12話 異世界で透析室へ
外から見て〈病院の卵〉の玄関は日本のクリニックや診療所の入り口と同じ造りのようだ。
そして薄い透明な膜が建物全体を半球状に丸く覆っている。
建物が大きくなったから、サービスで付くようになったんだろうか。
「大丈夫ですよ。この結界はワタクシ達は通れるようになってますから」
ダレンさんが結界は、心配なく通過できることを説明している。
少し、急いでくれないだろうか。
さっきよりも、気分が悪い。
その膜の内側に石造りの屋根があって、自動ドアの入り口がある。
ガラスのようなもので出来ているようで、日本語で自動ドアと書いてあるステッカーが貼ってある。
二重扉になっていて、なかなか考えられているようだ。
二重扉で区切られている部屋を風除室と呼ぶ。
この風除室は人の出入りで、中の空気が直接外へ逃げるのを防ぐ役割がある。
そして、強風でも二つの扉が同時に開かない限りは、室内に風は入ってこない。
結界があるのだったら、屋根もドアも要らないんじゃないかとか思うが、そういうモノではないのか?
でも、丸見えは良くないな。
中に入ると、椅子が何列か並んでいた。
病院の診察用の待合室のようだ。
受付があって、会計があって、診察室、処置室。
受付と会計はカウンターがあって、診察室と処置室はスライドドアで入るようだ。
ドアに直接、診察室と処置室の文字が見える。
ごくありふれた病院の外来だ。
誰もいないけれど、それを除いたら病院そのものだ。
でも、会計があるってことは……。
……え? ひょっとしてお金取られるの?
この世界の通貨は持っていない。
透析治療を受けるだけでも、日本での医療費は公費でなければは月に30~40万円は掛かる。
治療代には保険とかないだろうし、異世界に来てまで借金生活をしたくはない。
支払いが気になって、喋りたくないけど聞いてみることにした。
「ダ……レンさん。……お金かかる……の?」
「小林さん? 大丈夫ですよ。創った人がそのまま、医療設備をコピーしているだけです」
良かった、雰囲気だけだ。
「異世界で病院経営してもいいようにはなっていますが、機能はオフにしてます」
オンにすると、お金を請求されるというものなのだろうか。
治療を受ける俺としては都合の悪いものだ……封印しよう。
待合室の椅子の前と後ろにはいくらか広いスペースがある。
それは、ベッドや車椅子が通れるくらいの幅なので俺らが通るのに障害にならなかった。
椅子の後ろを通って透析室に向かう。
途中でエレベータホールがあった。
1階と2階しかないのに。
そのすぐ横に階段。
この先も育つことを想定しているらしい。
もう、いらない気がするけど。
廊下を左に行くと透析室で右に行くとX線検査室。
廊下の壁に矢印が書いてあって、行き先を示している。
左に曲がると突き当たりに診察室と同じ大きなスライドドアがあった。
ドアには透析室と書いてある。
「入ったら、一番手前のベッドに寝かしちゃってくださいね」
ダレンさんがゴブリンに向かってしっかりとした口調で指示をする。
「はい」
ゴブリンのしっかりした口調。
二人共、真剣な表情していた。
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