23話 人工血液を使ってみたい
食事が終わってから、横になって透析をしていたら眠くなってきた。
血圧も安定しているし、心電図も大丈夫。
ゴブリンも横のベッドで昼寝をしている。
ダレンさんはまた、何か読んでいる。
真面目キャラか。
ハゲキャラに戻って欲しい。
ダレンさんのハゲは見ていて、癒されたのに。
そんな普通っぽいのはダレンさんじゃない。
ダレンさんのフサフサとした頭を、恨めしそうにじっと見つめる。
「あの、小林さん」
ビクッ!
ビックリした。
急に話しかけないで欲しい。
ハゲ頭に戻って欲しいなんて、とてもじゃないけど言えない。
「な、何? ダレンさん」
「小林さん、そこそこ貧血なので輸血しません?」
「え? 俺、そんなに貧血なんですか?」
「まあ、そんなでもないのですけど、エリスロポエチン製剤を投与してないので」
エリスロポエチンは腎臓から出るホルモンで、赤血球を増やしなさい的なホルモンだ。
腎不全患者では腎臓の機能が失われていくので、エリスロポエチン不足による貧血になる。
これが腎性貧血だ。
腎臓が悪い限りはずっと貧血。
人生貧血……なんちゃって。
寒いね。ゴメン。
「入れればいいじゃん」
「そうですけど、折角入れてないから試してみようかなと思いまして」
「何を?」
「人工血液」
「人工血液? 何それ。この世界のもの?」
「実は第23異世界で2019年9月11日の新聞記事に載ってたんですよ」
「日本? それ、昨日だけど」
「ええ、ウサギという哺乳類で実験したら上手くいったらしいです」
「まだ、人間に使ってないんでしょ……なんか怖いな」
「大丈夫ですよ。この建物内でポイント消費で手に入るということは平気ということです」
「変な理屈。まあ、間違ってもいない気がする」
「今のヘモグロビン。小林さん9.8ですから、もうちょっと高くても大丈夫です」
「まあ、そうだね。腎性貧血でそんなに減ってたのか。よく倒れなかったな」
「ドクロンブランドの服で強化してるからだと思いますが……」
「……そっか。これ着てなかったら、ドラゴンから逃げようとしただけでやばかったかも」
「日常生活だけなら、着てなくても大丈夫だと思います」
「まあ、いいや。人工血液って血液型は?」
「血液型は関係なく使えるらしいです」
「すごいな。使えるようになったら、献血で集めている団体が要らなくなるんじゃない?」
それに感染症の恐れもなさそうだ。
肝炎とかエイズとか……。
世の中変わるもんだ。
向こうには俺は存在していないけどね。
「じゃあ、すぐ持ってきます」
読んだらブックマークと評価お願いします