の上がりを緩やかにしなくては。
人工膵臓を貼り付けているから、それほど心配することはないのかもしれないけど。
「……う、うまい」
なんなんだろう。
このサラダ、ウロコに味がついていてスライムの海藻と一緒に食べると丁度いい。
「お兄ちゃん、これ。食べると頭がスッキリするよ」
ゴブリンがハンバーグを食べて、俺に報告する。
なんか、俺が思っているのとは違う効能なのかもしれない。
俺もハンバーグを食べてみる。
口に運ぶまでは固形なのに、口の中に入れた途端に形が崩れる。
柔らかい。
そして、豊富な肉汁を含んでいる。
水分摂取量大丈夫かな。
透析中だから、その分を足してもらおう。
スタミナソースはケチャップとソースに何か香ばしいものを入れたような味。
食べたことのない味だ。
食べると、頭の中がすっきりしていく。
これは、疲労物質を分解させる働きがあるのかもしれない。
スライムと蛇のスタミナソーダも飲んでみる。
ふと、手足が軽くなった。
ハンバーグのスタミナとスライムソーダのスタミナは意味が違うようだ。
スライムトーストは不安になる名前のつく未知のスタミナスープに浸して食べる。
お……なんか、シチューみたいな味。
蛇の肉はスープの中に入っているけど、おまけ程度の存在だ。
普通に美味しい。
そして、このスタミナの意味は俺だからわかる感覚。
〈スタミナスープの効能でMPが5アップしました〉
そう、MP上昇。
以前にMPが少し上がった時に、似たような感覚があった。
なんて素晴らしい効能。
素晴らしい料理。
見た目の不気味さが嘘のようだ。
俺は夕飯のメニューを残らず平らげた。
ゴブリンもベルさんも、ダレンさんも全部平らげていた。
「ああ~、美味しかった。最高」
俺が感想を言うと、ゴブリンも続く。
「うん、美味しかった」
ベルさんも食べられたようだ。
「初めて食べたけど、美味しいわ」
みんな満足みたいだ。
血糖値も正常範囲だ。
さすが、人工膵臓。
あれ?
俺の分の食事に見慣れたものが。
これはリンの薬。
リン吸着薬だ。
「ダレンさん。なんかリンの薬が一緒についてきたんだけど」
「それは、小林さんの蛋白摂取量で足りない分のリンの薬です。いつも飲んでる量を足してください」
蛋白摂取量にリン吸着薬の量があっていなかったようだ。
世の中の透析患者さんは、蛋白摂取量が多いと褒められることなく、食べ過ぎだと言われる。
普通の内容の食事が摂れていてリンの検査値が高いのは薬が足りない。
「うん、わかった」
リンの吸着薬を飲む。
これで俺の食事は本当の意味で終わり。
「ごちそうさまでした」
ゴブリンも俺を見て、料理にお別れの挨拶をする。
「ごちそうさま」
ダレンさんも、ベルさんも手を合わせて挨拶を済ませた。
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