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22話 ドラゴンステーキのスライムソースがけ

 ゴブリンが座っているベッドの前のサイドテーブルにも。


 ダレンさんが立っている傍のサイドテーブルにも。


 誰もいないベッドのサイドテーブルにも?


 俺のテーブルと、ゴブリンのテーブルの上にはなにかの肉に何かが掛かっている料理。


 ダレンさんの前には、海藻サラダみたいなもの。


 誰もいないベッドの上には哺乳瓶……。


「えっと、二人のはドラゴンステーキのスライムソース掛けです」


 ゴブリンの前にはステーキが10枚。


 俺の前にはステーキが5枚。


 微妙に色合いが違うみたい。


 栄養素が違うのかな。


 透析中に食べるものだから、カリウムが高いものになっているのだろうけど、もう大丈夫。


 なんて言ったって、透析中。


 リンもカリウムも、何もかも血液中の値が上がるやいなや、透析液の方へ移動していく。


「これ……ドラゴンの肉なんだ。美味しそう」


 ドラゴンの肉は美味しいと前の世界の本で読んだことがあるので、楽しみに思って言った。


 ゴブリンもお腹がすいていたんだろう、とても嬉しそうだ。


 俺と同じようにベッドの頭部をギャッチアップして、病人スタイル。


「ワタクシのがフコダインたっぷりスライム海藻風サラダ……」


 ダレンさんは自分の分のメニューを見下ろして呟くように読み上げた。


「ダレンさん髪の毛あるのに、なんでだろ……」


 ふさふさの髪の毛には要らないんじゃないかって、俺は思った。


「……で、なんだか不思議な瓶が、医療機器用ミルク……」


 ダレンさんも読み上げながら、意味がわからないというような表情。

 

「ミルク? 医療機器ってミルク飲むの?」


 ゴブリンが俺に聞く。


「さあ?」


 そんなの俺にだってわからない。


 その時、BELL-822が青白く光り輝く。


 青白い光は女性の形に縦に伸び、銀色の髪の女の人になった。


 銀色の髪の女の人は無言で歩きだす。


 トコトコとベッドのところに行きベッドに横すわりで哺乳瓶を手に取る。


 座ると直ぐに哺乳瓶からミルクを飲み始めた。


 俺も、ダレンさんも、ゴブリンも全員で凝視する。


 俺たちの前ですっかり、哺乳瓶の中身を飲み干すと俺のベッドの横に立ち尽くす……。


 再び青白い光が身体から発せられる。


 光が収まると、元の除細動器がそこにあった。


[BELL-822は魔力供給により自我が2ポイント上昇した]


「お兄ちゃん……あれ、何だと思う?」


「除細動器もミルクを飲んで育つことがあるんだよ」

 

 自我が育つのか。


 つまり、除細動器の自我は完成していないのか。

 

「そうなんだ……、知らなかった」 


「小林さん……嘘を教えないで……除細動器は育たないから」


「そうだ、インシュリンとリンの薬飲まないと食べられないな」


 めんどくさいから、話題を変える。


「ダレンさん、血糖値っていくつ? さっき血ガスとった時に測ったでしょ?」


「140です」


「じゃあ、いつも通りだ」


 お手拭きで手を拭く。


 いつもと同じで、超速攻型のインシュリンを4単位お腹に打つ。


 リンの薬を飲もうとした。


「そのリンの薬は食前に飲むのですか?」


「え?」

 

「たぶん、その吸着薬はランタンですよね。食直後に飲むものだと思います」


「ん~……ほんとだ。間違って飲んでた」


 大体、食直前に飲めばいいと思ってたのだけど、リンの薬は違うようだ。


 説明の紙をよく読んでいなかった。


 薬剤師さんの話もよく聞いてなかったようだ。


 面目ない。


「リンのコントロールが悪い患者は大体が薬を飲んでないか、使い方を間違ってます」


「ごめんなさい」


 医師に怒られている気分だ。


 リンの薬を横に置く。


 食べ終わったら、飲もう。


 透析中だから、今日は食べても、リンは上がらないだろうけど。


 よし、食べよ。


「じゃあ、いただきます」


 試しに一口食べてみる。


 それを見て、ゴブリンも食べ始める。


「いただきます」


 ダレンさんも食べ始める。


「ワタクシもいただきます」


 ドラゴンステーキというけれど、見た目は哺乳類のものと変わらないようだ。


 赤身の肉で柔らかい。


 適度に油もあって、絶妙な感じだ。


 筋がないので、高級な牛肉を食べているかのようだ。


 スライムのソースは見た目はやっぱり青みがかっているのに、にんにく醤油の味と香りがする。


 付け合せの野菜? これなんだろ。


「えっと……ダレンさん、この野菜って何?」


「龍のたてがみの溶岩通しです」


「溶岩って、溶けちゃわないの?」


「そんなの知りません、モシャモシャ」


 そっか、知ってたら怖いな。


 異世界料理研究家でも何でもないのに、知ってたらおかしい気がする。


 まあ、いっか。


 うん、とても美味しい。


 スライムステーキも美味しかったけれど、このステーキも美味しい。


 お昼からステーキなんて驚きだけど、とてもリッチな感じがする。


「お兄ちゃん、美味しいね」


「うん、美味しい。透析中でも美味しい」


 透析中は関係ないけど、美味しい。


 朝は食べられなかったけれど、全部食べ切れた。


 リンの薬も忘れずに飲んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界に来て2日目でも・・・ 何と!10万字超えなんですね・・・。 物語は1年の出来事を執筆には10年近くかけてる事もざらです・・・(笑)。 ステーキの大きさが不明なので何とも言えませんが…
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