24話 輸血から得たもの
「とりあえず……2単位入れておけば大丈夫ですね。280mlですか」
「除水からその分を引いておいてよ。後、食事分とか」
「食事で0.7kg増えてますけど……輸血入れたら1kgですよ」
「大丈夫。今日は1日中透析してるから。夕飯も透析しながら食べて、お風呂入るまで続けるから」
「随分、透析好きになりましたね」
「だって、5時間を超えたあたりから体がポカポカしてくるんだよ。なんだか気持ちいいよ」
「そういえば、長時間透析をしている方の中に、そういう風なことを書いている人がいました」
「そう? もう亡くなった人」
「ええ、もういませんね」
まあ、こんな事を言ってみたものの手に針を刺してやっていたら、また違うだろうな。
手に針を刺してやるためのシャント作ったほうがいいのかな……。
後で相談しよう、ダレンさんに。
前の世界なら誰にも相談する気にならなかった。
けれど、ダレンさんとゴブリンにはなんでも相談しようと思う。
「血液回路から投与しますね。膜を通したほうが安心でしょうから」
透析の膜がフィルターの働きになって、何か変なものが混入してても体に入るのを防いでくれる。
輸血用の回路を血液回路につないで、投与が始まった。
「小林さん、気持ち悪いとかあります?」
「大丈夫みたい。これって、最初の15分以内が1番なにか起こりやすいんだよね」
「そうです。体温も測りますね」
「まるで病院みたいだね」
「病院です」
ああ、そうか……ここ病院だった。
いつの間にか、ゴブリンが目を覚ましていて輸血のバッグを不思議そうに見ている。
「あ、起きたの?」
「何か、薬入れてるの?」
ゴブリンは薬だと思ったようだ。
「血液が足りないから、入れてるの」
「え? 鼻血のせい?」
「腎臓が悪いせいだよ。血液が上手くできないんだよ」
ゴブリンは俺が体調悪くなったことに対して、罪悪感があるのか。
「はい、小林さん。体温と血圧測ります。なにか気持ち悪いとか出てきました?」
「大丈夫……。どこでも一緒なんだね。後は5分後、15分後、終了時か」
輸血の時のバイタルサインは日本では全国共通らしい。
「そうです。そりゃ、決まっていることですから」
普通に何事もなく、輸血は滴下されて行く。
脱血側の回路のポートに輸血の回路は繋がれている。
早すぎないように、ゆっくり、ゆっくりと。
[小林直樹は輸血治療により、ヒールを獲得した]
何か、来た。
え?
輸血でも何か貰えるの?
患者でも強くなれるかも知れない。
ちょっと、通用するのか色々微妙だけど。
ヒールって、他の人にかけたら……俺、気絶?
今は、あんまり使えない魔法っぽい。
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