7話 スライムトースト
「もう、8時になるからご飯食べようよ」
そうだ、ご飯を食べないと。
インシュリンも打たないとだ。
指先に針を刺して血糖を測る。
インシュリンを打つ。
超速攻型と持続型のインシュリンをお腹に……。
「ずっと、その注射打つの?」
「病気だからね」
「痛い?」
「針が細いから痛くはないよ」
「そう……。ダレンさん、帰ってこないね。お兄ちゃん」
「神は食事を食べなくてもいいみたいだから、9時ギリギリに来るんじゃないかな」
「パネルの前に立ってから、タブレットを操作するんだっけ? ねえ? お兄ちゃん?」
「俺は操作できないけど、ゴブリンは操作できる。ゴブリンは読めないけど、俺は読める」
「じゃあ、お兄ちゃん。二人ならできるね」
「できるみたい」
初めての二人の共同作業?
タブレットをゴブリンが持って、後ろから俺が読む。
ふむふむ、読み取る時にはパネル操作が必要なのか。
だったら、パネルの前に立ってもらって、指だけパネルにタッチさせればいいんだ。
「最初にゴブリンがパネルの前に立って……指こっちに出して。タッチ。そうオッケー」
「次は俺ね。俺がパネルの前に立つから、真ん中辺の所に出た文字を1回押して」
「え? 2回でたよ」
「2回? まあ、いいや。押してみて」
「大丈夫みたい」
2人で椅子に座った。
「ちょっと、タブレット見せて……うん、料理を出しますか? だって。ここ押して」
「あい。押した」
料理が出てきた。ボワンと。
また、スライムステーキ?
なんか微妙に違う。
スライムなのにカラカラしてる。
「何だろ? えっと……スライムトースト。染色体ジャムを塗ってお召し上がりください、だって」
ゴブリンの前には、スライムステーキの時みたいに大量のスライムトーストが10枚。
自分の前にもスライムトーストが……7枚? なんという大量な……そんなに食べられるかな。
リン吸着剤を服薬してから食事を摂る。
染色体ジャムは赤色でイチゴジャムみたいな味だった。
スライムトーストは青色なのに香ばしいパンそのもの。
どちらも非常に美味で、パンだけでも香ばしさと甘味が口の中に広がる。
ジャムはそれをより引き立てるかのような、フルーティーな甘味をしている。
そして、一緒に出てきたハーブティーは交感神経を興奮させるレモングラスの様な香りがする。
「これ、食べきれないな……」
「そう? もう食べ終わちゃった」
「もう、いいや。下げて貰おう。ここ押して」
「はい、タッチ」
う~ん、もったいないけど。意外とトーストのくせにお腹に溜まる。
4枚しか食べられなかった。
トーストなんだけど、若干噛みごたえがあって食物繊維とか入っているっぽい。
タブレット操作で食器などが一斉になくなる。
ボワンと。
元の世界でもこれがあれば、楽だったのにな。
皿洗いとか、結構面倒くさい。
肌も荒れるし……。
そろそろ、8時半か。
歯を磨いたり、色々しないと。
ゴブリンはパジャマだし。
俺はジャージでいいか。
いや……。
ここは、ドクロンブランドの男物を着てみようかな。
「あのさ、俺もドクロンブランド着てみたいな……なんて」
「え? 女装するの?」
「……男物だよ」
「なんで、急に?」
「ゴブリンのステータスを見たら、特殊効果があったから」
「あれ? 今は何も装備してないけど」
「してるよ。そのパジャマもそうだし、下着だって……」
「……お兄ちゃんって、ステータス鑑定で何の下着つけてるか分かるのか……」
「わざとじゃないよ……不可抗力、不可抗力」
本当に不可抗力だ。
昨日から下着は知ってるけど。
「じゃあさ、俺はシャワー室の前の脱衣所で着替えるから、ゴブリンは洗面所で着替えて」
もう、ゴブリンは完璧に女性だもの。
一緒になんて着替えられない。
「……」
ゴブリンは何も言わずに洗面所に向かった。
「ちょっとまって、俺の着る服選ばして」
適当なものを選んで持っていく。
これとこれと、これだ。
「準備が出来たら、外に出てダレンさん待とうか」
「……うん、わかった」
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