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18話 バアルさんの趣味は幅広い

 ゴブリンは俺のことを……隣のベッドに座って見張っているようだ。


 ダメって言われると、何となくやりたくなるのが人間。

 

 気を失うの嫌だけど、気を失わないようにやれば大丈夫じゃないかな。


 小さい電気を想像して出せば、きっと大丈夫。


 ……大丈夫なはずだ。


 サンダーといえば雷。


 雷といえば、もう勇者一直線なんじゃないだろうか。


 かの有名なRPGでは、勇者は強力な雷の魔法を使うと相場が決まっている。


 不安がないと言ったら、嘘になる。


 けれど、このワクワクは止められない。


 この想いを誰が抑えることができようか、いや出来るはずがない。


 意識を失うかもしれないという恐怖を打ち破り、俺は勇者になる。


 ゴブリンと目があった。


 ニコッとほほ笑みかけられる。


 俺のことをまだ、疑っているようだ。


 何で、そんなに疑うんだろう。


 俺のことを信じられないのか?


 こういう時には、よそよそしくしないのが一番だ。


 微笑み返しをしておく。


 ……上手くごまかせただろうか。


 ゴブリンはジッと見つめている。


 やばい、まだ疑っているようだ。


 ゴブリンが居る方向とは逆の透析室の入口側方向に身体を向ける。


 これで、ゴブリンからは何をしているかわからないだろう。


 指を1本立てる。


 ちょっとだけ……ちょっとだけなら大丈夫。


 電気が小さく出るように集中する。


 パチパチッ。


 出た!


 俺って、雷魔法を使えるようになってしまった。


 感動。


 今度は気を失わない……。


 それと同時に、身体がだるくなる。


「あれ? 心電図のリズムが一定じゃなくなりましたよ」


 ダレンさんが、心電図の異変に気づいた。


「どうしたの?」


 ゴブリンは気にしなくていいのに、興味を示す。


「afかな……」


 俺は脈拍が一定じゃなくなったと聞いて、そう呟いた。


「エーエフ?」


 ゴブリンが反芻する。


「心房細動ですよ。心臓の二つある部屋の内の……上の方の部屋が震えてるんです」


 ダレンさんが詳しく説明してくれる。


「へ~、そうなんだ」


 ダレンさんの説明を感心するように聞いているゴブリン。


「まあ、短時間でしょうから発作性心房細動ですね。afじゃなくてpafですかね」


 afとpafの違いをよく理解している……流石ダレンさん。


「パフ? なんか、私が知っているのとちょっと違う」


 ゴブリンがそれに異を唱えた。


「え?」


 ダレンさんがゴブリンの反応に驚いたように関心を向ける。


「ダレンさん。ダメだよ、真面目に聞いたら。それ、カトリーヌギフトの知識だから」


 カトリーヌの知識はロクでもない知識だ。


 ダレンさんの知識は医療に関することだけど、ゴブリンのそれは医療知識はないと思う。


 もう、それは鉄板事項。


「カトリーヌギフト? 何ですか、それ」


 ダレンさんは興味津々だ。


「異世界の知識だって、主に第23世界の知識だけど」


「へえ、すごいですね。試しに聞いてみていいですか」


 きっと、あれだろうな。


 俺には大体予想ができた。


「後悔するよ……」


「私が知っているのは、男の人が男の人と出会いを募集する掲示板があるの」


 同性愛者の出会い系サイトな気がする。


「……掲示板ですか……」


 ダレンさんは考え込みながら聞く。


「そう、それでその掲示板にAF相手募集って書いてあるの」


「AF相手?」


 ダレンさんは意味が分からなくて反芻して聞き返す。


 これは……やばい内容かもしれない。


「タチとウケがいて……オシ……」


「ストップ。もういいよ。分かったから、分かったよ」


 もう、俺は止めるしかなかった。


「え? 小林さんなんで止めるんですか」


 ダレンさんはまだ解らないようだ。


「ただの下ネタだから。ボーイズラブの行き着く先と言えばいいか」


 こんなところで、こんな話しても誰も得しない気がする。


「ああ、そういうことですか。そう言えばバアルさんもそういうの好きだったな……」


 ダレンさんが遠くの方を眺めて呟いた。 


 バアルさんの趣味は幅広いようだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小林君はゲームによく出てくるような勇者になりたい願望があるんですね。 少年の心が小林君にありますね。 でもPRGのワクワク感なんて言っている身分ではないですよね・・・。 力を発揮すると、気…
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