28話 BELL-822
BELL-822は透析中で横になっている直ぐそばに、立ち尽くしている。
「お兄ちゃん、この人って何なのかな?」
ゴブリンが俺に疑問を投げかけてくる。
「小林さんが不整脈を起こすやいなや変身するみたいです」
ダレンさんも説明してくれるけど、カウンターショックのために変身するのだから当たり前だ。
「ダレンさんもわからないんだって、お兄ちゃんは何かわかる?」
「この人は除細動器だよ」
見たまんまを答える。
「そりゃ何から変身してたかは、見たから分かるけど……普通は変身しないんじゃないの?」
ゴブリンが鋭いとこを突いてきた。
「ここは、悪魔の館だから……多少のことは起こるって」
「毛玉のアニメの主題歌を歌ってる人?」
「悪魔の館に反応しすぎだよ……それは、つい最近の話だから昔の人は知らないかも」
うん、第23世界の話題はここでは、意味ないし。
「そうなんだ。知識が反応しちゃうの」
何で、こんなことが異世界知識に入っているんだろうか。
それはさておき、謎は深まるばかり。
けれど、この中で一番情報を持っているのは自分だと思う。
ベルゼバブブからの言葉。
自我ポイントというモノの存在。
「ずっと立ってるなあ。このまま、ずっとここにいるのかな。……まばたきはするのか」
俺は寂しいくらいなので、別に立ってて貰っても、一向に構わない。
「この前は小林さんが回復したら、直ぐに除細動器になっていたんですけどね」
ダレンさんは何だろう、という表情で観察している。
ダレンさんも、難しく色々考えているのだと思う。
今回は、ずっと立ち尽くしているので観察がじっくりできる。
銀色の髪をしているこの女の人は、無表情で冷たい感じはするが決して怖い感じはしない。
身長は意外と大きい。
多分、普通に大きいと思う。
男性のダレンさんが俺と同じ170cm前後で、近くにいるダレンさんより若干高い。
ということは、俺より高いのか。
白い服は白衣とかそういった、ふわふわした余裕のあるものではなくウェットスーツに近い。
ウェットスーツの生地をもうちょっと薄くした感じだろうか。
それが上着とズボンに分かれている。
ズボンと上着の切れ目が見える。
皮膚とかは普通だろうか。
ロボットとかだったら、皮膚が違うかも。
ちょっと、めくってみようかな。
手は届く。
裾を引っ張ってウェットスーツっぽい生地をそーっとめくってみる。
うん、普通のお腹だった。
人間の肌と同じ。
軽く触ってみると柔らかい感じがする。
今は、知能とか意識とか自我が2ポイント分でしか機能していないのだから、何も言われないはず。
この行動は変態カウント的にはノーカウントだ。
これは、一種の研究だから。
なんか、よく考えたら変な格好だな。
自分も盗賊姿でゴブリンもワンピースだから、自分達も変だけど。
もっと、変な気がする。
ダレンさんの方が変か。
神様ぶってるから。
ああ、ごめん、髪だった……違う違う……神だ。
[除細動器BELL-822はレベルがあがった]
[BELL-822は自我ポイントを97ポイント獲得した]
おお、またレベルが上がったようだ。
今は何レベルなんだろう。
レベル……5か。
数えてみた。
ウォーターの時、サンダーの時、ウィンドの時、そして、今。
自我ポイントとは何?
自我を得たのならば、もっと感情豊かにしゃべりそうだけど。
全く、表情が変わらない。
ステータス鑑定を試みる。
[設定されていません。管理者は自我ポイントを割り振ってください]
見られないようだ。
どうやったら、自我ポイントを割り振れるのか。
すると、さらに声が聞こえた。
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