30話 ゴブリンの敗戦報告
「お兄ちゃん? 何考えてるの?」
「え……。何も考えてないよ」
ゴブリンは俺の顔をじーと見つめて、声をかけてきた。
「そうそう、蛇はどんなだったの?」
「この建物を出ると、2メートルくらいの蛇がそこら辺にいるの」
「外出られないじゃん……」
2メートルの蛇なんて冗談じゃない……強さによるけど。
「強くないよ。スライムの方が強いくらい。そこら辺を這ってるだけだから」
大きいだけか、じゃあ、ゴブリンは何にやられたんだろう。
「俺にも蛇は倒せるかな」
「銅の剣が持てれば、普通に倒せそう。お兄ちゃんの世界にいるのと変わらないよ」
「病気が治ったら、ドクロン装備で行こうかな」
透析不足がなくなって、更にドクロン装備があれば今の俺でも倒せそうだ。
この時点で、スライム先輩は俺のライバルから外れた。
普通のザコ敵のゴブリンもきっと倒せる。
「それでね、私がヤられたのは10メートルくらいの蛇が3匹」
「怖……3匹も。大蛇じゃん」
「赤、青、黄色がいて私より動きが早いんだもん……逃げたんだけど、あっという間に追いつかれて……」
「命辛がら逃げてきたんだね」
腕とか足とか、ほんとに大きな傷があった。
よく生きて帰ってこられた。
「そう」
「なんか、信号機みたいなカラーリングだね。そんなお笑いの人が昔いたような……」
「ヘーイ、レッドスネーク……」
「ストップ、ストップ。それなんか、舞台でやってるみたいだから、引っ掛かるんじゃない?」
「……カモーンっての、もう知ってる人少ないのに?」
「結構いるって、60歳ちょっと超えたくらいの人は知ってるから」
「小林さん、二人だけでわかる話はやめてもらえますか?」
ダレンさんに怒られた。
ダレンさんもそう言えば居たんだった。
「う~ん、でもそんなのがいたら、外に出られないな。ポイントが手に入らないと手術室とか……」
「まだ、ポイントは残ってますが設備をつくるのには足りないでしょうね」
このままでは、再生腎臓まで行けないかもしれない……ピンチ。
「ダレンさんなら、倒せるんじゃない?」
「いや、あんまり派手に倒すと怒られるんですよ……神じゃなくなる可能性があります」
「ドラゴン倒してたじゃん。あれはいいの?」
「あのドラゴンは元々、はるか上空のお城にいたものなんです。それを倒したつもりが……倒しそこねてたのがいたみたいで……」
「……ダレンさん? なんか話がおかしくないですか。それじゃあ、ダレンさんが倒し損ねたみたい」
「いや、あの。あれは、バアルさんが倒したのですけど、ワタクシのためというか……」
「そっか。もともと地上のものじゃないから、寧ろ影響を抑えたってことなんですね」
「ま……そういったところです」
下界制限がなくなっても、そういうルールは残るのか。
めんどくさいルールだ。
ダレンさんがバーっとやっちゃえば、何も問題ないのに。
でも、大丈夫。
俺は若干、蛇の弱点に心当たりがある。
蛇は変温動物だ。
気温が下がってくれば動きが鈍くなって少しは弱くなるんじゃないだろうか。
「ダレンさん、俺は夜に外に出てないからわからないんだけどさ、夜って気温どのくらい下がる?」
「結構、下がると思いますよ。10度くらいは下がっていると思います」
温度差があれば、少なからず効果ありだと思う。
それか、逆に朝方とか蛇の体温が上がり切る前ならば弱体化していると思う。
それでも、ゴブリン1人では倒せないかな。
1匹ならまだしも、3匹か。
ステータスだけで評価しても、絶対勝てるとは言えない。
何か、考えないと。
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