34話 私のジョブはナイトだけど騎士じゃありません
「まず、私は二重人格なので他の人格と入れ替わることがあります」
「そうだろうね」
知ってることだ。
「気分で、替わるのでご承知ください」
「気分? 夜と昼で入れ替わるんじゃないの?」
ナイトの横にカッコで夜と書いてあったから、昼夜でコロコロ変わるのかと思っていた。
「あ~、そう言う風に捉えたんですね。そんなめんどくさい設定だと、私が大変なので」
そっか、そういうことなのか。
確かに、昼と夜じゃ本人が大変だ。
なるほど、そっちのほうがわかりやすい。
納得。
「やっぱ、騎士だけあって強いな」
「騎士? 私は騎士じゃないですよ。夜です」
夜?
「意味がわからない……」
「バアル様がスペルを間違えてしまったらしくて、夜に強い攻撃ができるようになるジョブです」
ベルさんが一言で説明した。
ベルゼバブブが言ってた意味が分かった。
やっぱ、ちょっと間が抜けてるんだな……。
そして、英語が苦手なのかもしれないな。
俺も苦手だけど……。
たった一文字間違えただけで、性質が変わってしまうなんて……恐るべしK。
「ところで、ベルさんは今日はずっとその人格?」
「私じゃ、嫌ですか?」
ベルさんが潤んだ瞳で見つめる……。
「そういう訳じゃないけど、もう1人ってどんな人かなっと思って」
結構、もうひとりの人格に興味がある。
「男らしい人です」
男らしいって、身体は女性なのに?
「女性なのに男らしいの?」
「初期設定で男が好き、って答えたんじゃないですか?」
……身に覚えがあるけど、そこに反映されるの?
「……」
なんて答えるか、わからなくなった。
そんなの……。
男性を恋愛対象だと考えてるように、思われやしないだろうか……。
「小林さん、やっぱり男が好きだったんですか?」
ダレンさんが会話に割り込んでくる。
なんでそこに、食いついてくるんだろう。
ダレンさんこそ、男が好きなんじゃないのか。
「お兄ちゃん……本当?」
ゴブリンが心配そうに、聞いてくる。
そんな訳無いだろ?
俺は女性が好きだ。
「そういう好きじゃなくて、人間として好きだという意味で選んだんだよ」
「でも、初期設定の意味は男要素があったほうが、喜ぶ……と捉えたみたいです」
「……」
「あと、小林さんに対してだけ特性がつくらしいですよ」
どういう特性なんだろう?
もっと、考えて答えれば良かったなあ。
でも、心理テストとかは考えちゃダメだ、感じろ……って言わない?
「会うのが怖くなってきた」
「大丈夫です。多分……良い人です」
多分っていうのはどういうことだろう。
この人は、きっと適当に言っているに違いない。
もう……会わなくてもいいんじゃないだろうか。
「まあ、ただの興味だから。別に今のベルさんで十分だよ」
「私もずっと、小林さんと一緒にいたいです」
うん? なんか微妙に言ってることがおかしい。
「ありがと。それじゃあ、もし、蛇を倒しに行くときは一緒に行ってくれる?」
ベルさんが手伝ってくれるなら、何とかなるかな。
「え? 私……蛇は苦手なので」
「え? ダメ?」
まさかのお断り。
「明日はもう一人のベルさん来る?」
ベルさんがいたほうが俺の身は安全になるに違いない。
来られないなら、もう1人の人に頼んだほうが良さそうだ。
「さあ……、替わろうと思えば替われるとは思います」
替わるか替わらないかの意志はベルさんがコントロールしているらしい。
「あの……明日の夜なんて替わってもらって蛇退治に行きたいなあ……なんて」
「私じゃなくて、その人に?」
考えを察したようだ。
「……お願いします」
「わかりました、考えておきます」
人格交替するのは気が進まないのか。
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