35話 詩集
勢いで、明日の夜に蛇退治に行くことに決めてしまったけど、ちょっと急だったかな。
蛇の変温動物としての特性。
そして、ベルさんの夜の帳という高火力な槍。
ゴブリンのそこそこのステータス……。
ゴブリンに対しては、蛇が強過ぎるからね。
これらが合わされば、蛇を倒せると思うんだけどなあ。
毒になっても俺がキュアで治療すれば、何とかなると思う。
若干、キュアは命懸けだけど。
それに、ダレンさんについてきてもらえば全滅は絶対ない。
だって、ダレンさんなら蛇は楽勝なのだから。
地上のモンスターを直接倒さなければ、神じゃなくなることもない。
サポートを一生懸命やってもらおう。
最悪、ダメでも……ダレンさんなら神様を捨ててでも助けてくれるに違いない。
そうそう、最後は神頼み。
これしかない。
ダレンさんは、もちろん来てくれるよね。
あれ? そういえば、いつの間にかダレンさんがいない。
と思ったんだけど……。
「ただいま」
ダレンさんが戻ってきた。
「おかえり、ダレンさん。どこ行ってたの? 行ってきますが、無かったよ」
「いや、ちょっとゴブリンが倒したモンスターを回収に行ってました。勿体ないなと思って」
「ああ、なるほど。蛇ね」
「スライムもいますよ。蛇のいくらかはスライムが食べちゃってましたけど、残ってたのだけ」
「へえ、スライムってあっちこっちにいるけど、何でも食べちゃってるんですね」
「どこでもいるって訳じゃないんですけど、まあ、雑食ですからね」
「ポイント的にはどうでした? ドラゴンに比べれば全然でしょうけど」
「蛇はスライムと同じ2ポイントですが、合わせて全部で500体いたので1000ポイントです」
「すごいなあ、そんなに倒したんだ。偉い……」
……と褒めようとしたら、隣のベッドで寝てる。
そうそう、疲れていたんだよな。
さっきまで瀕死だったのを、忘れてしまう。
ダレンさんはいつの間にか、カウンターの向こうの椅子に座って勉強してる。
よっぽど、勉強が好きらしい。
俺のことを、放っておいて勉強ばかりしている。
ダレンさんなんか、ハゲてしまえ。
ベルさんは?
なんか、本読んでる。
向かいのベッドに横すわりしてる。
「ベルさん? 何読んでるんですか?」
ベッドの上から動けないけれど、身体を起こしてるから声を掛けるのは楽だ。
「誰かの詩集みたいです。この人ちょっと感性が人と違うのかな……」
「へえ~、誰のだろう。ちょっと聞いてみたいな」
人の詩集なんて、普段なら興味ない。
興味はないけど、この状況で人が読んでいるとちょっと、興味がある。
ベルさんは本をペラペラとめくり、読み上げ始めた。
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