25話 持続型血糖測定器
「小林さん、輸血して身体どうです?」
「え? さっきやったばっかりだから、そんなのすぐわからないですって」
さっき人工血液を輸血したから、貧血は改善していると思う。
けれど、もともとそんなに自覚症状がなかったので、聞かれてもわからない。
透析はまだ、続けている。
午前10時頃から始めて、今は午後5時。
透析はもう7時間くらいは経っただろう。
もう、透析不足とは言わせない。
「あのですね、ワタクシが思うに血糖コントロールが悪すぎると思うんです」
「ダレンさん、急にどうしたんですか?」
「血糖値が悪いと筋肉がつきにくくなるんです」
「そりゃそうですけど」
「小林さんの血糖測定値を見せてもらえますか?」
血糖値が気になっているらしい。
魔法バッグから血糖測定器を取り出し、記録されているデータを見てもらう。
「う~ん、やっぱりちょっと悪いと思います。空腹時血糖が140くらいですから」
「ダメですか?」
「そうですね、このくらいだとHba1cは7.0くらいだと思います」
「どのくらいにしたいのですか?」
「6.0台前半にしたいです」
え……なんか厳しそう。
「まだ、低血糖にはなったことはないですけど、低血糖で気持ち悪くなるんじゃないですか?」
低血糖は相当気分が悪くなると聞く。
できれば、なりたくない。
「まあ、食前血糖はを110前後くらいにできれば、身体は結構慣れてきますよ」
「もう、そこまでくると糖尿病の人の血糖っぽくはないですね」
「まだ若いし、筋肉をつけたいのできちんとやりたいのですよ」
それでも、俺のことを考えてくれているんだろうな。
「でも、ダレンさん。食前血糖と食後を測るにしても血糖の上がり下がりわからないと思います」
「そう来ると思ってました。今の点での管理では小林さんは強くなれません」
「点って言ったって、指に針刺してセンサーで測ってるのですから、しょうがないですよ」
「実は持続血糖測定器というものがあります」
「え?」
「センサーを二の腕につけて、24時間血糖値を見ることができます」
「そういうのあったんですね。なんで、病院で教えてくれなかったんですかね。最新とか?」
「いえ、結構、以前からありますよ。インターネットでも売ってるくらいです」
「じゃあ、どうして?」
「扱っているところと、扱っていないところがありますから。後は患者の好みです」
「へえ~」
「HbA1cが7.0くらいの人でも、うまくコントロールできれば6.0台に持っていけます」
そんなものがあったとは知らなかった。
ダレンさんがどこからか、二の腕に付けるセンサーと測定器を持ってきた。
「じゃあ、こっちの血糖測定器を使ってください」
血糖測定器を渡される。
手の平にちょこんと乗るような手頃な大きさのものだ。
ゲーム機の半分よりまだ小さい。
センサーは身体に付けるモノと針とバネが一体式のものを合体させる。
「ダレンさん、合体! できましたよ」
合体……なんだか、色々な意味で少し嬉しくなった。
「そしたら、センサーを強く肌に押し付けると中から針が出て腕に装着されます」
二の腕を酒精面で消毒してから、埋め込むセンサーを肌に当てる。
バチンッ。
針が一瞬出てセンサーが装着された。
痛かったような、痛くなかったような。
そんなでもない。
白くて丸いセンサーはボタンが腕についたような感じだった。
「さっき渡した測定器をセンサーに当てて、1時間後から使うことができます」
「なんだか、めんどくさいですね」
「みんな同じように使ってるんですから。我慢してください」
これは、異世界のものではない。
自分が元居た世界で使われているものだ。
何かあっても、そこまでケチをつけられないことに気付いた。
1時間待つ。
血糖測定器をセンサーにかざす。
センサーに血糖値が表示される。
血糖値120mg/dl。
「あまりに高い数字とかは、実際の数字とズレるらしいですよ。でも、140くらいなら大丈夫です」
うん、これは簡単。
これなら、血糖値を上手くコントロールできるかも知れない。
[小林直樹は持続血糖測定器を装着したことでキュアを獲得した]
また、何か覚えたようだ。
けれど、試すのは透析をしてない時にしよう。
二人に心配を掛けてしまう。
俺は今までのバカな行ないを、少し反省した。
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